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※ 関連参照投稿
「不法貿易というアメリカの暗い過去 ― 米経済を支えた密輸と知的所有権の侵害[フォーリン・アフェアーズ]」
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/567.html
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[この一冊]パクリ経済 K・ラウスティアラ、C・スプリグマン著 コピーが創造を促す逆説を例示
自分が創作した作品が、他人にコピーされるがままであれば、誰も創造的なものを作らなくなる。だから著作権などの知的財産権は保護されるべきである……。この世間の常識にあえて挑戦したのが本書である。
いかなる理由でも、独占は市場経済を阻害する悪である。新しいアイデアを他人から受け取ることは、人のロウソクから火を移すことと同じで、元の火が減るわけではない。コピーを一定期間といえども禁止することは、貴重な文化的活力を生む競争を犠牲にし、大きな社会的なコストを生む。仮に、誰でも自由にコピーができたとしても、それがオリジナルに勝てなければ、保護の必要はないはずだ。
実例として、ファッション、レストランの料理、アメフトの戦術、コメディアンのコントなどがあげられる。ファッション分野で保護されるのは商標だけで、デザインではない。これは毎シーズンのトレンドの見極めが重要だからである。市場で人気の高いブランドが、部分的なコピーを重ねて多くのバリエーションを生み出し、ファッション界のトレンドを決める。いわば神の見えざる手で、模倣が創造に活気を与える世界である。
また、コピーとオリジナルの購買層の差も大きい。本物を買えない消費者が類似のコピー商品を求める。それはコピーされるだけの価値があるという、無料の宣伝になる。また、いつかは本物が欲しいという潜在的なお客を増やすことにもなる。
高級レストランの料理のレシピも著作権の対象にならない。仮に同じ質の素晴らしい料理を貧相な店で食べても意味はないからだ。高級店同士が露骨な模倣をすることは、暗黙の業界ルールで排除される。コメディアンのコントにも著作権はないが、それは古典の模倣やパロディーの積み重ねで時代にあったテーマが生まれるからである。
デリバティブやスワップなどの金融イノベーションに著作権を主張することは無意味である。特定の金融技術を独占するよりも、競合他社との共有で新しい市場を育てることが、互いの利益となるからだ。究極はリナックスなどのオープンソースのソフトであり、世界中の人々が無料で活用し、持続的な発展を遂げている。
オープンソースのソフトでは、オリジナルだけでなく、その改良に大きな意味がある。コピーは、ソフト利用のコスト低下を通じて、むしろイノベーションを刺激する役割を担っている。本書は過大な著作権の保護に警鐘を鳴らすという点で、大きな意義がある。
原題=THE KNOCKOFF ECONOMY
(山形浩生・森本正史訳、みすず書房・3600円)
▼著者のラウスティアラ氏は米UCLAの法律学教授。スプリグマン氏はニューヨーク大法学部教授。
《評》昭和女子大学特命教授 八代 尚宏
[日経新聞2月14日朝刊P.21]
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