安倍首相「株価に一喜一憂しない」アベノミクス失敗でも封印された秘策=三橋貴明 2016年2月20日ニュース 安倍総理は15日の国会で、「1カ月、1カ月半の値動きにとらわれるべきではない。日々の株価に一喜一憂するべきではない」と、株価上昇をほとんど唯一の成果として誇っていた政権とは思えないほど、素晴らしい正論を語られました。その通りですね、経済政策が株価に一喜一憂するのは奇妙な話です。首相官邸の執務室に置いてある株価のチャートも、是非とも片付けて下さいませ。 記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年2月19日号より ※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです 安倍総理の言う「ファンダメンタルズ」とはいったい何なのか 「日々の株価に一喜一憂するべきではない」 案の定と言いますか、予想通りと言いますか、安倍政権は「新たな財政出動論」を封印とのことです。 安倍晋三首相は17日、首相官邸で公明党の山口那津男代表と会談し、2016年度予算案の3月末までの成立を目指す方針を確認した。政府・与党には円高・株安で内閣支持率への影響を懸念する声があるが、当面は新たな財政出動論を封印。野党が予算案の組み替えを求める可能性があるためで、追加の経済対策の議論は予算案の成立にメドが立った後になる。 出典:『財政出動論、今は封印 円高・株安 政府・与党、予算審議を優先 – 日本経済新聞 日経新聞の無料版だけでは、「円高・株安」しか問題になっていないかのように読めますが、一応、後略部で、「円高・株安に加え、10〜12月期の実質国内総生産(GDP)が速報値でマイナスになり、不透明感が広がる」と、あります。 さて、総理は15日の国会で、 「1カ月、1カ月半の値動きにとらわれるべきではない。日々の株価に一喜一憂するべきではない」 と、株価上昇をほとんど唯一の成果として誇っていた政権とは思えないほど、素晴らしい正論を語られました。その通りですね、経済政策が株価に一喜一憂するのは奇妙な話です。首相官邸の執務室に置いてある株価のチャートも、是非とも片付けて下さいませ。 また、今後、株価が上昇した際に、「1カ月、1カ月半の値動き」にとらわれ、 「日経平均が2万円を突破した!これは政権の成果だ!」 などと奇妙奇天烈な主張をするのを、是非とも控えて頂きたいと思います。 株安の原因は海外、日本経済はしっかりしている? それはともかく、総理は続けて、 「中国の景気減速懸念や原油価格の下落、米国の利上げなど海外要因が背景」 と、現在の景気失速の原因を「外に押し付ける解説をし、 「日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は確かなもの」 と、例により「ファンダメンタルズ」という抽象的用語で、日本経済の「堅調」を訴えたのでした。 Next: 安倍総理の言う実体経済とは?マイナス成長の原因は国内消費低迷10-12月期マイナス成長の原因は国内消費低迷 何なのでしょうか、ファンダメンタルズとは……。 そもそも、10−12月期の経済成長率がマイナスになってしまったのは、民間最終消費支出の落ち込みが原因です。別に、外国のせいではありません。 最大の原因は消費税――安倍政権の失政 先日も触れましたが、2015年の民間最終消費支出は実質GDPベースで306.5兆円と、安倍晋三内閣が発足した12年の308.0兆円から1.5兆円縮小してしまいました。 13年は313.2兆円と増えていた(消費増税前の駆け込み消費の影響もあったのでしょうが)のが、14年は310.4兆円に落ち込み、15年は306.5兆円と、野田政権期を下回ってしまったわけですが、改めてパーセンテージを計算すると、日本国民は13年から15年にかけ、6.7兆円、消費を減らしたわけです。 日本国民の実質賃金の落ち込みや、実質消費の激減の「最大の原因」は、もちろん消費税の増税です。つまりは、安倍政権の失政なのです。 アベノミクスの失敗を認められない安倍政権 日経の記事の後略部に、非常に気になる一文がありました。 財政出動をすれば『アベノミクスの失敗』と受け取られかねない(経済官庁幹部) いやいや……。アベノミクスは「失敗」したのです。失敗を素直に認め、金融政策に「加えて」財政政策を講じるというならばともかく、失敗とみられることを恐れ、正しい政策に踏み出せないとは……。 怖いのは、日経の記事の最後に、 18日の経済財政諮問会議では民間議員が「必要と判断される場合は機動的に対応すべきだ」との提言を示す予定。内閣府幹部は「財政出動を連想させる、と批判はあったが『緊急時にはあらゆる対策をとる』というメッセージも必要だ」と語る。 とあった点です。 あれですかね。いつの間にか「財政出動」はタブー化してしまっているのでしょうか。何となく、そんな気がしていましたが、本当にそうとは……。異様です。 (ほとんど)唯一の正しい政策を「封印」「タブー化」してしまっては、日本経済がデフレから脱却し、堅調な経済成長路線を歩み始める日はやってきません。 【関連】TPPという主権喪失〜日本の国益を売り渡す「売国」のカラクリ=三橋貴明 http://www.mag2.com/p/money/7460/2 英紙が報じた「アベノミクスの末期症状」ステルス増税が日本にとどめを刺す 2016年2月18日ニュース 2月12日付の英紙ガーディアンの大見出しは、「アベノミクス、とうとう末期症状か」です。「日経平均の大暴落でアベノミクスは終わった。日本の景気浮揚構想は死の淵に来ている」といった内容です。(『カレイドスコープのメルマガ』) 「アベノミクスはとうとう末期症状」英紙ガーディアン報じる 常に「大事件」を必要としているウォール街 この数日の暴落で1800円も下落した日経平均ですが、翌日1日だけでプラス1069.97円の大反発。下落幅の半分以上を取り戻した勘定になります。 これは、明らかに欧米の投機筋(ヘッジファンド)がレバレッジを目いっぱい効かせて株価を乱高下させ、ボラティリティ(価格変動の幅)を上げたことによるものです。 獰猛なプロの投資家にとって、もっとも恐ろしいことは値動きが止まって凪(なぎ)のような相場になることです。上げでも下げでも、値幅を取ってこそ利益が出るのですから、平らな相場が、いつまでも続くことは真綿で首を絞められることと同じなのです。 そのため、ウォール街は、ときに、世界中のテロリスト・ネットワークとのコネクションを通して、9.11のような大規模なテロが起こる計画を事前に知ることによって、常に大儲けができる、ということになるのです。 この「ありえない激変」が、ボラティリティを大きくして多くの投資家に潤いを与えるのです。 ですから、ウォール街は常に大事件を必要としているのです。 モンサントのような軍産複合体の多国籍企業がテロリスト(彼らは、それを「傭兵」と呼んでいるが)に経済的支援を行ったり、エジプト革命のような中東全域に連鎖するような大きなうねりを作り出すために、「民主化を支援する」という大義名分を使うのです。 目利きが見ると、瞬間的に「この事件には、あの多国籍企業が関わっている」と分かるぐらい、この“投資モデル”は使いつくされてきました。ですから、それが通用しなくなってきたのです。 カモにされるGPIF(日本年金) ところが、私たちの年金を、まるで自分たちのポケットマネーのように株式市場に突っ込み、日経平均を吊り上げているGPIFほど、その投資パターンが誰にでも分かる“お人好しのご本尊”はないのです。 日経平均を高値で維持し続け、国民を騙しつつ憲法改正に突き進もうとしている安倍首相が、株式市場が下落するごとにGPIFの職員を呼びつけて「年金をどんどん突っ込んで日経平均を上げろ」と怒鳴りつけている様子が内部から漏れ伝わってしまうくらいですから、欧米の投機筋であれば、とっくの昔にGPIFが安倍首相の意向で恣意的運用を余儀なくされていることを知っています。 短期間(数日)で株価を先物で暴落させれば、狼狽した安倍首相が、再び「ありったけ突っ込め」とGPIFに檄を飛ばすことが分かっているので、ヘッジファンドは、思い切りレバレッジを利かせて売買を行えば確実に巨利を得ることができるのです。 欧米勢にとって、もはや“濡れ手に粟”の市場がGPIF主導の東証なのです。 「マイナス金利」はステルス増税 「アベノミクスとは最初から幻想であり、世界の投資家を煙に巻きながら、ウォール街に日本の国民の富を貢がせるために考え出された悪性ウィルスだ」と書き続けてきましたが、いずれにしても、化けの皮が剥がされて末期症状に至った、ということです。 それを私は、「ステルス増税」ウィルスであると書いてきました。ウォール街という世界政府の集金マシーンに納税しているのです。 つまり、「あなたは自覚できないかも知れないが、あなたの富が、この瞬間もこっそり盗まれ続けている。そして、今後、さらにそれは酷くなる」ということです。 前回記事(米FRB、まさかの「マイナス金利導入」で終わる市場〜国際決済銀行(BIS)の罠)では、「世界の中央銀行をコントロールしている国際決済銀行(BIS)の隠された狙いがそこにあるのです。人々の銀行口座は、そのとき、すっからかんになるはずです」と最後を結んでいますが、それについて、もっと詳しく説明したいと思います。 Next: 個人投資家が知っておくべき「2月16日」の不気味な符合 個人投資家が知っておくべき「2月16日」の不気味な符合 日本のみならず、世界中を騙した犯人捜しをすることは意義のあること(もちろんそれは、日本の財政破綻を促進したいと考えている国際金融マフィアの総本山=国際決済銀行の走狗である日本の経済学者、霞が関の官僚。そして、新世界秩序の下請け機関である安倍政権と国際決済銀行に隷属している日銀)ですが、すでに“待ったなしの状況”に突入してしまったので、それは次に回しましょう。 2014年6月、欧州中央銀行(ECB)は、とうとう「名目の」マイナス金利の導入を発表しました。 遅れること1年半、日本の中央銀行である日銀も「名目の」マイナス金利の導入を宣言し、それは2月16日からスタートします。 この「2月16日」という日は、意味のある日です。70年前(1946年)の2月16日、当時の大蔵大臣、渋沢敬三が「預金封鎖」を発表した日です。終戦の翌年のことでした。 現在の政府の財政状態が、その頃に酷似していることから、「株価暴落で憶測飛び交う…戦慄『2.16預金封鎖』の現実味」といった恐ろしい見出しの記事も2、3出ています。 そして、NHKも去年の2月16日、「預金封鎖」を特集した番組を放送したのです。 この「預金封鎖」によって、国民は銀行口座に残高があっても、自分のお金が引き出せなくなったのです。 政府が「預金封鎖」を断行した表向きの理由は、「暴走するインフレを抑えるため」でしたが、本当の目的は「戦争で負った借金を国民に負わせる」ことが目的で、それを「財産税」という形で課税する必要があったからです。 (NHKオンライン「“預金封鎖”もうひとつのねらい」) つまり、国民が自分のお金を銀行から引き出して、国の監視の目の届かないところに資金を避難させることができないように凍結してしまったのです。政府は国民の資産状況(それだけでなく消費動向までも)を把握するために「マイナンバー」を用意したのです。 政府は、戦争で生じた借金の返済を行おうと、当時の貨幣価値で10万円を超える資産に最高90%の財産税を課税することを決定。2年後に「預金封鎖」が解かれたときには、銀行残高は大幅に目減りしていたのです。これは、お金持ちを直撃しました。 預金封鎖が解かれるまで、ミニお大臣であっても、雑草を茹でて食べたりして何とか命をつないだのです。 昭和19年【終戦の前年)当時の日本政府の債務残高はGDPの2倍で204%でした。現在は、日銀が発表している債務残高の国際比較(対GDP比:2014年11月時点のデータ)によると233.8%にまで膨れ上がっています。 日本の政府債務の増え方は、GDPとの比率で見ると財政破綻したギリシャより悪いのです。自民党の長期政権下で、日本政府はまるで計画的に日本を財政破綻に導くために借金を積み増してきたとしか考えられないのです。 よく、「政府債務がGDPの2倍以上あろうとも、国債を買っているのは外国人ではなく、国内の機関投資家や個人なので、日本は財政破綻しない」という専門家がいます。とんでもない間違いです。 日本の場合、国債の主な買い手は民間の銀行です。その原資は、あなたの預金です。銀行は進んで政府が発行した国債を買っているのではなく、半ば「押し付けられて」買っているのです。 Next: 日銀のマイナス金利導入の直接的な目的。そして何が起こるか
日銀のマイナス金利導入の直接的な目的。そして何が起こるか 民間銀行は国債を政府から買うと、その代金を政府に支払います。それは私たちの預金です。その時点で、私たちは政府に「金を貸している」ことになるのです。それも、「有無を言わさず」です。 しかし、日銀はすぐに買いオペを実施して民間銀行から国債を買い取ります。その代金は、信用創造によって日銀が1万円札を印刷して民間銀行に代金として支払うのです。 その代金は、日銀に開設されている民間銀行の当座預金に振り込まれます。 もともと、日銀と取引を行っている民間銀行は、一定割合の所要準備金を「準備預金」として日銀の当座預金に預けることが義務づけられています。 1月29日現在の「準備預金」の額は254.7兆円に上っており、なんと234.7兆円分が「超過準備預金」となって、日銀の当座預金として眠り続けているのです。この234.7兆円分の「超過準備預金」に年0.1%の利息が付くため、民間銀行は政府の担当者から「今度発行する新規国債を買うように」と、命令口調で言われても大人しく従ってきたのです。 しかし、2月16日からは、民間銀行が日銀に国債を売った際に、日銀から当座預金口座に振り込まれる代金が「準備預金」として積み増しされた分については、マイナス0.1%という名目上のマイナス金利が付くことになったのです。 この措置を、もっと分かりやすい話に置き換えると、傘を持っていない人が、やっと見つけたとあるレストランに入ったところ、料理どころかコップ1杯の水さえ出さないレストランだったということです。 さらに、レストランの椅子に座っている時間分だけ、「雨宿り賃」として支払わなければならない、ということなのです。 誰でも、レストランに行けば、おなかを満たしてくれると思っているところに、逆に懐を寒くされてしまうレストランだったというわけです。 しかたなく、その人は空腹のままレストランから出ていって、雨に濡れながら何か食べさせてくれる場所を自分で探さなければならない、ということなのです。 また、有料パーキングにたとえることもできます。 新車を買ったある男が、月極の有料駐車場にその新車を預けっ放しにしておけば、時間の経過とともに新車の価値が減価されていくだけでなく、駐車料金を支払わなければなりません。 それではかなわんと、その新車のオーナーは、できるだけ車を使うように遠出をするのですが、免許を取りたてであるため、事故を起こさないか戦々恐々で運転するのです。 日銀のマイナス金利導入の直接的な目的は、2月16日以降、民間銀行が国債を日銀に売って得たお金は、雨の中を彷徨ったり、遠出をしたりして「安住の地」を自分たちで見つけなさい、というものです。 今回の措置は、234.7兆円分の「超過準備預金」には適用されませんが、日銀・黒田総裁の狙いが、この莫大な「超過準備預金」を市場に出したいということあることは自明です。 しかし、問題は、外はどこも雨降りだということです。 快適に雨宿りできる場所をたくさん作ることこそが政府の仕事なのですが、憲法改正にばかり囚われている政府は、今まで何の有効な経済政策も打って来なかったため、雨宿りの場所を自力で見つける体力を持っていない脆弱な銀行にとっては、下手をすると風邪をひいてしまうか、最悪、低体温症で死んでしまう危険さえあるのです。それがまっさきに訪れるのは地銀でしょう。 ここまでで、人々は、いったい、どんなシナリオを描くでしょう。 それは、政府が新しい産業セクターを育成する国策事業に踏み出さない限り、この234.7兆円の巨大な余剰資金は市場に出て行かない、ということです。 それどころか、今の安倍政権では、せっかく助け舟を出した日銀に再び圧力をかけ、国債の発行額をさらに増やそうとするだけでしょう。 そうすれば、何が起こるか――それは、前号のメルマガで書いたとおり、銀行は国債の買いに殺到し、その国債の価格が上がるのを待って日銀に買い取ってもらうことなのです。 1月29日の政策金融決定会合で日銀がマイナス金利導入を決定してから11日目の2月9日、長期金利の代表である10年国債の利回りがマイナス0.035%と史上初めてマイナスになりました。 10年国債を買った銀行は、満期が来る10年後まで保有し続けると、元本(買ったときの値段)を割り込んでしまうので損をすることになります。 しかし、民間銀行は10年国債の買いに殺到しているのです。なぜなのか…それは、マイナス金利が付いている10年国債でも日銀は買い取ることを約束しているからです。 そうすれば、民間銀行は、とりあえず10年国債を買っておけば良しと考えるので、買い手が大勢いる10年国債の価格はつり上がっていきます。 Next: 考えられる3つの危険なシナリオ 考えられる3つの危険なシナリオ 国債の価格と利回りとは逆相関の関係があるので、国債の価格が上がれば利回りは少なくなります。それが、瞬間で0.035%と史上初めてのマイナス付き国債となったの理由です。 民間銀行は、国債の価格が上がると読んで、最初の安い時点で買っておいて、高くなったら日銀に買い取ってもらおうと考えているのです。 その代金は民間銀行が日銀に開設している当座預金に振り込まれて、年マイナス0.1%の金利が付きますが(元本割れ)、それでも国債買ったときより高く売れれば、数年間分のマイナス金利分の損失は十分補てんできると考えているのです。 ブルームバーグによると、現在は一服して、10年国債の金利はマイナスからプラスに戻って、0.07%の金利が付いています。 しかし、1年国債から5年国債までの短・中期国債については、総じて10年国債より価格上昇率が高いためマイナスの金利が付いています。 これは、民間銀行が、1〜5年の短・中期国債の価格がまだまだ上がると予想していることを表しているのです。 しかし、今日実施されている20年国債の入札も順調で、民間銀行は、さらに長期国債の買いにも手を出しているのです。その結果、利回り変化率もマイナス0.005%と減少したものの、利回りは0.8%がついています。 このように、マイナス金利を導入したことによって、国債の買いについては、短期国債から20年の長期国債に至るまで順調な滑り出しとなっています。 しかし、将来においては、非常に危険な兆候をはらんでいるのです。 それは、3通りあります。 ひとつは、国債の価格上昇が、どこかで止まった場合です。 そのときの日銀のマイナス金利が0.1%より増えていた場合、民間銀行は日銀に国債を売ることによって、それこそ損失がでてしまう事態が考えられます。そうなれば、民間銀行は国債を売らずに保有したままにしておくでしょう。 これは、さらなる国債バブルにつながります。その場合、国債の市場での流動性が徐々に奪われていって、新規国債の買い手がつかなくなってしまうのです。それは、政府が民間から資金調達できなくなることを意味します。つまり、財政破綻です。 ひとつは、国債バブルがはじけることです。 その要因は、国内要因だけとは限りません。大規模なテロが起こったり戦争に突入した場合、あるいは、ドルが完全に崩壊して米国経済が破綻した場合、日本がすでに保有している110兆円超の米国債は紙切れになるかもしれません。 その場合、日本政府に対する信用が棄損され(ソブリン・リスクの増大)、円や国債を始めとする債券の価格が暴落します。民間銀行は、それまで、たっぷり国債を抱え込んでいるので、その瞬間に不良債権化してしまうのです。 そうなれば、金利が急騰しデフォルトに至ります。その規模は、民間銀行が国債を保有している分だけ想像を絶する大規模なものになるはずです。それは世界中に波及します。 3つ目は、日銀の黒田総裁が「マイナス金利幅を広げる可能性がある」と言明しているように、234.7兆円分の「超過準備預金」についてもマイナス金利を採用するかもしれないということです。 恐らく、日銀は、234.7兆円分の「超過準備預金」のうち、わずかずつマイナス金利を導入すると宣言するでしょう。そのとき、すでに国債バブルが危険水域に達していた場合、仕方なく当座預金の資金は市場に向かわざるを得なくなりますが、そのときの世界情勢によっては株式市場に向かうのではなく、不動産や金や銀といった貴金属の現物に向かうはずです。今度は、資産バブルになるのです。 そして、その資産バブルも、いつかははじけることになります。 このシナリオが、もっとも遠い未来に「やって来るもの」ということになりますが、それがいつなのかは分かりません。少なくとも言えることは、資産バブルは、まだ始まっていない、ということです。 それを謳歌できるかどうかは、ここからの説明することを理解することが大切です。 Next: FRBの3月追加利上げは見送り?それどころか「マイナス金利を検討」 FRBの3月追加利上げは見送り?それどころか「マイナス金利を検討」 さて、再び話を「マイナス金利」に戻しましょう。 日銀が民間銀行から国債を買い上げた時点で、民間銀行にお金を預けている預金者は「政府に対する債権者」ではなくなります。 しかし、何の裏付けもない紙切れが増刷され、それが国債の購入費用の支払いに充てられたことによって、国民の銀行預金の購買力は削られてしまっているのです。つまりは、預金者のお金の価値が減価されてしまったことになるのです。 これは、預金者が銀行口座に預けてあるお金に限りません。日本中に出回っている「円」の価値が希釈されてしまうことになるのです。 つまり、インフレと似たような現象が起こるのです。 それでも、金利がバブル時代並に高ければ、あなたの預金が減価されてしまった分を補てんすることができますが、これまで続いている長期のゼロ金利状態で政府が国債をじゃんじゃん発行し、それを民間銀行が次々に引き受ければ、あなたの貯金は、民間銀行が国債を購入するごとに価値が減っていくのです。 黒田総裁は、個人の預金者の不安を打ち消すように、「マイナス金利は個人預金はならない」と言明しましたが、これは、あくまでも「名目上」の話であって、「実質上」は、あなたの預金はこの瞬間も目減り(購買力が減って)しているのです。 つまり、銀行にお金を預けていることそのものが、見えない増税=「ステルス増税」の課税対象になっているということです。 結局、あなたは今でも政府に「見えない税金」を納めていることになるのです。 ですから、現在のようなゼロ金利状態で銀行にお金を預けたままにしておくと、個人の預金口座にまでマイナス金利が及ばなくても、実質的な価値が目減りしているということになるのです。 これは、日本だけでなく、各国の中央銀行がマネタリー・ベースを操作してきたことによって生じてしまう弊害です。 ほとんど、すべての国の通貨が減価されてきたことは、金(ゴールド)の価値と照らし合わせると明らかです。 (※第139号パート1「景気後退が加速する2016年からは金に主役が交代か!?」にて詳述) 日銀がゼロ金利政策を導入したのは、1999年(平成11年)2月、短期金利の指標である無担保コール翌日物金利を史上最低の0.15%に誘導することを決定した時点からです。 その間、政府が発行する国債はどんどん増え続け、逆に、あなたの銀行預金には、ほとんど金利はついていません。つまりゼロ金利が始まって以来、16年間も「政府に略奪され続けている」と見なしても良いのです。 ただ、幸いなことに、物価上昇率が1999年から2012年まで、マイナスかゼロを維持してきたので「円」の価値がそのまま温存され、所得が伸びない割に購買する商品価格に「お値打ち感」があったことです。 ところが、欧州中央銀行(ECB)が1年半前に「名目の」マイナス金利を導入し、日銀もそれに続いてマイナス金利の導入を決定したことから暗転するのです。 さらに、連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレンまでもが、マイナス金利の導入をほのめかす発言を行ったとなると、世界の金融は、今までとまったく「逆相の様相」を呈すことになるのです。 「逆相の様相」は、実は私たちの目にはまったく見えないのです。 気を付けなければならないのは、「これからは銀行員を信じてはいけない」ということを肝に銘じることです。銀行員は、この事態を理解していません。まさしく「盲人が盲人の手を引く」世の中になるのです。 だから、私たちは「目には見えない逆相」を心の目で見ながら、次に備えなければならないのです。 それができなければ、「あなたはサバイバルできない」どころか、銀行員をはじめとする「盲人」たちとともに、崖から無理心中させられることになります。 しかし、「見えないものが見える人」には、その逆で、それなりに楽しいチャンスが巡って来るのです。 ECBは3月大幅利下げか? 2014年6月5日、日本、ヨーロッパ、米国、英国の「ビッグ・フォー」と呼ばれている世界の巨大中央銀行のうち、いち早く欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を導入しました。中央銀行の歴史では初めてのことです。 そのとき、ECBのドラギはこう言ったのです。「これが終わりではない」。このとき、マイナス金利政策の継続を示唆したのです。 ECBの本当の目的が、量的金融緩和そのものではなく、むしろマイナス金利の導入と、これを一歩二歩進めることであることが分かったのです。 事実、去年の12月3日、ECBは追加利下げを発表し、それまでのマイナス0.20%からマイナス0.30%に引き下げることを決めたのです。 さらに、今年1月21日に行われた政策理事会後の記者会見では、次回3月の政策理事会で金融政策の見直しを行うと表明、昨年12月の小幅の利下げとは異なり、次回3月については、市場予想を上回る大幅な利下げ幅とすることでサプライズ効果を生もうとするのではないか、という憶測が流れているのです。 市場関係者は、3月に注目しています。 Next: FRBもマイナス金利を導入すれば大波乱に至る!? FRBもマイナス金利を導入すれば大波乱に至る!? トヨタを始め、大手輸出型企業の想定レートは115円です。現在のドル/円は113円台。 証券マスコミは「中国経済の先行き不安」を円高ドル安の主な理由としていますが、なんといっても、FRB議長のジャネット・イエレンが2月10日、11日の2日続けて行った議会証言が影響しています。 この議会証言を受けて、ドル円は一時111円前後まで下落、4日の安値(116.50円)を大きく下回ってきました。 ※イエレン米FRB議長の議会証言要旨(10日) ※イエレン米FRB議長の議会証言要旨(11日) 2月に入ってからは、対ドルだけでなくユーロでも対円で3%近く下落しており円の全面高です。 銀行関係者の間では、「この基調は、しばらく続き、3月末には110円割れを起こすかも知れない」との予想が大勢を占め、アナリストも「日銀はお手上げ状態。105円台もありえる」と最悪の事態を予想しています。 さらに、週刊現代の取材チームが入手した「日本銀行・金融機構局」が作成したレポートには、市場関係者を震撼とさせる“驚愕の未来図”が描かれています。 そのレポートの正式名称は「金融システムレポート別冊シリーズ」。 このレポートは2段階になっていて、「アジア経済の減速シナリオをもとにした金融情勢のマクロ分析」に多くのボリュームが割かれていますが、さらに、もう一段、過激なシミュレーションの結果も記されています。 それは、リーマンショック並の衝撃が世界中を襲った場合のシミュレーションで、まさに「一度開けたら口がふさがらない」内容となっています。 以下は週刊現代の2月6日号「日銀内部資料を入手 最悪の事態を想定せよ 激震!株価1万4000円割れへ」という巻頭の特集記事の一部です。 国内経済の成長率は、16年度はマイナス3.2%と大幅なマイナス成長となる。 その後、17年度もマイナス0.1%とマイナス成長が続く。 金融市場では、株価(TOPIX)は、15年9月末から1年間でマイナス55%下落し、その後、横ばいで推移する。 また、名目為替レートは、16年度にかけて1ドル=93円と23%の円高ドル安となった後、横ばいで推移する。 今日(2月15日)は大反騰しましたが、前営業日(2月12日)は、とうとう15000円を割りこんで14000円台に突入しました。 「日本銀行・金融機構局」が、このレポートを作成したのは、去年の10月です。 当然、欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利政策が継続されることを前提としているはずです。 そして、もちろん、黒田総裁が2018年4月8日までの任期をまっとうするという前提で想定したシミュレーションです。 黒田総裁は、最後まで日銀の独立性にこだわって量的金融緩和に踏み切らなかった前任の白川方明総裁と正反対の性格で、多数決で決まったことは即、実行に移す即断即決型の総裁です。 今回のマイナス金利導入の際にも、日銀政策委員会の9人の委員のうち、賛成が5人、反対が4人という僅差での決定でしたが、「なぜ、僅差になったのか」を一切斟酌しない総裁だと言われています。 反対した4人の委員は、民主党政権時代に任命された委員。賛成の5人は、安倍政権になってから任命された委員ですから、今回の決定は当然といえば当然の結果です。 この5人は、今後も「マイナス金利継続」に賛成するでしょう。 もし、言われているようにFRBのイエレン議長もマイナス金利導入を決断すれば、日米欧の新たな通貨戦争勃発となって、今度こそ、本当の未体験ゾーンに突入します。 日銀のマイナス金利導入の発表を受けて、すでに台湾もマイナス金利の導入を決めたことから、この流れはアジアに広がっていくでしょう。(パート2につづく) ________________________________________ 『「カレイドスコープ」のメルマガ』では、この記事のパート2として以下の内容を詳しく解説しています。 アベノミクスとは、マイナス金利政策を導入させるために考え出された 日本も米国も、すでにマイナス金利を導入している マイナス実質金利とは、政府を救済する所得再分配のことである 国民の富によって日本の政府を救済するのが「マイナス金利」 「ケインズよ、さようなら。マルクスよ、こんにちは」 『「カレイドスコープ」のメルマガ』は初月購読無料、2月中であればパート2の記事を含む当月バックナンバーは登録後すぐに読めますので、ぜひいちどチェックしてみてください。 【関連】北朝鮮とヒラリー、ゴールドマンを結ぶ点と線〜半島有事は近いのか=高島康司 http://www.mag2.com/p/money/7445/6 投機筋は本当に悪者か?「ジェットコースター相場」のウソと現実=近藤駿介 2016年2月18日ニュース 株価の変動が大きくなると、テレビ報道などで必ず湧き上がってくるのが「投機筋暗躍説」である。これは、視聴者の手の届かないところに「悪役」を作り、視聴者を為す術のない「哀れな被害者」のように演出することで視聴者に意味のない安心感を与え、共感を得ようとするマスコミの常套手段といえる。 プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ) ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるメルマガ『近藤駿介〜金融市場を通して見える世界』がまぐまぐ大賞2015メディア賞を受賞。 誰が「ジェットコースターのような相場」を作るのか 「投機筋暗躍説」のウソ それまで1週間で1,866円下落していた日経平均株価が、週明けの15日に突然1,000円を上回る大幅上昇を見せた。こうした株価の乱高下を報じる5日夜のニュース情報番組のなかで、著名な国立大学教授は次のようなコメントをしていた。 ジェットコースターみたいに上がったり下がったりするというのは、我々個人の投資家から見るとちょっと危険で中に入れないなと思いますけど、彼ら(投機筋)にしてみればこれはもう絶好のビジネスチャンスです。専門で短期の売買をしている人にとっては、値動きがあればあるほど収益の期待値が上がるんですね。つまり大きく動きますから、うまく安いところで買い高いところで売り、高いところで売ったものを安いところで買い戻すと大きな利益をあげることができますから、彼らは今はほとんど寝ないでディーリングしている状況だと思うんです。 このコメントを受け、番組のコメンテーターを務めていた国立大学院准教授も次のようなコメントを加えていた。 「株価の変動が大きい時は、これは短期売買で投資家が稼ぎやすい状況にあるということですね。それでいろいろなお金が流れてくるわけです」 株価の変動が大きくなると必ず湧き上がってくるのが、このような「投機筋暗躍説」である。これは、視聴者の手の届かないところに「悪役」を作り、視聴者を為す術のない「哀れな被害者」のように演出することで視聴者に意味のない安心感を与え、共感を得ようとするマスコミの常套手段といえる。 一見もっともらしく見えるこうした専門家のコメントも、根本的な部分が抜け落ちている。それは、「誰がジェットコースターのような相場を作るのか」という点だ。 「投機筋」が「絶好のビジネスチャンス」を得るために意図的に「ジェットコースター相場」を作っているのだろうか。 「うまく安いところで買い高いところで売り、高いところで売ったものを安いところで買い戻すと大きな利益をあげることができる」というのは、なにも「ジェットコースター相場」だけに限ったことではない。もし「投機筋」がこうした高い能力を身に付けているのであれば、日常のマーケットからも大きな収益をあげていくことは十分可能なはずなので意図的に「ジェットコースター相場」を作る出す必要性はないはずである。 「ジェットコースター相場」を作り出すのは投機筋ではない この大学教授は、「投機筋」は自分達が意図して作り出した「ジェットコースター相場」でだけ「うまく安いところで買い高いところで売り、高いところで売ったものを安いところで買い戻す」能力を発揮できると考えているのだろうか。 日経平均株価が5日に1,000円を上回る反発を見せたこともあり、足下の日経平均株価のボラティリティは50%を超えて来た。日経平均株価のボラティリティが50%を越えるのは2013年5月にバーナンキFRB議長(当時)がテーパリングに言及した時以来である。 2012年1月4日から今月15日までの1,011営業日のうち、日経平均株価のボラティリティが50%を超える「ジェットコースター相場」となったのは僅かに5日、全営業日の0.5%に過ぎない。さらに、ボラティリティが40%を越えた日を含めても全営業日の4.4%の44営業日でしかない。 「ジェットコースター相場」が1年に1回訪れるかどうかだという現実からいえることは、「投機筋」が意図的に「ジェットコースター相場」を作り出しているわけではないということだ。 もし「投機筋」が意図的に「ジェットコースター相場」を作り出すことができ、かつ彼らが「ジェットコースター相場」で「うまく安いところで買い高いところで売り、高いところで売ったものを安いところで買い戻して大きな利益をあげる」という特殊能力を身に着けていて、「ジェットコースター相場」を「絶好のビジネスチャンス」だとみなしているのであれば、1年に何回も「ジェットコースター相場」を意図的に作り出すはずだからである。 Next: 「投機筋暗躍説」は学者が言い訳のために創り出したお伽噺である 「投機筋暗躍説」は学者が言い訳のために創り出したお伽噺である 「投機筋」が意図的に「ジェットコースター相場」を作り、「うまく安いところで買い高いところで売り、高いところで売ったものを安いところで買い戻して大きな利益をあげる」という特殊能力を発揮して大きな利益を上げているという指摘は、被害妄想の強い社会では受け入れられやすいお話かもしれない。しかし、それは「ジェットコースター相場」の原因を論理的に説明することのできない学者が言い訳のために創り出したお伽噺に過ぎない。 「株価の変動が大きい時は、これは短期売買で投資家が稼ぎやすい状況にある」という指摘も全く的外れな指摘である。 「株価の変動が大きい」つまりボラティリティが高いという状況は、「困った状況に追い込まれた投資家の数が増えた」ことを意味するものである。つまり、「短期売買で投資家が稼ぎやすい状況」なのではなく、「困った状況に追い込まれた投資家」が苦しみから何とか逃れようと「もがき苦しんでいる状況」だというのが現実である。 このことは「投機筋」にも当てはまる。彼らが「ほとんど寝ないでディーリングしている」のは儲けを拡大するためだけでない。「ほとんど寝ないでディーリング」をするのは、想定外の損失を被る可能性も同様に高いからに他ならない。 お伽の国の住人である学者は、「稼ぎやすい状況」だから「いろいろなお金が集まってくる」ように考えるかもしれないが、「困った状況に追い込まれた投資家」が必死なって投資資金の回収に走る、つまり市場からお金が逃げようとするから「株価の変動が大きく」なるというのが現実だ。「いろいろなお金が集まってくる」局面では市場のボラティリティは低下するか、安定的に推移するものだ。 「困った状況に追い込まれた投資家」がもがき苦しんでいる時に集まってくるのは死臭を嗅ぎ付けたハイエナ投資家達である。本当に「稼ぎやすい状況」なのであれば、多くの個人投資家が参戦してくるはずで「我々個人の投資家から見るとちょっと危険で中に入れない」という状況にはならない。 真犯人 では誰が「ジェットコースター相場」を作り出すかというと、それは「株価を投資判断基準にしている投資家」である。 「株価を判断材料基準にしている投資家」というのは、政府と同様に「ファンダメンタルズに変化はない」という盲目的な信仰のもとに、「ジェットコースター相場」にならないことを前提に投資をしている人達である。こうした投資家の判断基準は、「ファンダメンタルズが安定した局面でしか通用しないチャート分析」と「実際には存在しない理論株価」というものだ。 こうした投資家がどんなに「ファンダメンタルズに変化はない」という強い信仰心を持ち続けようとも、ファンダメンタルズは変化する。こうした投資家の信仰心と現実のファンダメンタルズとの間に生じる歪みが「ジェットコースター相場」を引き起こす原動力となる。 そして、投資家の信仰心と現実のファンダメンタルズの間の歪みが大きければ大きいほどエネルギーは大きなものになり、それが限界に達してその歪みエネルギーが解放されるときに「ジェットコースター相場」が示現することになる。 「ジェットコースター相場」が示現する際に「投機筋」が担う主な役割は、市場に充満したエネルギーに火種を近づけることくらいであり、歪エネルギーを蓄積していくのは「株価を判断基準にしている投資家」なのだ。 リーマン・ショックの時も、昨年から続く一連のチャイナ・ショックにおいても、日本は震源地と同等か上回る被害を被っている。これは、「ファンダメンタルズに変化はない」という盲目的な信仰を持った投資家の比率が高いことが原因だといえる。 何があっても「ファンダメンタルズに変化はない」という強い信仰心を抱く投資家と、「ジェットコースター相場」は常に「投機筋による陰謀である」と繰り返す専門家が跋扈している限り、日本市場は「投機筋」の餌食になり続ける運命にある。 ファンダメンタルズは常に変化する。 「自己責任原則」が問われる現在、こうした当たり前のことを前提に投資判断しなければ生き延びることのできない時代になってきているという認識が必要である。「恋は盲目」というが、「投資は盲目」になってはいけない。ファンダメンタルズの変化を感じるのに必要な客観的情報は十分に出回っているのだから。 【関連】「羽があったら空を飛べたのに」公的年金(GPIF)の幼稚すぎる言い訳=近藤駿介
http://www.mag2.com/p/money/7448 日銀の白井審議委員がマイナス金利導入に反対票を投じた理由=久保田博幸 2016年2月18日 FX・先物 1月29日の日銀マイナス金利導入は賛成5反対4の僅差で決定された。同じ僅差で決定した2014年10月の「量的・質的金融緩和」拡大の際に賛成票を投じた白井委員が反対に回った理由とは?(『牛さん熊さんの本日の債券』久保田博幸) 白井審議委員、マイナス金利導入に反対票の背景 2014年10月「量的・質的金融緩和」拡大との違い 1月29日の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入の決定において、マイナス金利の導入は賛成5反対4の僅差となっていた。 反対票を投じたのは白井委員、石田委員、佐藤委員、木内委員の4人であるが、白井委員の反対に違和感を覚えた人がいたかもしれない。なぜならば同じ僅差(賛成5反対4)で決定した2014年10月の「量的・質的金融緩和」の拡大の際に白井委員は賛成票を投じていたためである(この際の反対票は森本委員、石田委員、佐藤委員、木内委員)。 2014年10月の動きを見る限り、執行部寄りかとみられた白井委員が何故、マイナス金利の導入に反対票を投じたのか。それは自らの意見を通したためと言える。 2014年7月23日の白井日銀審議委員の講演のなかで、白井委員は「準備預金へのマイナス金利適用」について触れている。 このときすでにECBは預金ファシリティに適用する金利をマイナス0.1%へ引き下げ、「所要準備を超える部分」(超過準備)に対しても同じくマイナス0.1%の付利を適用していた。 これに対してFRBは0.25%の付利を超過準備に適用。イングランド銀行も準備預金に0.5%のプラスの金利を適用している。 白井委員は、中央銀行がこのようにプラスの金利を支払っている理由について説明している。たとえば、マイナスの金利であれば、銀行間市場が縮小して金融機関が必要なときに市場から即座に資金調達することが難しくなる点を指摘した。 銀行間市場そのものがマイナス金利により機能が低下する可能性がある。これは反対に日銀が大量に資金供給を行って資金がジャブジャブになった際にも起こりうる。むしろ、日銀の超過準備の付利は、2001年から2006年にかけての量的緩和時代に短期金融市場が機能不全に陥ったため、その対策として日銀は超過準備の付利を行った側面もあった。 付利金利があると銀行間市場の金利に下限が生まれ、プラスの金利を維持すれば市場金利の変動は小さくなると考えられる、と白井委員は指摘しているが、日銀当座預金の付利金利を目安とした裁定取引などが活発化することもあり、短期金融市場は活発化する。 日銀は市場金利を大きく変動させることなく銀行間市場に十分な流動性を円滑に供給することも可能となる。これによりバランスシートを拡大する量的緩和政策をし易くなるという(付利による)利点があるとも、白井委員は指摘した。 ところが日銀が超過準備の一部とはいえ、マイナス金利を導入したことにより、これらの利点が失われる懸念がある。白井委員は「その一方で、マイナス金利で期待される効果として、為替相場の減価や金融機関の貸出金利の低下等を期待する見方があります」とも指摘していたが、マイナス金利導入による弊害が優ると判断して、1月29日の決定では反対票を投じたものと推測される。 懸念される短期金融市場の機能不全 現実にマイナス金利の適用が開始された16日の無担保コール翌日物のレートはゼロ%にまで低下してしまった。 今後は短期金融市場が前回の量的緩和時代のように、金利のスペシャリストは必要なくなり、金融機関の資金繰りはアルバイトでも担当出来ると言われた時代に逆戻りする懸念がある。債券市場についても同様な状態になりつつあり、今後は短期金融市場や債券市場の機能不全も懸念材料となってくると思われる。 【関連】個人預金へのマイナス金利適用が「絶対にないとは言い切れない」理由=久保田博幸 http://www.mag2.com/p/money/7449
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