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中国経済の陽は昇るのか、落ちるのか(istock)
日本のバブル崩壊に続くのか? 中国経済ハードランディングの確率
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160220-00010002-wedge-bus_all
Wedge 2月20日(土)9時10分配信
昨年6月の上海株急落と同8月の人民元切り下げは、それまで市場の水面下で囁かれていた中国経済のハードランディング説を、一気に表舞台に引っ張り出すことになった。中国政府による強引な株価対策は失敗に終わり、人民元下落ペースのコントロールも失って、「中国に危機対応力は無い」との印象を世界中の市場に植え付けてしまった。
本年初からの株式市場の大波乱は、そんな中国市場への不安感を契機に生まれたものだが、同時発生的な原油価格の急落や、米国ジャンク債市場の暴落、中東や北朝鮮を巡る地政学リスク、米国利上げへの不透明感など様々なネガティブな材料が重なり、さらに2月に入ってからは欧州の大手金融機関に信用不安も生まれ、消化不良を起こした市場では投資心理が急速に冷え込んでしまったのである。
実体経済の低迷感も鮮明となった。日本の昨年10-12月期のGDP実質成長率は前期比マイナス1.4%(年率)と失速、一強と見られた米国ですら0.7%(年率)と低空飛行の状況にある。ユーロ圏の成長率も前期比0.3%に止まり、新興国ではロシアやブラジルがマイナス成長に陥るなど、不振が顕著となっている。
■ジョージ・ソロス氏が断言 「中国のハードランディングは不可避」
だが、そんな中でも中国の成長率が低下傾向から抜け出せそうにないことが、ひときわ世界の耳目を集めている。昨年10-12月期の同国成長率は前年同期比6.8%と2009年以来の低成長となり、通年でも6.9%と1990年以来のスローペースに落ち込んだ。今年の成長目標は6.5-7.0%というレンジでの設定になりそうだが、ほとんどの機関投資家は実際の成長率を4-5%程度と推測している。
市場の一部には、そうした成長率の維持すら難しいと見る向きもある。著名な投資家であるジョージ・ソロス氏は先般のダボス会議で「中国のハードランディングは不可避」と発言するなど、中国経済への不信感は強まるばかりだ。投機筋は、人民元急落の可能性に賭けて、昨年秋から本金市場で強烈な勢いで人民元売りを仕掛けている。
確かに中国経済への不信感の種はいくらでも挙げられる。実体経済においては、輸出の減少や供給過剰感から来るデフレや失業増のリスク、国有企業の非効率経営が続く構造改革遅延のリスク、民間企業や地方自治体が抱える巨額の債務リスク、銀行の巨額不良債権リスクなどが懸念されており、市場面では、株価や人民元の急落リスクに加えて資本流出リスクが警戒材料になっている。
■加速し始めた資本流出 2015年は6000億ドル以上
中でもいま市場で話題になっているのが、昨年来加速し始めた中国からの資本流出ペースである。2015年通年では6000億ドル以上(約68兆円)の資本が中国から海外に流出し、外貨準備高は2014年6月のピークから約6500億ドル減少した。
その主因は、1人民銀行による人民元買い・ドル売りの為替介入、2海外投機マネーの中国脱出、3中国居住者に拠る海外投資、そして、4中国企業によるドル建て債務返済のためのドル資金手当てである。
このうち、5については少し説明が必要かもしれない。中国の大手企業は2010年以降、米国の量的緩和から生まれた潤沢なドル資金を、ドル建て社債発行を通じて取り入れてきた。当時は人民元の先高観が強く、またドル金利が極めて低い水準にあったことで、ドル建て債務を積み上げるには絶好の時期であった。昨年秋以降、市場に殺到した中国企業によるドル買いは、そんな相場観が崩れてパニック的に起きた債務返済用のドル手当てであった。
従って、資本流出にはむしろ中国企業の財務健全化という一面もある。またG20や全人代(=全国人民代表大会、今年は3月5日)を控えて、中国政府は徹底した人民元防衛に出動する意思を見せており、投機筋も当面は人民元売りを控えるかもしれない。それは、原油価格の底打ち期待とともに、世界の株式市場に安堵感をもたらす可能性もあろう。
■過剰負債でも止めらなれない 過去最高ペースで増える新規融資
だが、同国企業の債務問題はドル建て債券だけの話では終わらない。国内融資や海外市場調達を含む総債務残高は、GDP比150%まで膨張しているからだ。これはバブル期の日本の水準を大きく上回っており、この民間債務の返済可能性こそが、中国経済の先行きを占う最大の注目点であると思われる。少し身震いするのは、過剰負債が明らかになっている今日においても、企業への新規融資が過去最高のペースで増え続けていることである。
中国の債務問題としては、これまで地方自治体が野放図に積み上げてきた財政赤字に焦点が当てられてきた。それは、08年の金融危機への対応策として中国政府が発動した巨額の財政投資に端を発したものであり、地方自治体が進める不動産開発プロジェクトには銀行も積極的に融資を行っていた。それが過剰投資を生んで、銀行の不良債権を急増させているのは公然の秘密である。
そして過去数年間に、内外の金融緩和基調の中で今度は民間企業が借り入れを急増させてしまった。ある香港の調査会社に拠れば、同国銀行の資産規模は7年前から3倍以上に急拡大している、という。その多くが銀行の不良債権と化していることは想像に難くない。中国の主要銀行は不良債権比率を1%台と発表しているが、それは国家統計局公表のGDP以上に怪しい統計である。
ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は6-8%程度と推計、英国市場では10%前後というリサーチが流布している。香港市場には、年末までには20%近辺にまで悪化する、との悲観的な予想すらある。
だが中国政府に、1990年代の日本が行ったような不良債権の大胆な処理を行って、デフレ経済を許容する考えはないだろう。経済の急収縮における失業増は、共産党の一党支配基盤を揺さぶりかねないからだ。世界各国も、むしろ問題先送りに拠るソフト・ランディングを期待しているのである。市場も疑心暗鬼ながら、その可能性に賭けている。
だが、中国が不良債権問題をこのまま隠し通せるのかどうか、誰にも確答は無いだろう。当の習主席自身すら解っていないかもしれない。中国のハードランディング確率は、コインを投げて裏表を占うようなものだ。今年の日本を含む世界経済は、そんな不安定な状況での運航を余儀なくされているのである。
倉都康行 (RPテック代表取締役、国際金融評論家)
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