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アベノミクス下の日本経済「本当の読み解き方」を教えよう〜「非正規雇用が増えたのが問題」は、大いなる間違い!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47974
2016年02月19日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
■景気の「マイナス 」は本当か?
2015年10〜12月期の国内総生産(GDP)が年率換算でマイナス1.4%になった。一方で、昨年は「正社員の増加数が非正規の増加数を上回った」という明るいニュースもある。景気はこれからどうなるのか、そして安倍晋三政権はどうするのか。
まず、先に発表されたGDPの数字を確認しよう。
10〜12月期のGDP速報値(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf)で注目されたのは個人消費の弱さだった。なぜかといえば、個人消費が増えていると、家計が先行きに安心感が抱いている証拠になる。だから先行きも明るいとみていい。しかし逆に弱いと、家計が将来に不安を抱いているのだから、先行きも暗いという話になる。
よく個人消費の強さ、弱さを天気のせいにする解説がある。役所もそう説明するから、もっともらしく聞こえるが、それが本当なら天気予報を見ていれば、景気の先行きも分かるという話になりかねない。天気予報士の景気見通しが当たるのか。ビールの売り上げには関係あるかもしれないが、私は天気と消費、マクロ景気の相関関係をあまり信用していない。
それはともかく、個人消費が年率(以下同じ)でマイナス3.3%に落ち込んだのは、やはり家計が「いま無駄遣いはできない」とみて支出を絞っているからだ。それは住宅投資にもみてとれる。家計の支出でもっとも高額なのは住宅である。
住宅投資はマイナス4.8%とガクンと減った。マイナスは4四半期ぶりである。例のマンション杭打ち偽装問題も響いているだろうが、家計は「住宅を買うような余裕はない」と気分を引き締めているのだ。
かろうじて救いになったのは、企業の設備投資だった。プラス5.7%と前期に続いて順調に伸びた。だからといって安心はできない。年初来の株価急落は企業の財務悪化に直結する(輸出企業には円高も)。企業もこれから投資に慎重になるはずだ。
■「安倍政権で非正規増」議論の正しい読み方
念のため繰り返すが、以上は昨年10〜12月期の数字である。新聞やテレビは「新しいニュース」を報じるのが仕事なので、最新の「マイナス1.4%」という数字が見出しになる。だが、景気の流れをみるときは、もう少し長い目でみたほうがいい。速報値は後で修正されるのも毎度のことだ。
昨年1年間はどうだったかといえば、GDPはプラス0.4%だった(資料は同じ)。個人消費はマイナス1.2%、住宅投資はマイナス2.6%で、設備投資がプラス1.3%だった。好調だったとは言えないが、まったくダメという水準でもない。なんとか持ちこたえてきたが、年末にかけて勢いが衰えてきた。そういう感じである。
次に雇用だ。GDPの数字よりも、雇用情勢は多くの人々の暮らしに直結している。大学新卒者には就職先が全然、見つからない氷河期より、第一志望でなくても就職先があって落ち着けたほうが良いに決まっている。
既卒者や中年サラリーマン、主婦や高齢者にとっても働き口が見つけやすいに越したことはない。有利な転職先があるかもしれないし、週に2日とか3日とか、1日5時間までとか、自分の都合に合わせて働ける可能性が広がる。
そこで非正規雇用をみてみよう。野党はとかく「非正規=かわいそうな労働者」というイメージで非正規労働を論じるが、非正規雇用者2015万人のうち、7割の1414万人はパートやアルバイトである。
よく問題になる派遣社員は133万人にとどまっている。非正規全体の5%強だ(15年10〜12月期労働力調査、http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/pdf/2015_4.pdf)。
しかも、2015万人の非正規のうち「自分の都合のよい時間に働きたいから」という人が26%、「正規の職員・従業員の仕事がないから」という人が15.9%である。非正規の労働条件改善はもちろん重要だが、ここは事実として抑えておくべきだ。15.9%の部分をどうするか、が課題の焦点になる。
■8年ぶりの正規雇用増>非正規雇用
2月16日に発表された15年暦年の労働力調査(http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/youyaku.pdf)によれば、役員を除く雇用者は5284万人で前年に比べ44万人増えた。安倍晋三政権が誕生した12年は5154万人だったから、130万人の増加である。
「3年間で130万人の雇用増加」という結果をみれば、これだけでアベノミクスの成功を物語っていると言っていい。経済政策のもっとも重要な目的は雇用の確保である。
とりわけ正社員は前年比26万人増と8年ぶりに増加に転じた。非正規は18万人増だ。日本経済新聞によれば、正規の増加が非正規を上回るのは21年ぶりという。この傾向はいまに始まったわけではない。実は14年7〜9月期の時点で、正規雇用が前年同期でプラスに転じる一方、非正規の増加幅が小さくなっていた(http://www.stat.go.jp/data/roudou/rireki/4hanki/dt/pdf/2014_3.pdf)。
私はこの点を当時、連載していた『週刊ポスト』のコラム(http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11959528933.html)で紹介し、15年元旦未明に放送された討論番組『朝まで生テレビ!』でも指摘した。非正規から正規への転換が始まった、とみたからだ。
野党やアベノミクス批判派は「増えているのは非正規ばかりで正規は増えていない」と批判しているが、実態は1年以上も前に正規が増える傾向に転換していたのである。
それは企業側の事情を反映している。パートやアルバイト、派遣で当面の人手不足を補っても、人手不足が長期化してくると、業務の安定や生産性向上のために正社員を雇ったほうがいいと考える。大手コーヒーチェーンや衣料品製造販売など大量の非正規を雇っていた業種で正規への転換が起きている例が典型だ。地域限定正社員が多いが、パートやアルバイトに比べれば、一歩前進ではないか。
景気全体はけっして思わしくないが、そんな中でも徐々に変化が始まっている。ではこの先、景気はどうなるか。
■最大の景気対策は、やっぱりアレ
私は中国の景気後退と原油安、それらが全体として引き起こしている株価下落や円高の流れは当分変わらず、日本経済への打撃が大きいとみる。先にも触れたが、いまの株安・円高が今後、企業の投資行動を慎重にさせるのは避けられない。
となると、かろうじて堅調だった設備投資も下向きになって、全体として景気の先行きは暗い。
日銀の黒田東彦総裁がデフレ脱却(消費者物価上昇率2%達成)を17年9月まで先送りしたのは、ご承知の通りだ。いまの情勢なら日銀は一段の金融緩和を考えるだろうし、3.3兆円規模の補正予算効果もこれから出てくる。だが、それでも景気を下支えするには力不足である。
結局、消費税の10%引き上げを再延期するか凍結するのが最大の景気対策になる。安倍政権はそこを、よく理解しているはずだ。
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