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実質賃金低迷でマイナス成長 明白になったアベノミクスの破綻
http://diamond.jp/articles/-/86501
2016年2月18日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] ダイヤモンド・オンライン
GDPマイナス成長の大きな原因は、消費の落ち込みだった
2015年10〜12月期の実質GDP(国内総生産)はマイナス成長になった。その原因は消費が伸びないことだ。これは暖冬のせいだと言うのだが、もっと基本的な原因がある。それは、実質賃金が伸びないことだ。原油価格が大幅に下落しているのだから、本来は、日本人の所得が大幅に増え、消費も増えなければならない。ここに、アベノミクスの基本的な問題点が露呈している。
■マイナス成長の主因は消費の落ち込み 実質消費は中期的に減少している
GDP速報によれば、2015年10〜12月期の実質GDPは、対前期0.4%減となった。年率換算では1.4%減だった。名目GDP成長率は前期比0.3%減、年率では1.2%減だった(なお、15年暦年のGDPは実質で前年比0.4%増、名目で2.5%増となった)。
14年度はマイナス成長であり、その後も実質成長率はほぼゼロの近辺である。この結果、実質GDPはほとんど増えていない。15年10〜12月期の年率換算の実質GDPは527.4兆円だが、これは13年の中頃と同じくらいだ。
15年度の実質成長率が政府経済見通しの計数(1.2%程度)を達成するには、16年1〜3月期で前期比年率8.9%程度の伸びが必要になる。これは、到底不可能なことだ。現実の経済は、政府の想定よりはるかに悪化していることになる。
マイナス成長の大きな原因は、実質最終消費支出が対前期比0.8%減と、大きく落ち込んだことだ。
この原因について、石原伸晃経済再生相は、「暖冬の影響で冬物衣料などの売れ行きが鈍かったため」と述べた。確かに、短期的に見れば、そうした影響もあったろう。
しかし、暖冬だけが原因ではない。事実、1月の国内の新車販売台数は前年同月比4.6%減と、13ヵ月連続で前年実績を下回っている。消費の減少は、一時的なものでなく、中期的な傾向なのだ。
図表1に示すように、10〜12月期の実質民間最終消費支出は304.5兆円で、消費税増税直後の14年4〜6月期の305.8兆円を下回った。安倍内閣が発足した12年10〜12月の308.5兆円よりも減っている。
これまでの推移を見ると、13年には消費税増税前の駆け込み需要で一時的に増えたが、その後は、14年も15年も、安倍晋三内閣の発足前の12年より低い水準になっている。
つまり、国民生活にとってもっとも重要な支出項目である消費支出は、アベノミクスによって減少しているのである。
◆[図表1] 民間最終消費支出
(資料)内閣府
■実質賃金が伸びないから消費が伸びない 安倍内閣の発足後からマイナスが顕著に
消費が伸びない本当の原因は、物価の上昇に比べて賃金が伸びず、その結果、実質賃金が低下していることである。
毎月勤労統計調査によって実質賃金の推移を見ると、図表2に示すとおりだ。
実質賃金指数は、中期的に下落を続けている。2010〜12年まではほぼ一定だったが、それ以降の下落が著しい。
◆[図表2] 実質賃金の推移
(注)2000年平均=100 (資料)厚生労働省、毎月勤労統計調査
この結果、実質賃金指数は、10年上半期の94.2から15年上半期の89.3まで、5.2%下落した。15年7月から10月までは対前年比がプラスになったが、11月には再びマイナスになった(なお、GDP統計における実質雇用者報酬は、15年10〜12月期は前期比0.2%増と2期連続で増加している。ただし、 雇用者報酬には、公務員の給与や社会保険料の雇用主負担も含む。したがって、民間の給与の実態を見るには適切なものとは言えない)。
安倍内閣は春闘に介入して賃上げを促進したとしている。しかし、実質賃金で見た経済の実態は、このようなものである。
とりわけ、実質賃金のマイナス成長は、安倍内閣発足後の13年以降に顕著になっていることに注目すべきである。
■原油価格下落の恩恵は消費税分を上回る だがそれは企業利益増でとどまっている
しかし、先に見た実質賃金下落は、本来はありえないことである。なぜなら、原油価格をはじめとする資源価格が大幅に下落しているからだ。
この連載ですでに見たように、資源価格の下落は、日本の交易条件を大幅に改善した(「日本の利益となる輸入価格下落がなぜ成長につながらないのか」(http://diamond.jp/articles/-/84243)の図表3を参照。また、「資源価格下落は日本への未曾有のボーナス」(http://diamond.jp/articles/-/84936)も参照)。
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消費が停滞しているのは消費税の影響だという意見がある。しかし、資源価格の下落は、消費税増税額をはるかに上回る効果を日本経済に与えているのである。それは、消費税を全廃した場合の結果にも近いものだ。だから、本来は、所得が増え、消費が増えるはずだ。
では、この利益はどこに消えてしまったのだろうか? 企業利益が増え、企業の内部留保が増えた段階で止まってしまっていると考えざるをえない。
このことは、本連載でもすでに述べた(「資源価格下落の利益が企業の内部留保に吸収されている」http://diamond.jp/articles/-/85316)。
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あらためて企業利益の推移を法人企業統計で見ると、図表3に示すとおりである。13年における利益増は円安によるものであったが、14年10〜12月以降の増加は、輸入原材料価格下落の効果であると考えられる。
円安は企業利益を増加させただけで賃金所得を増加させなかったが、資源価格下落の効果も、賃金所得には及んでいないわけだ。つまり、どちらの場合にも、トリクルダウンなどまったく生じていないのである。
◆[図表3] 法人企業統計の営業利益
(資料)財務省、法人企業統計
■設備投資は増加するも先行き不透明 アベノミクスのGDP増は公共支出増加による
2015年10〜12月期において、輸出は対前期比0.9%減と、2四半期ぶりのマイナスになった。ただし、資源価格下落によって輸入が減少したため、GDP成長率に対する外需寄与度はプラスになった。
設備投資は前期比1.4%増と2四半期連続のプラスとなった。ただし、設備投資の先行指標である産業機械受注高は、15年12月に前年同月比21%減である。さらに、円高の進行で企業収益が下振れする懸念もあることから、先行きは不確実だ。
公共投資は2.7%減となった。ただし、中期的に見ると、図表4に示すように、公共支出(政府消費支出と政府固定資本形成の和)は、継続的に増加している。
実は、アベノミクスによってGDPが増えているのは、ひとえに公共支出のためなのである。
◆[図表4] 公共支出の推移
(資料)内閣府
■実体経済とまったく関係がない株価の動き それも下落で破綻は誰の目にも明らかに
以上で見たのは2015年10〜12月期のデータであり、これは16年1月に金融市場が大混乱する前のことである。
今後を見れば、経済を好転させる条件は何も見当たらない半面で、急速な円高が企業利益に与える影響が懸念される。
これまで、アベノミクスが実体経済を改善しないと指摘されてきていたが、それでも株価が上昇していることが支えとなってきた。しかしその支えもなくなった。
アベノミクスが破綻していることは、誰の目にも明らかになった。
なお、GDP速報が発表された2月15日、日経平均株価は1000円を起す上昇を示した。GDPの減少など、まったく関係がない。株価が実体経済の動向と無関係に動いていることが、よくわかる。
「実体経済が悪化すると、緩和政策が取られるとの期待が生じるため、株価が上がる」とも言われる。しかし、この日の株価の動向は、それとも無関係だ。日本の経済政策や金融政策とは関係なく、為替レートが円安に動いたことと、欧米市場で株高が進んだことだけを理由としたものだ。
まったくのマネーゲームとしか言いようがない。この状況を見ていると、GDP統計を分析することが虚しくなってくる。
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