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歯車はいつ狂い始めたのか…(※イメージ)
泥沼のシャープ “一流意識”改革が生んだ社員の勘違い〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160217-00000002-sasahi-ind
週刊朝日 2016年2月26日号より抜粋
経営難の家電大手シャープの支援は誰が。当初優勢は政府系ファンドのはずが、液晶や白物家電事業も分離する案……。そこで一転優勢になったのは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業だ。
歯車はいつ狂い始めたのか。60代の技術系OBが悔やむのはある変化だ。
「2000年代半ばか、当時の町田勝彦社長が社内で言い始めた『一流意識を持て』という言葉がひっかかっている。あのあたりから社員の勘違いが始まった。一流意識なんかいらない。シャープの強みは技術者がハングリー精神を持ち、次々と新製品を開発するところ。エレクトロニクスは製品の寿命が短い。だからこそハングリーさが必要。それが強みだったはずだ」
シャープの個性を象徴する、こんな話がある。1973年、液晶電卓を世界で初めて開発。ところが、間もなく担当部長が言った。「液晶電卓はもう先が見えている。次だ」
数年後に出したのは、液晶を使った「電子式タクシーメーター」。当時はまだ歯車の機械式だったが、高度成長期の所得増加でタクシー利用も増え、料金改定を繰り返す時代。そこに目を付けてOEM生産に乗り出した。「ヤギの人工心臓」など医療分野の研究開発もあった。
ところがそのうちの一つで一世を風靡した液晶が“泥沼”となる。液晶テレビ「AQUOS」(01年発売)を筆頭に液晶事業が成功を収めると、サムスンなど韓国勢も次々と市場に参入。対抗するシャープは約4300億円を投じて大阪府堺市に世界最大級のテレビ用液晶工場を造るなど、資金などのリソースを液晶に集中させた。だが昨年4〜12月期決算の液晶事業は372億円の営業赤字。「執念」が皮肉な結果を招いている。
「かつて社長は全体をみるのにとどめた。現場に任せていた。そのころは担当部長の責任で『隠れ研究』ができ、さまざまな事業が出てきた。それが何でも本社に報告させ、本社が主導し始めた。液晶が成功したことで過剰に投資し、会社自体も踏ん反り返るようになった。だが製品の需要には限界もある。テレビ画面を大型化して鮮やかにしたところで、それ以上はいらないよ、という限界がある。最後には家の壁全体を画面にでもするのかと戸惑った」(前出の技術系OB)とする。
昨秋実施した早期退職では約3200人が社を去った。それでも現役社員が「バラバラ」に抵抗する理由がわかってきた。シャープは「会社」ではなく、技術を発想して挑戦する「場」だったということだ。今も「らしさ」は残っている。
「今日も頑張ろう」「え?なになにー」
言葉を交わすのは人間ではなく、隣に並んだ冷蔵庫とオーブン。まるで漫画のようだが、インターネットと家電が融合する「IoT」と人工知能(AI)を組み合わせた最新家電だ。
1月に訪ねたのは大阪府八尾市の工場敷地内。そこにあった不似合いな戸建て住宅は、商談相手に実際の生活シーンで商品を見てもらおうと建てた家という。技術開発を手がけるクラウドサービス推進センターの阪本実雄所長は言う。
「最新家電のヒントはスマホ。二人が同じスマホを同時に買っても、アプリなど使い方次第で全く異なるものになる。同じように家電もピッと消費者に合わせる。AIと自社クラウド、家電をつなぎ、我が家流、私流に育つ家電にする。これから家電はおもしろくなるよ」
ツイッターで温かい言葉も寄せられている。
「これからも頑張って下さいね。我家のテレビは物持ちがよいので、未だにAQUOS世界の亀山モデルです。エアコン3台に、加湿器に空気清浄機2台etc……この夏買い替え予定の寝室のエアコンもシャープさんのにしようと思っていますから、此れ迄と変わりなくいて下さいね」
今後をどうみるか。外資系家電メーカーの元社員は「(ホンハイ案優先は)目先のカネに目がくらんだのか。経営陣を含めガバナンスをそのまま維持して好転するほど業界は甘くない。今は消費者はソニーだからシャープだからという社名では買わない時代です。どんな商品でどんな体験ができるのかを重視しています。従来のメーカーの考え方、コスト優先だけの企業のままで、成功できるとは到底思えない」と手厳しい。
早期退職した40代の元社員も「どちらの案も茨の道。リストラなしに再生はあり得ない。ホンハイは交渉上手。この流れで機構が離れれば、徐々にホンハイは支援条件を下げてくる。そうなれば後の祭りです」。
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