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トヨタ86(「Wikipedia」より/Flickr upload bot)
トヨタ、「若者離れ」深刻…肝入り施策が軒並み失敗、ブランドからもひっそり撤退
http://biz-journal.jp/2016/02/post_13738.html
2016.02.12 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
トヨタ自動車は、米国で展開していた「サイオン」ブランドから8月で撤退すると発表した。トヨタが不得意だった「ジェネレーションY」と呼ばれる米国の若年層を開拓するために2003年に立ち上げたブランドで、ピーク時には年間17万台を販売したが、ここ数年は販売が5〜6万台に低迷していた。トヨタは「一定の成果があったため、トヨタブランドに移行することを決めた」(早川茂取締役・専務役員)としている。
ガソリン価格が下落し、若年層の関心も大型SUVにシフトしているなか、関心を惹きつけるブランドとして存在感を打ち出すのは困難と判断したもので、若年層を開拓する戦略の見直しを迫られことになった。
トヨタ車は、クルマのデザインなどが保守的なこともあって、米国では購入者は中高年層が多く、若年層の開拓が長年の課題だった。サイオンブランドは、若者向けにこれまでと異なる商品やビジネスを試行するため、03年に米国でのみ立ち上げたトヨタ、レクサスに続く3番目のブランドだ。
若者にアピールするためカリフォルニア州で販売をスタートした後、米国東海岸、そして全米へと拡大していった。小型車である「xA」(初代イスト)、「xB」(bB)をサイオンブランドで販売開始後、2ドアスポーツクーペ「tC」を投入するなどして販売を伸ばし、ピークの06年には17万台を販売してきた。しかし、その後は販売がジリ貧となり、11年には販売台数が5万台を割り込んだ。
12年には販売をてこ入れするため、富士重工業と共同開発した「FR-S」(トヨタ86)を投入したが、14年の販売台数が5万8000台と打開できないままだった。15年には、マツダの「デミオ」のOEM(相手先ブランドによる生産)供給車をサイオン「iA」の車名で投入した。マツダはデミオを北米で販売していたが、環境技術「スカイアクティブ」を搭載したモデルが若者に受けて販売を伸ばしていたマツダに頼らざるを得ないほど、サイオンブランドは追い込まれていた。
米国の新車市場が過去最高となるなかで、iAに加えて新型車「iM」(オーリス)も投入した15年のサイオンブランドの販売台数は、5万6000台と前年を割り込んだ。サイオンブランド販売店は全米に約1000店あり、1店舗平均で年間56台、月間にすると4台強しか販売していないことになる。
トヨタは、サイオンブランドをFR-S、iA、iMのトヨタブランドに変更し、tCは販売を打ち切る。昨年のロサンゼルスモーターショーではサイオンブランドで公開した小型SUV「C-HR」はトヨタブランドで販売する。サイオンブランドの販売店は、そのままトヨタ販売店となる。
■国内でも失敗
サイオンブランド設立時のバイス・プレジデントで、現在は北米トヨタCEO(最高経営責任者)を務めるジム・レンツ氏は、「今回の決定は後退ではなく、トヨタブランドの飛躍を意味する。トヨタブランドでは困難だった新しいアイデアを、サイオンを通じて次々と試みることができた」とその成果を強調する。
しかし、サイオンブランドが若者の需要を開拓するという当初の目標を達成できなかったのは明らかだ。特に米国市場では、ここ最近のガソリン価格の下落の影響もあって大型SUVやピックアップトラックの需要が拡大しており、これらのモデルは若年層からも支持されている。ガソリン価格が再び大幅に上昇することが見込めないのに加え、「若い顧客がクルマの見た目や運転の楽しさを重視する一方で、以前より実用性を重んじる傾向にある」(トヨタ)としてサイオンブランドからの撤退を決定した。
トヨタは、日本でも若年層向けの戦略ですでに失敗している。1999年の異業種による合同プロジェクト「WiLL」だ。若年層の需要を掘り起こすことを目的に、トヨタやパナソニック、アサヒビール、花王など異業種企業が協調し、それぞれ自社製品にWiLLブランドを冠して展開してきた。
しかし、WiLLは浸透せず、トヨタ以外は相次いで撤退。トヨタは最後まで継続してきたが、需要は低迷して05年にはすべてのモデルの販売を打ち切っている。
世界販売台数が1000万台を超えて4年連続で世界トップの自動車メーカーとなったトヨタ。しかし、若年層を開拓しなければ「ユーザーが高齢化して、いずれは顧客が離れていく」との危機感は強い。もっとも苦手とする若い世代をどう惹き付けていくのか、トヨタの悩みは深い。
(文=河村靖史/ジャーナリスト
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