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中国の失速ぶりに、黒田日銀総裁もお手上げ〔PHOTO〕gettyimages
中国経済の急減速に、原油安… 世界経済「同時株安」の正しい読み方 下げて上がって下げて下がる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47738
2016年02月09日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
■3兆円がふっとぶ
「中国経済の急減速は、爆買い需要をあてにしてきたインバウンド業界はもちろんのこと、他の様々な日本企業、そして世界経済全体に大きな重しになっています」
こう語るのはS&Sインベストメントの岡村聡代表。世界経済が中国に振り回されている。
「年初来の金融市場の混乱の主因は、やはり中国。たとえば、1月4日に過度な株価の崩落を防ぐために、上海市場でサーキットブレーカーが発動しました。これは市場が7%以上下落したら、取引を停止するという制度。それがかえって市場の不安を煽り、初日から下落が止まらなくなった。
中国の市場管理能力の甘さに愛想をつかせた機関投資家たちは、資金をどんどん引き上げています」(岡村氏)
その結果、中国の株安・元安が進み、爆買い需要が収縮しつつある。日本総研の副理事長・湯元健治氏は、元安の進行が日本経済に与える影響は非常に大きなものがあると分析する。
「中国人が日本で爆買い消費する額は、昨年1年間で3兆円を突破しました。この調子でいけば今年は4兆円だという見方もあったのですが、ここに来て風向きが変わってきた。
中国人観光客によって日本のGDPは0.3~0.4%くらい押し上げられていると思われますが、その分が無くなってしまうと、GDPの実質成長率('15年度は1.2%程度)は1%を切ってしまうかもしれません」
そうなると、日銀の黒田東彦総裁が掲げてきた2%の物価上昇目標は、ますます実現性のうすい「画餅」になる。
なんとしてもアベノミクスを成功させるため、政府は今年度の補正予算を総額で3兆3000億円組んでいる。だが、中国人のインバウンド消費が激減すれば、補正予算の効果はすべてチャラになってしまうのだ。
■株式市場の反応は早い。
昨夏より中国人観光客をあてにしたインバウンド関連銘柄は大きく値を落としている。例えば、観光客の爆買いで潤ってきたラオックス。昨年9月には410円をつけていた株価が、今年1月には半値以下の160円台まで下げた。
■6~7月が危ない
証券アナリストの植木靖男氏が語る。
「インバウンド関連銘柄は総じて難しい状況にあります。三越などのデパートを始め、マツモトキヨシ、ドンキホーテといった小売、資生堂やコーセーといった化粧品、日本航空、JR東海といった運輸関係にHISといった旅行業界。実に幅広い銘柄が売られている」
インバウンド関連銘柄の多くは日経225に組み込まれていないため、日経平均への影響は直接にはない。しかし、訪日観光客が減少したというニュースが流れると、市場に与える心理的ダメージは大きいものがある。
「日経平均は当面は上昇して1万9000円くらいまで戻す可能性もありますが、参院選前の6月から7月にかけて、訪日客減少といったニュースが取り上げられ、海外市場も冴えないとなると、1万4000円くらいまで下落する可能性があります」(植木氏)
「1ドル=115円を割り込むまで円高が進めば、日経平均が1万5000円近辺まで急落する。爆買いストップが顕著になれば、さらに500円くらい下落してもおかしくない」(湯元氏)
シグマ・キャピタルのチーフ・エコノミスト、田代秀敏氏は、「証券会社アナリストたちは、中国関連銘柄というだけで株式見通しをネガティブにしている」と語る。
「少し前までは中国関連はプラスの評価要因だったのに、今ではその真逆。中国に進出している企業の中には、四川省の成都でイトーヨーカドーが大成功しているセブン&アイ・ホールディングスのようなところもあるのですが、そういう会社も、ネガティブにしか報じられないので『中国関連』での取材を断っています」
ことほど左様に、中国経済は世界経済のブレーキ役になっている。
中国経済の減速は、日本のみならず世界の経済情勢、そして政治情勢までをも恐ろしく不安定化させている。
混乱に拍車をかけているのは、原油安だ。原油価格の先物指標WTIは1月20日に1バレル=26・55ドルをつけ、リーマンショック後につけた32ドルを大幅に下回った。
原油安の原因は、需要サイドと供給サイドの両方にある。需要サイドの主たる原因が中国経済の失速である。いままで「世界の工場」として膨大な石油を消費してきた中国。その生産活動が停滞することで、需要が大幅に鈍化している。日本と中国に事務所を置く弁護士事務所の関係者が語る。
「中国の製造業の落ち込みには、目を覆うものがあります。この一年、日中をまたがる仕事の大半が、『いかに中国の工場や会社をたたむか』という話ばかりです。ジョイントベンチャーの解消であったり、なかには夜逃げ同然で逃げ帰ってくる日本企業も多い。
昨年、北京のリチウム電池工場を閉鎖したパナソニックが典型例です。製造業が落ち込めば当然、石油の消費量も細ります」
その一方で、経済制裁解除でイランが石油を増産することになったにもかかわらず、サウジアラビアなどの産油国が減産しないという供給サイドの問題もある。
原油安は、長い目で見れば資源を輸入している国の経済にとってプラスの材料だが、短期的には世界的混乱の要因となる。これまで資源ブームに支えられてきた資源国の経済はボロボロで、政治的混乱も引き起こしている。
昨年12月にジルマ・ルセフ大統領の弾劾を求めるデモが拡大したブラジル。今年は南米初の開催となるリオ・オリンピックをひかえてお祭りムードになるはずだったにもかかわらず、あまりに経済状況が悪いので、国民の間では新年のあいさつを「'17年、おめでとう」と交わすのが流行しているという。経済的に悲惨な状況にある'16年をすっ飛ばしたいというブラック・ユーモアだ。国営石油企業ペトロブラスの汚職問題が明るみに出るなか、財務大臣が退任するなど、混乱が収まる気配はない。
輪をかけて危ないのが中東情勢だ。GDPの43%を石油部門に頼るサウジは、長期化する原油安に耐え切れず、国営石油企業サウジアラムコの新規株式公開(IPO)を進めている。外資系投資銀行の関係者が語る。
「実現すれば時価数兆ドル(数百兆円)の世界最大の企業が誕生することになり、株式公開に関わる投資銀行にとっては垂涎物の案件です。
それにしても、国営石油企業をIPOせざるを得ないほど、サウジの財政状況が追い込まれているという事実は、想定外でした。サウジを始め石油産出国の国営ファンドは次々と市場から資金を引き上げています」
■アメリカのリスク要因
加えてイランとの宗教的対立も高まっており、今まで比較的安定していると見られていたサウジ情勢が流動的になれば、イスラム国(IS)の勢力拡大も相まって中東で「火薬」が一気に破裂する可能性もある。
新興国がこのようなありさまだから、リスクを嫌うマネーが行き着く先は決まっている。米国だ。
「市場関係者は米国経済がバラ色でないことは承知していますが、比較的安全な場所として、消去法的に米国に資金を流しています。
にもかかわらず、ニューヨークダウは年初から一時2000ドル近くも下落しており、米国市場自体も動揺していることは明らか。リスク回避としてのドル買いが進んでいること、そして昨年末に利上げがあったことでドル高基調が続いており、とりわけ製造業、エネルギー産業を中心に悪影響を及ぼし始めています」(前出の岡村氏)
米インテルが1月14日に発表した'15年10~12月四半期の決算では純利益が1・3%のマイナス。S&P500を構成する500社の一株当たり利益も、同四半期に7%マイナスになる見込みだ(前年同期比)。
昨年末、利上げに踏み切ったFRB(連邦準備制度理事会)のジャネット・イエレン議長は、年内に1~2回の再利上げを行うと見られている。前回の利上げで、明らかに動揺が広がっている世界経済に、さらなる利上げショックが走ったとしたら……。
「次回の利上げは6月と見られています。イエレン氏の性格からいって、慎重を期すと思いますが、さらに新興国通貨安が進み、世界経済が不安定化する可能性もあります」(岡村氏)
日経平均は下げて上がってを繰り返しているが、最終的には「下げて下がる」のが、今年の世界経済の正しい読み方なのだ。
「週刊現代」2016年2月13日号より
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