急成長を遂げた中国P2P融資の深い闇P2P融資業者は過去4年間で雨後のタケノコのように増殖 PHOTO: BLOOMBERG NEWS 2016 年 2 月 8 日 14:13 JST 中国のピア・ツー・ピア(P2P)レンディング(資金を借りたい人と貸したい人を主としてネット上で結び付ける融資仲介サービス)は、経営の失敗や詐欺の問題に悩まされているが、ここに来て少なくとも1人の死者が出た。 Tongxin Venture Capitalは中国東部・山東省に本拠を置くP2Pのプラットフォーム。同社は違法営業の疑いで捜査を受けているが、3日に自社ウェブサイトに「社告」と称して2枚の書類コピーを掲載した。1枚は死亡証明書、もう1枚は火葬証明書だった。 この2枚の書類によると、同社の創業者であり、唯一の株主で法的な代表でもある蘇衛東氏(43)は1月31日に心不全で死去し、その翌日に火葬された。 泰安市岱岳区の葬儀場は、この火葬証明書が本物だと確認したが、それ以上の詳細の公表を控えた。Tongxinに接触はできていない。電話はつながらず、ウェブサイト上の顧客サービス機能も動いていない。 泰安市の警察当局は蘇氏の死亡を認め、死因は調査中だと述べた。同当局によると、これまでにTongxinの投資家14人が損失を訴えている。ただ、どのくらいの損失かは明らかになっておらず、同社は業務を停止したと述べている。 新華社通信の5日遅くの報道によると、警察は一般市民から違法に資金を受け取っていた疑いで同社を捜査中だという。 Tongxinの破たんは、中国のP2P融資部門の混乱を表す最新例だ。中国のP2P融資は投資家に高いリターン(利回り)を提供することで、世界最大規模に急成長した。Tongxinのウェブサイトは、投資家に年18%のリターンを約束している。ただし投資計画に関するコンテンツは削除されている。 P2P融資業者は過去4年間で雨後のタケノコのように増殖した。中国のインターネット金融サービス会社「網貸之家」によると、2015年末の時点で中国全土に2600を数えるP2Pプラットフォームがあり、貸出総額は1500億ドル(約17兆6000億円)を超えているという。この爆発的な成長と中国経済の減速がさまざまな問題につながった。経営者が逃げ出すといった問題や、90万人の投資家から76億ドルを集めた業者が廃業するといった問題だ。これは現在、中国最大級の詐欺事件になっている。 中国の金融規制当局は昨年12月、P2P融資業者の約30%に問題が見つかったと述べた。同当局はそれ以降、貸出規制の厳しいルール案を作成した。プラットフォームによる顧客へのリターン保証の禁止などだ。 Tongxin がどれほど金額を投資家から受け取っていたか明らかでない。同社は2014年に登記資本金3000万人民元で設立された。中国の格付け会社、大公国際資信評価は昨年、Tongxinは十分な情報を公開しておらず、経営も問題含みで、資金調達コストも高いと投資家に警告していた。そして、これらすべては、Tongxinの事業の持続可能性に疑問を投げ掛けるとしていた。 網貸之家の報告によると、先月にはP2P融資業者54社で幹部が逃亡しており、19社が閉鎖したという。また、1月に問題含みだったP2P融資業者88社のうち、Tongxinが本拠にしていた山東省に28社が集中しているという。 専門家たちは、春節(旧正月)の祝いの本格化につれて、投資家たちは資金の償還を要求しており、その結果、比較的小さなP2Pプラットフォームが打撃を受けるかもしれないと述べている。 関連記事 フィンテック先進国、中国に見る現状と課題 9200億円集めた投資詐欺、中国で摘発 中国の信用取引規制強化、P2P融資会社に打撃
Column | 2016年 02月 8日 13:37 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:中国資金流出めぐる一問一答、当局は阻止できるか
[北京 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国からかつてないほど急速なペースで資金が流出している。昨年の外貨準備高は5130億ドル減って3兆3300億ドルと、20年にわたる外貨準備の増大の流れが逆転した。これが人民元の下げ圧力となり、金融市場を動揺させ、さらなる資金流出を促している。 BREAKINGVIEWSは資金流出の背後にあるさまざまな要素に目を向け、次に何か起こりそうかについてQ&A方式で以下に記した。 ─西側諸国はかつて中国の外貨準備増大に不満を表明していたのに、なぜ縮小に懸念を抱くのか。 これまでずっと、中国の外貨準備の蓄積は人民元が人為的に低く抑えられていた結果だった。2012年まで国際通貨基金(IMF)は人民元が過小評価されていると主張していた。しかし実際には14年半ばまでの10年間に、人民元はドルに対して25%上昇している。通貨高と高成長、相対的に高い金利水準が相まって、海外投資家の資金を引き寄せていたのだ。同じ理由から中国企業は海外での借り入れを積極化した。 ところが今、このプロセスが逆流している。中国企業や投資家が人民元をドルに転換するにつれて、国内の流動性が低下した。資金流出によって当局は、減速を続ける経済をてこ入れするために利下げをしたり、銀行預金準備率を引き下げることが難しくなっている面もある。 一方で外国投資家は、急激な通貨切り下げが各国間の通貨安競争を招くのではないかと心配している。 ─外貨準備の減少を見れば、中国からどのぐらいの規模で資金が出て行ったかが分かるか。 正確には分からない。外貨準備減少の一部はユーロ安など保有通貨の減価によるものだ。株安や債券価格下落も外貨準備を目減りさせる。中国国家外為管理局(SAFE)によると、この2つの要因で昨年の外貨準備は1700億ドル減少した。中国は依然として大幅な貿易黒字を計上しており、これは逆に外貨準備を押し上げた。 資金流出については、4つの要因が働いている。それは(1)中国企業による海外での買収(2)外貨建て借り入れの返済(3)外国投資家の資金引き揚げ(4)中国人による旅行や海外資産投資のための人民元売り──だ。 いずれも先進国なら冷静な動きができるが、中国の場合はパニック的な資金流出へとつながる恐れがある。 ─中国政府が事態は全面的にコントロールされていると表明しているのに、何が資金流出に拍車を掛けているのか。 人民銀行(中央銀行)が昨年8月、人民元の対ドル相場の2%下落を容認した切り下げを実施したことが、不安を巻き起こした。これは人民元をより市場メカニズムに基づいた値動きにしていく政策の一環とみなされていたが、実は8月以降、人民銀行が元下支えのために4050億ドルも費やしてたというのが国際金融協会(IIF)の見積もりだ。外貨準備は12月だけで1100億ドル減少している。今年1月はもっと急激に減少したかもしれない。国営メディアはジョージ・ソロス氏のような国際的な投資家に対して、緊張を高めるだけの役割しか持っていないと批判している。 本当のところ、中国の外貨準備をこれまで減らしてきた最大の要素は、企業によるドル建て債の返済だ。国際決済銀行(BIS)によると、昨年9月末時点で期間1年以内の対外借り入れ額は6260億ドルで、14年半ばの8580億ドルから減った。対外融資は7─9月期だけで1190億ドル減少した。 ─それでは中国の外貨建て債務返済が一段落して、外貨準備が安定化するのはいつになるのか。 まだドル建て債務の残高はかなり大きい。短期のローンは最大で5000億ドルに上るかもしれない。そして海外からの投資という別の要素もある。IIFの推定では、昨年の中国に対する外国直接投資(FDI)は2290億ドルで、依然として流出額の1170億ドルを上回っている。もっともFDIが鈍化する一方、中国企業の海外投資は活発化しつつある。中国化工集団(ケムチャイナ)がスイスのシンジェンタを430億ドルで買収する提案をしたのはその一例だ。 HSBCによると、中国では企業と家計の資産に占める海外比率は2%弱と、韓国の14%前後などと比べると非常に低く、資産を分散化させる動きが強まっている。共産党が汚職取り締まりを続けているため、富裕層はより安全な海外に資金を移そうという心理が一層高まっている。 ─外貨準備はどのぐらいで枯渇するのか。 中国の外貨準備高はなお3兆ドル余りと世界最大で、人民銀行が通貨防衛のために毎月1000億ドルを使い続けても、すべてなくなるには3年近くかかる。だが外貨準備における流動性の高い資産の割合ははっきりしていない。いずれにしても当局は取引フローを規制し、通貨の急変動を避けるためのバッファーを必要としている。つまり外貨準備が消え失せる時期はずっと早くなるだろう。 ─海外への資金流出防止に向け当局は何ができるか。 相当多くの手がある。人民銀行は国境を越える資本取引の規制を幾分緩めたとはいえ、まだ多くの規制が残っている。かつては規制の適用も手ぬるかったが、今は変わりつつある。規制当局は沿海地方の銀行に対して、外為取引のチェックを厳しく行うよう命じている。一部外銀はオンショア外為取引を禁止され、香港では投機筋の人民元売りを抑えるために人民元の借り入れ金利が押し上げられた。 為替管理自体を厳格化するのは難しいだろう。例えば当局は、国民が海外に持ち出す外貨上限額を現行の毎年5万ドルから下げようと思えば下げられるが、国民の不安感を助長するだけになる。外国投資家の資金引き揚げを制限すれば、新規投資を遠ざけてしまう。 ─人民元のコントロールは有効か。 最終的には機能しない。当局は海外への資金移転手続きをより面倒にすることで資金流出のスピードを遅くすることは可能でも、あらゆる経路で資金流出を止めようとすれば、貿易に打撃を与えたり、自ら経済の先行きに自信がないと認めることになる。 貿易業者はこれまで輸出入のインボイスを水増しすることで、資本規制をすり抜けてきた。個人もマカオにギャンブルに行くか、国内の口座とリンクしているクレジットカードで海外の製品を買ったり、もっと単純に人民元紙幣を詰め込んだスーツケースを持ち出せば、海外に資金を移動できる。 ─中国当局はほかに何ができるか。 1回で大幅な切り下げを実施すれば、人民元が過大評価されているとの懸念には対処できる。しかしこれは多額の対外債務を抱える中国企業を苦しめ、世界の市場を大混乱に陥らせる。ともかく政策担当者にとって自分たちの信認と人民元の安定が一蓮托生である以上、切り下げは人民元のコントロールをより困難にしてしまいかねない。 代わりの手段は、人民元の緩やかな下落を誘導し、投資家がさらなる下落を予想するのに合わせる形で、外貨準備を使うことだ。資金流出が主に中国企業の外貨建て債務返済と国内から海外への投資増加に起因する限りは、人民元の下げ圧力は許容できる。ただし、国民が自らの手元資金を大量に海外に移し始めると、すべての想定は崩れ去ってしまうだろう。 ●背景となるニュース *SAFEは4日、昨年の外貨準備高の減少額5130億ドルの約3分の1は、通貨と資産の価格変動によって説明できるとの見方を示した。それによると3423億ドルの減少は貿易・投資面の取引が原因だったが、1703億ドルの減少は通貨・資産の価格変動がもたらした。保有外貨のバスケットの価値は、ドル高に伴って低下した。 *SAFEが発表した昨年の経常収支(速報値)は2930億ドルの黒字、資本・金融収支は1610億ドルの赤字だった。 http://jp.reuters.com/article/china-economy-breakingviews-idJPKCN0VH02Z?sp=true
World | 2016年 02月 8日 15:04 JST 関連トピックス: トップニュース イランの欧州向け原油販売、すでに日量30万バレル超す=通信社 [ドバイ 6日 ロイター] - イランのザンギャネ石油相は6日、経済制裁解除に伴い欧州への原油販売はすでに日量30万バレルを超えていると明らかにした。同国石油省が運営するシャナ通信が報じた。 イランの輸出は2011年のピーク時、日量300万バレル以上に達していた。核開発問題をめぐって12年に制裁が強化されたことを受け、同100万バレル強まで減少。昨年に核開発活動の制限で欧米など6カ国と合意し、イラン政府は50万バレルの増産を指示したとしていた。 ザンギャネ石油相は「イラン国営石油会社(NIOC)との契約に基づき、仏トタル(TOTF.PA)は欧州への供給用にわが国から原油を日量16万バレル購入することで合意した」と述べたという。イタリアのENI(ENI.MI)も10万バレルの原油購入に関心を示しているといい、同社の代表団が近くテヘランを訪問する予定となっているようだ。 このほか、イタリアの精製業者サラス(SRS.MI)は6万―7万バレルの購入を示唆している。 http://jp.reuters.com/article/oil-iran-sales-idJPKCN0VH0AX 原油安、米経済への悪影響拡大 多くのエコノミストは原油価格の下落を米経済にプラスと考えていたが、長期的な原油安は経済全般のシステミックな問題だとみる向きが増えてきた(写真はテキサス州のコーパスクリスティ港) ENLARGE 多くのエコノミストは原油価格の下落を米経済にプラスと考えていたが、長期的な原油安は経済全般のシステミックな問題だとみる向きが増えてきた(写真はテキサス州のコーパスクリスティ港) PHOTO: EDDIE SEAL/BLOOMBERG NEWS By NICK TIMIRAOS 2016 年 2 月 8 日 14:21 JST 原油価格が1バレル=30ドル近辺で推移し、ガソリン価格が1ガロン=2ドルを割り込む中、米経済にとって燃料安はプラスに働くどころかむしろ弊害の方が大きくなり、悪影響はいっそう拡大している。 原油価格が下落し始めた2014年以降、石油関連企業のレイオフと投資削減が影響として見込まれてきたが、問題はこの二つにとどまらない。エネルギー関連企業の破綻やデフォルト(債務不履行)への懸念も融資条件の厳格化を招き、経済全般を圧迫している。 米経済にとって原油安はありがた迷惑なのだろうか。原油安をきっかけに米経済がリセッション(景気後退)入りするとみるエコノミストはほとんどいない。だが、原油価格の下落がむしろ需要の低迷や原材料・生産設備、労働力の過剰供給など世界経済全体の脆弱(ぜいじゃく)さを示す兆候だとすれば、原油安の影響を抑えることは一段と困難になるだろう。 原油安はドル相場の上昇を反映しており、ドル高はすでに米輸出の妨げとなっている。また、年初からの株安がこのまま続けば、消費者心理は悪化するかもしれない。 肝心なのは、燃料安がやはり消費者にとってプラス材料だとはいえ、その裏にあるさまざまな要因は当初想定していた以上の弊害をもたらす可能性があるということだ。HSBCのシニアエコノミスト、スティーブン・キング氏はここ1カ月の原油の値下がりについて、「状況がこれから大きく改善する兆しというよりもむしろ、大幅に悪化する危険性があるという兆候だ」と評した。 市場はエネルギー価格の上昇を増税、下落を減税ととらえることが多い。実際、米家計は昨年、ガソリン安で約1400億ドル(約16兆円)を節約し、節約金額は2014年の約2倍だった。 また、カーライル・グループの調査ディレクター、ジェイソン・トーマス氏によると、昨年は燃料価格の下落が個人消費の伸びを約0.5ポイント押し上げた。 だが全般的な景気浮揚効果は予想ほど大きくなかった。債務のほか住宅や医療、大学の費用が増えたため、消費者は大きな買い物を控えているということだろう。 米国野村証券のチーフエコノミスト、ルイス・アレクサンダー氏は、これまでのところ原油関連のマイナス面が「消費者関連のプラス面を全て吹き飛ばしてしまっている」と指摘する。 ただ、リセッション入りを心配する根拠はないと言うエコノミストもいる。雇用者数の増加や家計バランスシートの改善が続いており、住宅市場も安定しているからだ。1970年代以降のリセッションでは常に事前か同時のタイミングで原油価格が上昇した。下落ではない。 【左】コモディティー価格の変動率(黄:トウモロコシ、紫:鉄鋼、赤:銅、青:NYMEX原油)、【右上】レギュラーガソリン価格(インフレ調整後)の下落率、【右下】米経済成長率(薄い青:原油価格が30%超下落する前の時期と下落時、青:下落後) ENLARGE 【左】コモディティー価格の変動率(黄:トウモロコシ、紫:鉄鋼、赤:銅、青:NYMEX原油)、【右上】レギュラーガソリン価格(インフレ調整後)の下落率、【右下】米経済成長率(薄い青:原油価格が30%超下落する前の時期と下落時、青:下落後) とはいえ、なかなか消えない懸念が一つある。大幅な産業減速がデフォルトの増加や融資条件の厳格化につながりかねないことだ。直近のリセッション以来エネルギー関連企業が拡大をけん引してきたハイイールド債(高利回り債)市場は、特に脆弱さを増している。銀行は企業向け融資を拡大する一方で住宅融資などを削減した。 さらに、一部の投資家は新興国発のリスクが過小評価されているとみる。新興国では、原油需要の減退などからデフレ圧力が高まっている。トウモロコシや大豆などの価格はすでに生産コストを下回っており、鉄鋼価格は過去1年で30%下落した。 当初は多くの向きがこれらを一時的要因と考えていたが、世界的な需要の落ち込みに伴い、いつまでも米国の需要だけに頼るわけにはいかなくなってきた。そもそもの問題は、過去5年間にわたり生産設備拡張のために債務を積み上げた新興国で、労働力と資本が供給過剰状態にあることだ。 1月15日に発表された2015年12月の米鉱工業生産指数が前年同月比1.8%低下するなど、経済指標はすでに産業部門のリセッション入りを示唆している。 エコノミストらは製造業と貿易の減速をあまり不安視してこなかった。どちらも経済成長全体に占める割合が比較的小さいため、米経済はかつて同じような落ち込みをやり過ごしてきたからだ。 一方、世界経済の変化を受け、米経済は以前ほど海外から隔離されてはいないとの懸念の声もある。つまり、FRBなどの経済モデルは国内の活動を重視し過ぎており、海外からの影響を十分に考慮してないということだ。 関連記事 原油安【特集】 http://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CI880A_OILEC_16U_20160204155114.jpg 米国債の利回り曲線、景気後退「予測機能」に陰り 5日終盤のダウ平均を表示したニューヨーク証券取引所のモニター ENLARGE 5日終盤のダウ平均を表示したニューヨーク証券取引所のモニター PHOTO: BRENDAN MCDERMID/REUTERS By BEN EISEN 2016 年 2 月 8 日 13:05 JST 米国がリセッション(景気後退)入りする前には毎回警告を発してきた信頼性の高い指標に、投資家はもう頼ることはできないのかもしれない。 米国はこれまでに7回のリセッションを経験したが、その前には必ず長期金利が短期金利を下回り、エコノミストが言うところの「逆イールド」を形成していた。従来、利回り曲線の傾きは景気の先行きを予測する指標として信頼性が高く、ニューヨーク連銀とクリーブランド連銀のエコノミストはこれを利用してリセッションの確率を計算している。 だが、短期債の利回りが極端に低いため、米経済のリセッション入りが近くても利回り曲線は逆イールド化しない可能性がある。 利回り曲線は償還期限の短い債券から長い債券までを順番に並べ、その利回りをグラフにしたもので、通常は右肩上がりとなっている。相対的に高いリスクを取る投資家に報いるため、長期金利は短期金利よりも高くなっているからだ。長期債利回りは、満期までの各時点で予想される短期金利の平均値にこの「期間プレミアム」を加えたものとされる。 米国債の利回り曲線【緑:1カ月前、青:現在】 ENLARGE 米国債の利回り曲線【緑:1カ月前、青:現在】 利回り曲線のスティープ化は、通常は短期金利が今後上昇するとの予想を反映しており、経済成長のシグナルとなる。同曲線が平たん化すれば、市場が金利低下を織り込んでいることがうかがえる。これは一般的に、FRBが低迷する景気を浮揚させるため金融緩和に出ると予想される場合に起きる現象だ。利回り曲線が逆イールド化した場合、市場は短期金利が急低下し、そのまま低い水準にとどまると予想していることになる。これは経済縮小のシグナルだ。 FRBのエコノミストらはリセッションの予測精度が最も高い利回り曲線として、米国債の3カ月物と10年物の利回り差で示される利回り曲線を挙げている。トレードウェブによると、両者の差は現在1.54%となっている。昨年末からおよそ0.5%縮小した水準だが、過去平均よりは高い。ニューヨーク連銀の計算によれば、これは1年以内にリセッション入りする確率が5%を下回るという意味だ。クリーブランド連銀は6.19%と、もう少し高い確率を見込む。 短期金利は既にかなり低いため、利回り曲線が逆イールドを形成するには長期金利がゼロ近傍まで低下する必要がある。そうなる可能性は非常に低いので、こうした逆イールドとリセッションの相関関係は崩れているのかもしれない。 2007年3月1日時点の米国債の実質利回り曲線 ENLARGE 2007年3月1日時点の米国債の実質利回り曲線 利回り曲線が順イールドを維持している唯一の要因として、(長期金利より)短期金利への押し下げ効果が大きい場合が多い中銀の大規模緩和策を挙げる投資家やアナリストもいる。 モーガン・クリーク・キャピタル・マネジメントのマーク・ユスコ最高経営責任者(CEO)は先週、短期金利を押し下げるこうした強力な圧力がなければ、利回り曲線はとっくに逆イールド化しているとの見方を示した。 バンガードのシニアポートフォリオマネジャー、ジェンマ・ライトカスパリウス氏は、利回り曲線はこれまでリセッションを予測する指標として機能していたが、今は他の要因に目を向けていると話した。 別の見方もある。ロイヤルバンク・オブ・カナダやUBSグループなどは、市場に混乱が広がった影響で新たなリセッションへの懸念が利回り曲線に反映されなくなったと指摘している。 超低金利下にある日本の経験が良い教訓となりそうだ。過去4回のリセッション期では、どの期間中も利回り曲線は逆イールド化しなかった。ドイツ銀行のアナリストらは、このことから短期金利が1%を割れば利回り曲線は逆イールド化しないことが分かると指摘している。 だが仮に利回り曲線がリセッション前に逆イールド化しないとしても、長期金利と短期金利の差が経済状況を予測する上で役立つことに変わりはない。ドイツ銀行のチーフ米国エコノミスト、ジョゼフ・ラボーニャ氏によると、例えば米国の利回り曲線は平たん化しているが、これは最近のリセッションに陥る前の日本の利回り曲線と似ている。 同氏は「個人的には、利回り曲線が経済成長は上向かないという明白なシグナルを発しているとみている」 関連記事 1月の米雇用統計、気になる製造業低迷 年初の株安、米国債買い戦略を後押し ? http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MM095_flatte_G_20160205161007.jpg http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MM094_invers_G_20160205160810.jpg Business | 2016年 02月 8日 15:35 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 街角景気1月は前月比‐2.1ポイント悪化、株安と中国減速が直撃 [東京 8日 ロイター] - 内閣府が8日に発表した1月の景気ウォッチャー調査では、景気の現状判断DIが前月比2.1ポイント低下の46.6となり、2カ月ぶりの低下となった。横ばいを示す50の水準は6カ月連続で下回った。企業、雇用、家計関連のいずれも低下した。 年初来の株安や中国経済の減速の影響が色濃い。先行きは上昇したが、観光シーズンに向けたインバウンド期待などが中心で、季節調整値では悪化している。 全国のウォッチャーからは「年明けからの株価低迷が客の消費意欲を減退させている」(南関東・通信会社)、「中国経済の影響で輸出が伸び悩み、思ったほどの荷動きが期待できない」(北陸・運送業)といった声が目立つ。 個人消費については、12月までの暖冬から転じて挽回した小売店もあるが、中には「(1月)中旬に入ると寒さが増して人出が激減した。今年はバーゲンの盛り上がりがなく、その分の売り上げを取り返すのは難しそうだ」(北陸・商店街)といった状況もある。株価下落も加わり「売上単価が低下している。景気が悪いせいか客も使用金額を低く抑えている」(中国・スナック)など、財布のひもが固くなったことを指摘する声も出ている。 企業関連では中国経済減速の影響が広がってきた。「中国の株式市場も下落し、鉄くずの相場価格も原油下落によりさらに下降中である。今後の見通しが全く見えない状況」(九州・産業廃棄物処理業)といった企業もある。自動車関連でも「新型ハイブリッド車の部品は好調だが、それ以外の輸出向け製品などの動きはあまり良くない」(東海・輸送用機器製造業)など、海外経済の影響が表れている。 2─3カ月先を見る先行き判断DIは49.5で、前月比1.3ポイント上昇。50の水準を6カ月連続で下回った。「新年度を迎え、取扱量の増加が予測される」(南関東・輸送業)、「年間を通じて3月が最も繁忙となる」(東海・人材派遣会社)など、季節的な要因も目立つ。また「引き続きインバウンド、特選ブランドや宝飾品が売り上げをけん引すると考えている」(百貨店)との期待感も強い。季節調整値で見れば、前月比1.7ポイント悪化しており、12月より低下幅が拡大した。 *内容を追加します。 (中川泉 編集:橋本俊樹) http://jp.reuters.com/article/economy-watcher-jan-idJPKCN0VH09T 新興諸国の中銀、利下げから資金供給に方針転換
By ANJANI TRIVEDI 2016 年 2 月 8 日 15:18 JST 【香港】一部の新興国では、中央銀行が自国の金融システムに大量の現金を注入する取り組みを強化している。この動きは、各国が直面する急激な資本流出の圧力を浮き彫りにしている。 新興諸国は2015年に利下げを繰り返し、各国の通貨は過去1年間で米ドルに対して20%?30%下落した。ここにきて新興国全体がこの方針を転換している。 例えばインド準備銀行(中央銀行)は昨年、政策金利を合計1.25%引き下げたが、2月2日の政策会合では6.75%に据え置いた。その代わりに国債買い入れとレポオペを通じた銀行への短期資金供給で、去年のどの時点よりも大量な資金を金融システムに注入している。 準備銀行のラジャン総裁は、流動性不足が認められれば、それに対して「流動性(供給)手段を全て用いて」同国の金融システムに「潤沢な」現金を注入し続けると言明した。 新興諸国経済を資本流出が圧迫する中、銀行間金利は上昇し資金逼迫(ひっぱく)を示している。-新興国の資本動向(左)、マネーサプライの伸び(中)、3カ月物銀行間金利(右) ENLARGE 新興諸国経済を資本流出が圧迫する中、銀行間金利は上昇し資金逼迫(ひっぱく)を示している。-新興国の資本動向(左)、マネーサプライの伸び(中)、3カ月物銀行間金利(右) 新興諸国の中銀は次第に、利下げなどの本流の政策手段を避けるようになってきた。利下げは、経済成長の見通しに対する懸念を深めている証拠と受け止められかねず、そうなると資本流出と通貨安がさらに進むきっかけになる。 ドイツ銀行のアジア・マクロ戦略担当責任者、サメール・ゲール氏は「中銀は、成長を支えるために金融環境を緩和的に維持しつつ、通貨に(下落)圧力がかからないようにする綱渡りをしている」と指摘した。 各国中銀に加わる圧力は緩まない公算が大きい。国際金融協会(IIF)の推計によると、過去2年間に新興諸国から正味で8460億ドル超の資金流出があり、今年はさらに4500億ドルが流出する可能性がある。10年から14年にかけて、新興国には毎年平均1兆2000億ドル相当の外国民間資本が流入した。昨年は1988年以来初めて、新興国全体で資金が出超になった。資源輸出への依存度が高い国を中心に多くの新興国で、輸出からの歳入も落ち込んだ。一方、金融システムでは預金の伸びが衰えた。 研究機関オックスフォード・エコノミクスによると、金融システム内の流動性の目安となる広義のマネーサプライ(通貨供給量)の伸びは、過去1年間でアジアは3.8%、中南米では3.4%低下した。 流動性の低下に伴い、一部の国々では銀行間金利が上昇している。銀行間金利の上昇は個人や企業の資金調達コストを押し上げるかたちで波及する可能性があるので、すでにぐらついている各国経済の健全性を脅かしかねない。 国内企業の債務が増え、金融システムを圧迫し始めている。特にアジアの新興諸国では、非金融機関の債務が国内総生産(GDP)比で11年の100%から125%まで急増した。アジアでは、経済成長の落ち込みと資源価格の下落に見舞われた企業で債務水準が上昇し、過去5年間に債務返済力が弱まっている。こうした状況のために、銀行間金利は一段と高くなっている。 マレーシアでは、3カ月物銀行間金利がここ1年余りで過去最高水準に跳ね上がった。アナリストらは、大量の資金流出と弱い銀行預金の伸びが、国内金融市場から現金を吸い上げていると指摘した。 それでも、マレーシアリンギは過去2年間で米ドルに対して20%以上も下落し、同国中銀にとってはさらなる自国通貨安の危険性を犯さずに追加利下げするのは困難になっている。バンク・ネガラ・マレーシア(中央銀行)は昨年の大半を、外貨準備を取り崩して通貨安を防衛することに費やした。 同中銀は2月初め、融資により多くの資金が振り向けられるよう準備預金率を4.0%から3.5%に引き下げた。過去においてこの手段を用いたのは、世界金融危機の際の09年初めや90年代終盤のアジア金融危機など世界的な圧力が高まったときだけだった。 中国人民銀行(中央銀行)も同国経済や通貨に対して投資家をこれ以上不安にさせずに、金融市場の圧力を低下させようと試みている。人民銀行は1月、およそ3年間で最大の資金供給を行った。ウォール・ストリート・ジャーナルは先週、人民銀行は従来の信用緩和策を用いないことを最近決めたと伝えた。預金準備率の引き下げは緩和策のシグナルとして強すぎることを警戒したためだ。その代わりに人民銀行は、短期および中期の銀行向け貸し出しを用い、過去2週間で約1兆8000億人民元を注入した。 ハンガリー国立銀行(中央銀行)のナジ副総裁は先月下旬、すでに過去最低水準にある政策金利をあと数カ月は1.35%に維持する公算が大きいと語った。同副総裁は、市中銀行との翌日物資金の預貸金利の調整を含む他の政策手段を微調整する可能性が高いと述べた。 JPモルガン・チェースのグローバル経済調査責任者、デビッド・ヘンスレー氏は「正常時には、中央銀行が預金準備率を引き下げ公開市場操作を行えば、これを緩和と受け止めるものだ。だがいまのようなストレスがかかっている場合、(そのような措置は)単に現状維持に努める姿勢にすぎない」と指摘した。 関連記事 中国の外貨準備高が急減、元安容認への転換あるか 中国人民銀、為替政策と流動性管理の板挟み 中国人民銀、約3年ぶりの大規模資金供給 http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AF738_EMLIQU_16U_20160205043015.jpg Business | 2016年 02月 8日 14:51 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス アングル:金利引き下げでも動かぬ預金者、証券投資へハードル高く [東京 8日 ロイター] - 日銀のマイナス金利導入は、銀行の預金金利の引き下げに波及し、銀行にお金を預けるメリットはさらに薄れることになった。しかし、超低金利にさらされ続けた日本人は、預金金利の低下を静観。 高い運用益を求めてすぐさまキャッシュを証券投資にシフトさせる動きは見えず、貯蓄から投資に弾みがつくには時間がかかりそうだ。 日銀のマイナス金利導入を受け、メガバンク3行は8日から一部の定期預金金利を引き下げた。例えば、みずほ銀行は2年の大口定期を0.01%幅引き下げて0.03%とし、1000万円を下回るスーパー定期と同じ金利にした。 しかし、預金者は動く様子をみせない。都内在住でりそな銀行に口座を持つ西村耕三さん(70)は、低金利があまりにも長引いているため「麻痺してしまっている。0.01%(になる)と言われてもぴんとこない」と話し、ひとまず静観する構え。 鞄店を営む相野谷理子さん(71)も「(金利)下げていますね。もう本当にバカみたい。何十何円(しかつかない)ですよ」とコメント。ただ、「投資と言っても、株がどう動くか分からない。心配ねと、主人と朝ごはんを食べながら話していたんですよ」という。 <890兆円のお金、腰重く> 政府はアベノミクスの一環として、日本人の約890兆円の現預金を、産業の血液となる株式市場へと誘導する「貯蓄から投資」を後押ししたい考え。 株式市場では、不動産関連の銘柄が買われたり、配当利回りのいい株式への買いは目立つものの、貯蓄から投資を裏付ける大きな潮流にはなっていない。 大和総研(ロンドン)のシニアエコノミスト、菅野泰夫氏は、2014年6月にすでにマイナス金利が導入されたユーロ圏の例を挙げ、個人の金融資産に占める有価証券の比率が2014年第3四半期の29.8%から、2015年第3四半期に29.3%になったのを踏まえ「ほとんど変わっていない」と指摘する。 一部では住宅ローンの残高が大幅に増えたものの、むしろ有価証券の運用残高は減っており「リスクオンの傾向はみられない」という。 S&Pダイレクタ―、吉澤亮二氏は「短期、中期的には家計のリスク選好は変わらない可能性が高い」とみている。 これまでアベノミクスでは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など公的な年金運用を低リスク志向からリスク性資産の運用を増やすように後押ししてきた。 個人のお金についても、非課税枠のある投資制度(NISA)の限度額を引き上げたり、その対象を4月から未成年者にも広げ、証券投資に導きやすい環境づくりを進めている。 しかし、そうした成果が浸透するには時間がかかりそうだ。日銀のマイナス金利導入で、個人マネーが預貯金から証券投資に押し出されるのかどうか。その状況によって、政府・日銀が目標にする2%の物価目標の達成時期や景気の回復テンポにも影響が出そうだ。 マネックス証券のチーフ・アナリスト、大槻奈那氏は「むしろこの状況ではタンス預金が増える可能性も高い」と指摘していた。 (浦中大我、舩越みなみ、編集:江本恵美) http://jp.reuters.com/article/minusir-japan-idJPKCN0VH0AM?sp=true 日本株は上昇基調、続落反動で内需、海運中心見直し−売り出にくさも 2016/02/08 14:15 JST
(ブルームバーグ):8日午後の東京株式相場は徐々に上昇基調となっている。直近続落の反動や為替の円安推移から下値で買いが入った上、中国株の休場、米大統領選候補者を決める予備選を控える中、売り圧力も和らいでいる。建設や倉庫、パルプ・紙、サービス、陸運、情報・通信株など内需セクターが高く、海運株も上昇。 一方、2016年3月期業績計画を減額したDOWAホールディングスなど非鉄金属、16年12月期の利益計画が市場予想を下回った旭硝子などガラス・土石製品株は下げ、石油株も安い。原油市況の下落で世界景気に対する懸念が根強いほか、米国の平均時給や失業率が好転し、米利上げ強行への警戒感もある。 午後2時9分現在のTOPIXは前週末比11.23ポイント(0.8%)高の1380.20、日経平均株価は143円58銭(0.9%)高の1万6963円17銭。午前を小安く終えた日経平均は、午後の開始直後に再度下げ幅が100円を上回ったが、その後は持ち直し。朝方は一時267円安まであった。 日本株は前週末まで4日続落、日経平均はこの間に700円近く下げた。きょう午後のドル・円相場は1ドル=117円30銭台、前週末の日本株終値時点は116円86銭だった。 一方、5日のニューヨーク原油先物は2.6%安の1バレル=30.89ドルと続落、週間では8.1%下げた。米労働省が5日に発表した1月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比15万1000人増と前月の26万2000人増からは鈍ったが、平均時給は市場予想を上回る伸びとなり、失業率は4.9%と08年2月以来の低水準、米金融当局が完全雇用と見なす水準となった。 売買代金上位では、決算内容についてSMBC日興証券がポジティブと指摘したディー・エヌ・エーは急伸。ファナックやNTT、KDDI、武田薬品工業、大和ハウス工業、オリエンタルランド、ローソン、三菱自動車、イオン、JPモルガン証券が投資判断を上げたキッコーマンが高い。半面、日立製作所やソニー、日本電産、野村ホールディングス、明治ホールディングス、オリンパスが安く、マッコーリー証券が投資判断を下げた住友金属鉱山は大幅安。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 竹生悠子 ytakeo2@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net 院去信太郎 更新日時: 2016/02/08 14:15 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O278JA6TTDS101.html 昨年の現金給与総額は0.1%増、伸びにブレーキ−厚労省 2016/02/08 14:09 JST
(ブルームバーグ): 2015年の現金給与総額の伸びは前年より鈍化し、実質賃金は4年連続で減少した。企業収益を消費増につなげようというアベノミクスの鍵である賃金の上昇テンポはなお鈍い。 厚生労働省が発表した15年の毎月勤労統計速報によると、月間現金給与の平均は前年比0.1%増の31万3856円となり、14年の同0.4%増から伸びが低下した。現金給与総額指数を消費者物価指数で割った実質賃金は同0.9%減となり、前年の2.8%減よりマイナス幅は縮小したもののなお水面下だ。 安倍晋三首相は、アベノミクスによる企業収益の果実を設備投資や賃上げに振り向けて、経済の好循環を実現するよう繰り返し経団連などに要請している。黒田東彦日銀総裁は1月15日の衆院予算委員会で、企業収益や労働需給からすると賃金上昇はやや鈍いとの認識を示した。 日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは「これだけ人手不足で労働市場がひっ迫している割には、極めて賃金の上昇テンポが弱いと言えると思う」と指摘。日銀のマイナス金利導入には賃上げを後押しする狙いがあるとしながらも、株式市場の反応などをみていると「どの程度効果があるかは少し見ないと分からない状況だと思う」と述べた。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野原良明 ynohara1@bloomberg.net;東京 ジェームズ・メーガ jmayger@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net 谷合謙三, 浅井秀樹 更新日時: 2016/02/08 14:09 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O27PL16JTSE901.html 日本の企業利益、アベノミクスで最大ピンチ−初の予想下振れ勝る (1) 2016/02/08 13:04 JST (ブルームバーグ):中国経済の減速や商品市況下落の影響などから、日本の企業業績の落ち込みが急だ。四半期ベースでみると、およそ3年前に安倍政権が再始動して以来、初めて事前予想を下振れる企業の割合が上振れる企業に勝る見通し。グローバル投資家から得ていたファンダメンタルズに対する信頼感が揺らげば、日本株の先高観に黄信号がともる。 ブルームバーグ・データによれば、1月1日から2月5日までに四半期決算を発表した東証1部企業のうち、純利益がアナリスト予想に比べ下振れた企業の割合は52%、上振れた割合は48%となった。下振れ企業が多くなるのは、アベノミクス相場が本格始動する直前の12年10−12月発表時(下振れ57%、上振れ43%)以来だ。下振れ企業数のウエートが高い業種は石油・ガス、公益、素材、消費財。金額ベースで下振れ率が高かったのは資本財、素材、公益だった。 みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資分析部の米澤忍シニアクオンツアナリストは、「企業業績は増益のモメンタムが低下し、踊り場に入っている」とみる。経常利益ベースで上方修正と下方修正のすう勢を示すリビジョン・インデックスは、1月末時点でマイナス8.2%と13年1月のマイナス9.9%以来の悪さになっている、と同氏は指摘。「資源安の影響を受けている鉄鋼や石油・石炭製品、卸売などが厳しい。小売は業績が良い企業で、そこまで良くないという点がマイナスになっている」と分析した。 会社発表をみずほリサーチがまとめた(金融除く東証1部3月本決算企業、発表率56%)ところ、15年10−12月期純利益は4日時点で前年同期比10%減と12年7−9月期(30%減)以来の減益率になる。16年3月期通期計画から第3四半期までを差し引くと、1−3月期は21%減とさらに落ち込む見通しだ。 12年7−9月期は欧州債務問題の再燃や中国景気への懸念が高まり、世界経済の減速から輸出が弱含んだ時期に当たる。為替市場ではドル・円相場が1ドル=70円台の超円高水準にあり、輸出企業の採算は厳しく、TOPIXは同年6月にバブル経済崩壊後の最安値を付けた。 日経平均EPSが低下中、妥当感も 企業収益の下降トレンドは日経平均株価の予想1株利益(EPS)の動きでも確認でき、5日時点で1144円と昨年11月30日時点の直近ピーク1275円から1割減った。これに基づく予想株価収益率(PER)は14.7倍と、過去3年のレンジ13−16倍の中央に位置する。年始来の株価急落後も業績の悪化でPERは下がり切れず、フェアバリュー感が漂う。 楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリストは、「中国不安や原油安が世界景気に波及し、今の収益環境が続くと企業は利益を稼げない」と言う。日本株のPERは過去の推移から15倍が妥当水準で、企業業績への悲観が強まれば14倍、楽観になれば16倍に近づく傾向があるとも話した。4日時点で日経平均のPER15倍は1万7385円、14倍は1万6226円、16倍は1万8544円。 土信田氏は、「金融政策が次第に効果を発揮しなくなっている。業績に今後暗雲が立ち込めると、賃上げに影響する」と警戒感を示す。この数年間、世界的に金融緩和策を積極採用してきたが、世界経済は期待されたほど伸び切れず、「株価だけ先行して上がっていった部分を修正し始めている可能性がある」ともみている。 日本銀行は1月29日、金融機関が保有する日銀当座預金に0.1%のマイナス金利を適用することを決めた。直後にドル・円は1ドル=118円台から121円台へ円安の動きが鮮明化したが、供給管理協会(ISM)の製造業景況指数の下振れなど米国景気に対する不透明感が強まり、日銀決定前の水準に逆戻りした。東京証券取引所によると、海外投資家は1月4週まで4週連続で日本株を売り越している。 三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、「日銀がいくら頑張って緩和しても、国際協調がないと円安には効かない」と指摘。企業業績については、「外需でもうけていく部分は剥落してきた。内需がなかなか盛り上がらないのが問題だ」と話す。ただし、減益傾向に歯止めがかかる方向性が見えれば、「資金がまた日本株に入ってくるだろう」と予想した。 8日の日本株市場では、米国の雇用が伸び悩む中で利上げが継続するとの懸念や国内企業業績への不透明感が強まり、TOPIXは一時前週末比1.7%安の1345.91と1月22日以来、約2週間ぶりの日中安値を付けた。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O20P206K50XX01.html
債券は下げ幅拡大、日銀オペ見送りや明日の30年入札に警戒感 2016/02/08 13:30 JST (ブルームバーグ):債券相場は反落。日本銀行が今日の金融調節で長期国債買い入れオペを見送ったことや、明日の30年国債入札に対する警戒感を背景に売りが優勢となっている。 8日の長期国債先物市場で中心限月3月物は、午後の取引開始後に水準を切り下げ、前週末比23銭安の151円17銭まで下落。午前安値の151円24銭を下回った。午前は16銭高の151円56銭で開始し、いったん151円60銭を付けた後、下落に転じた。 みずほ証券の丹治倫敦シニア債券ストラテジストは、「債券相場は、明日の30年債入札への警戒感があって重たい展開。日銀の国債買い入れオペ見送りも調整の材料になっているかもしれない」と話した。 現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の341回債利回りは、日本相互証券が公表した前週末午後3時時点の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)低い0.02%で開始。5日に付けた過去最低に並んだが、その後は徐々に上昇。0.045%まで水準を切り上げている。 新発20年物の155回債利回りは横ばいの0.76%で開始後、いったん0.75%まで下げたが、午後は0.76%に戻している。新発30年物の49回債利回りは横ばいの1.07%で開始後、1.08%まで上昇。その後は買いが入り1.065%に下げたが、再び1.07%を付けている。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは、「超長期のイールドカーブがスティープ化しており、30年債入札に向けて警戒感が出てきている」と指摘。「先週末は10年債がゼロ%に迫ったが、マイナス金利政策がイールドカーブ全体にどういう影響を与え、フェアバリューがどうなるか探り始めたばかり。投資家は金利があるうちに買いたい気持ちがある一方、期末を控えて無理もできない」と話した。 30年債入札 9日には30年国債入札が予定されている。前回入札された49回債のリオープン発行となり、表面利率は1.4%に据え置かれる見込み。発行予定額は前回債と同額の8000億円程度となる。 日銀は今日午前の金融調節で、今月4回目となる長期国債の買い入れオペ実施を見送った。SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジストは、「従来のパターンでいえば、今日は見送られる」と予想していた。 5日の米国債相場は横ばい圏。米10年債利回りは1.84%程度で引けた。1月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比15万1000人増と、市場予想中央値の19万人増を下回ったが、平均時給は前月比0.5%増と予想の0.3%を上回った。平均時給は前月2.7%増と2009年半ば以来の大幅な伸びを示していた。一方、米国株相場は下落。S&P500種株価指数は1.9%安で引けた。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O22IS06S972F01.html
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