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サウジの実情から浮かび上がる原油価格底打ちの兆候
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160203-00103339-shikiho-nb
会社四季報オンライン 2016/2/3 15:16 岡田 晃
原油価格に下げ止まりの兆しが見えてきました。米ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1月20日に1バレル=26ドル台の安値をつけた後は上昇が続いています。これは、産油国の間に減産を探る動きが出てきたことが一因です。
報道によれば、サウジアラビアが水面下でロシアに5%の減産を提案したとみられ、石油輸出国機構(OPEC)とロシアが減産協議の会合を開く可能性があるそうです。OPEC内部では減産協議のために臨時総会開催の要望も出ています。
はたしてOPECが減産に踏み切るのでしょうか。実はOPECの盟主・サウジアラビアの経済データからは、いつ減産に転換してもおかしくないような兆候を読み取ることができます。それは原油安で同国の経済が想像以上に悪化しているという事実です。
サウジがいかに石油で成り立っている国であるかをおさらいしましょう。国家財政収入のうち石油部門からの収入が87%(2014年決算)を占めています。また、輸出の83%(同)を石油と石油製品に頼り、GDPのうち42%(同)を石油部門が占めています。まさに石油が国家の生命線であり、それだけ原油安による打撃が大きいことを物語っています。
原油安の影響はすでに国家財政に表れています。サウジの財政は豊富な石油収入のおかげで多額の黒字が当たり前でしたが、原油価格が下がり始めた14年は655億リヤル(約175億ドル)の赤字決算となり、翌15年は3670億リヤル(約979億ドル)と巨額の赤字になったもようです。
15年当初の予算では1450億リヤルの赤字でしたが、想定以上の原油安が続いたため歳入が予算より15%減少した一方、イエメン内戦への軍事介入などで歳出が予算より逆に13%増加し、赤字が大幅に膨らむ結果となりました。
■ サウジの産油量は減少傾向
15年の3670億リヤルという財政赤字額は、同国の名目GDP(国内総生産、15年見込み)の15.5%に達するものです。この比率は、あのギリシャの債務危機の最悪期より大きいものであり、かつてのサウジでは考えられないことでした。ちなみに、日本なら80兆円近い財政赤字に相当する計算です。この比較からみてもサウジの財政赤字の大きさがよくわかると思います。
昨年末に発表した16年予算では、歳入が15年実績見込みよりもさらに15%減少し、財政赤字額は3262億リヤル(約870億ドル)と引き続き高水準です。財政赤字拡大に対応して光熱費など公共料金の値上げや福祉での補助金削減の方針を打ち出し、歳出を大幅に削減する方針ですが、それでもこれだけの赤字予算なのです。
このため、GDP自体も減速しています。国際通貨基金(IMF)が1月に発表した「世界経済見通し改定版」によると、サウジの15年の実質GDPは3.4%増(推定)とまずまずの伸びですが、16年見通しは2.2%増で、前回発表(15年10月)から1.0ポイントの大幅な下方修正になりました。最近ではリーマンショックの影響で大きく落ち込んだ09年の1.8%増が最低の成長率でしたが、16年はそれより低い伸びにとどまる見込みです。
こうした経済の低迷で、外国人労働者を除くサウジアラビア人の失業率も11%台に達しています。これまでは豊富な石油収入を元手に同国政府は手厚い福祉や補助金支給を実施して国民の不満を抑えてきました。しかし今回、補助金削減を打ち出したことで国民の不満が高まっており、国内の政治・社会情勢の不安定化につながるおそれも否定できません。
原油安が長期化すれば、状況はさらに悪化するおそれもあります。つまり、現在のような原油安と経済停滞をこれ以上放置できない状態になってきた、とサウジ政府が判断してもおかしくないのです。
減産への動きが明確になれば、原油市場の基調も転換するでしょう。実はすでに減産の兆候はデータにも表れています。OPECが毎月発表する「石油市場月報」をよく見ると、サウジの原油生産量は15年6月の1039.9万バレル(日量平均)をピークに毎月、わずかながら減少が続いています。
OPEC全体の生産量も15年12月には3128バレル(同)と前月比より21万バレル(同)減少。今回の原油安局面では最大の減少幅となっています。
もっとも、この程度では「減産」とまで言えないでしょう。もちろん各国が減産で合意したわけでもありません。ただ、少なくとも増産競争に歯止めがかかり始めたと見ることはできそうです。一方では、イランが経済制裁解除を受けて増産に動き出しているので、OPEC加盟各国が減産で合意するにはまだいくつかハードルがあるのも事実です。
少なくとも言えるのは、下落一本やりだった原油市場に変化が起き始めた可能性が高いということです。いずれにしてもサウジの動きがカギになるでしょう。同国の経済データと政府の動向をこれまで以上に注意深くウォッチする必要がありそうです。
※岡田 晃
おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、コメンテーターも担当。現在は大阪経済大学客員教授。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
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