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見通しが甘すぎるシャープ「国有化」計画〜また税金をドブに捨てるのか 大義も勝算もない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47715
2016年02月02日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■大義も勝算も乏しい”国営化”
報道によると、政府が9割以上を出資する官民ファンド「産業革新機構」は先週末(1月29日)、3000億円あまりを投じ、破綻の危機に瀕している電機大手シャープの過半数の株式を取得する“国有化”計画を固めたという。
この計画のポイントは、「貸し手責任」として、主力取引銀行のみずほ、東京三菱UFJ両行に3500億円規模の金融支援を促している点にある。
シャープには、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が主力2行からの債権買い取り資金(約2250億円)を含む約6600億円規模での買収を提案しているが、機構側は「貸し手責任」を明確にすることでホンハイ案に劣らない再建資金を確保できるとしている。
当のシャープは、2月4日の決算取締役会でこの計画の受け入れを決める。そして、主力2行との協議に入り、2月中にも合意に漕ぎ着けたい考えという。
だが、どう体裁を繕おうと、機構の計画の本質が政府による大企業の救済である点に変わりはない。しかも、成長支援の名目で確保した資金を救済に流用するものだ。
シャープは、技術力、商品企画力、価格競争力のいずれでも海外のライバル企業の後塵を拝し、市場から退場勧告を受けた企業だ。再生は容易でない。大義も勝算も乏しい“国営化”が、果たして世論の支持を得られるのだろうか。
■過去には失敗例ばかりが目立つ
今回の救済計画では、けじめとして高橋興三社長らシャープの経営陣に退陣を迫るとともに、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行の2行に対して、新たに3500億円規模の金融支援を要請する。そして、機構が3000億円あまりを投入して、シャープ本体の事実上の国有化に踏み切る内容になっている。
その後、赤字垂れ流しの元凶である液晶事業を切り離し、産業革新機構の傘下にあるジャパンディスプレイ(JDI)と統合する計画だ。
シャープ本体に残る冷蔵庫や洗濯機といった家電などの部門は、東芝の一部と合併して、過当競争の国内メーカーの集約を進めていくという。
産業革新機構とは別に、鴻海精密工業はかねてシャープに買収を提案していた。ここへ来て、その提示額を約6600億円に引き上げたとの報道もある。が、その使途は、銀行への債務返済が中心だ。結果として、シャープの再生に不可欠な合理化や研究開発に充当できる資金は乏しいとされる。
このため、政府は筆者の取材に「再建に充当できる資金は、『貸し手責任』をきっちり付けさせる機構案の方が大きい」(経済産業省幹部)と、機構案の方がシャープ再建に役立つと強調する。
また、「有機ELなどシャープには先進的な技術がまだあり、そうした技術の海外への流出を防げる」(同)という。
だが、国有化もしくは国策救済がシャープ再建に繋がると考えるのは早計だろう。同社の歴史を振り返ると、補助金や税制優遇が収益の回復や成長に繋がらなかった失敗例が目立つからだ。
■成長の起爆剤がない
最初の失敗は、2002年の三重県と亀山市による工場誘致だ。両自治体の補助金は合計で135億円に達した。その内訳は三重県が90億円、亀山市は45億円。2年後にシャープ亀山工場が完成し、一時はそこで製造した液晶テレビを「世界の亀山ブランド」と宣伝するテレビコマーシャルが放送されて、誘致は成功したかに見えた。
しかし、稼働から6年経たない2009年、同工場は操業を停止。生産ラインの一部は中国企業に売却され、米アップルの下請け工場と化した。県は6億4000円しか補助金を回収できず、市に至っては回収ゼロで、地元で大きな批判を浴びた。
次が、政府が2009年5月から2012年3月まで実施した家電エコポイントだ。この制度は、リーマンショックが起きた2009年3月期に連結ベースで1258億円の最終赤字に転落したシャープの収益を2期連続で黒字化させ、一息つかせるのに一役買った。
しかし、需要を先食いした影響は大きかった。同制度が縮小・廃止された2012年3月期に、シャープは再び3761億円の最終赤字に陥った。さらに、翌2013年3月期には、最終赤字額を5453億円に膨らませた。つまり、家電エコポイントは、シャープの体質改善を先送りさせて事態を悪化させたのだ。
さらに、昨年6月。官民ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズが、主力2行とともにシャープの優先株を引き受ける金融支援に応じ、250億円を拠出(主力2行は各1000億円を拠出)した。ところが、シャープは経営危機を脱することができず、支援はカネをドブに捨てる結果になった。
シャープは昨年9月時点で、長、短借入金と社債の合計で7400億円弱の負債があり、これが再建の大きな足枷となっている。仮に、今回の資金支援で負債が大幅に減れば、財務面での重荷が一時的に軽減される可能性はある。
しかし、製品化ですでに韓国勢に大きな後れを取っている有機EL液晶分野が、今後シャープの成長の起爆剤になるとは考えにくい。
■国策支援のドロ沼にピリオドを打て
加えて、技術力があっても、製品化を進めるマーケッティング力の不足で米アップルの製造下請け工場化した経緯や、価格競争力で相変わらず台湾、中国、韓国勢に太刀打ちできていない現状をみると、今回の救済策でもシャープが収益力を回復できず、再建が画餅に帰すリスクは小さくない。
もう一つ、取材を続けていて感じるのが、昨年春、シャープ破綻はアベノミクスの失敗例と受け取られかねないと、強引にメーンバンク2行に金融支援に協力させた政府が、「今さら後には引けない」と政策を修正できない問題だ。
市場競争に敗れて市場から退場勧告を受けた企業を国策で救済することは、資本主義の原理・原則をないがしろにする行為だ。シャープはこれまで、政策補助を成功に繋げることができないまま、業績を悪化させてきた。その体質は何も変わっていない。
そろそろ、国策支援の泥沼にピリオドを打つべきだ。あえて打たないなら、政治家や官僚がそれぞれ責任を明確にし、失敗した場合の公的資金の返済にコミットすべきである。
さもないと、公的資金の無駄遣いへの国民の怒りや、中小企業・個人事業者との不公平感が募るばかりだろう。
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