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原発裁判オセロ、電力会社が巻き返し 高裁判断が異例の「判例化」 日本で原発議論が進まない真の理由 反発逃れだけの無計画
http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/756.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 4 月 07 日 13:25:05: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

原発裁判オセロ、電力会社が巻き返し

記者の眼

高裁判断が異例の「判例化」
2017年4月7日(金)
寺岡 篤志
 3月28日、関西電力高浜原子力発電所3、4号機の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定を大阪高裁が取り消した。初めて司法が原発を止めた事案の抗告審とあって注目を集めたが、関電の全面勝利に終わった。再稼働後直ぐに停止していた2基について、再々稼働に向けた手続きが始まる。全国で30件以上が係争中の原発裁判は、高裁判決が2件続けて再稼働容認の姿勢を示したことで大きな潮目の変化を迎えている。

大阪高裁決定は関西電力側の主張に沿った内容となり、高浜原発の再稼働を認めた
 「新電力に移ったお客様にぜひ戻ってきてほしい」

 大阪高裁決定を受けて会見に臨んだ関西電力の岩根茂樹社長は、経営への好影響を「非常に大きい」と表現。公約してきた「再稼働後の値下げ」も着実に実行する姿勢を示した。同社の株価は経営改善への期待で急伸。3月28日の終値と比べ29日の始値は7%上昇した。

 当初、記者はこうした動きを期待が先行し過ぎているとみていた。というのも、以前このコラムで指摘した通り、脱原発弁護団全国連絡会が仮処分の申し立てを立て続けに行う戦略を立てているからだ。より詳しく説明しよう。

 仮処分は、申立人の権利を急ぎ保護する必要があると判断されたときに認められる。三審制による最終判断が下るよりも前に、たとえ一審段階でも処分決定が出た瞬間から効力を発揮する。さらに、行政訴訟ではなく電力会社を相手取った民事事件なので、各住民が申立人として適格と認められるためのハードルは低い。つまり、原発から遠方の住民も申立人に加わりやすい。原告団は、原発から概ね30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)よりも更に外側、250キロ圏の住民まで申立人の対象としている。

 するとどうなるか。1つの原発に対し複数の地裁で申し立てをすることができる。しかも、原告が変われば何度でも「再戦」を挑める。うち1つでも原発再稼働に懐疑的な裁判官が担当となれば、原発は止まる。極端に言えば、1勝を上げるまで諦めなければ、何敗しようとも住民側は目的を達成できる可能性がある。

最高裁はオセロの四隅

 こうしてじわじわと全国の地裁から原発再稼働を止める決定を少しずつ勝ち取った上で最高裁へと乗り込む。弁護団はこんな青写真を描いている。そのため、弁護団は今回の大阪高裁決定、そして昨年4月に川内原発1、2号機の再稼働を認めた福岡高裁宮崎支部の決定についても、最高裁に抗告しなかった。

 最高裁での判断は、原発再稼働が白か黒か、裁判官の判断がまだ移ろう中で、オセロの四隅が決まることに等しい。もしも最高裁で原発再稼働を認める決定が出れば、地裁の裁判官もその判例に倣って「白」と判断するようになり、弁護団は1勝を挙げることすら困難になる。裁判官の寄る辺となる最高裁の判例を与えないことで、趨勢を決しないまま小さな1勝を積み上げていくという狙いだ。

 この戦略にこれまで電力会社は翻弄されてきた。現在、原発を巡る仮処分事案や訴訟は、大阪高裁の案件以外にも全国で30件以上が係争中。全国の原発の1.5倍以上の数だ。高浜原発でも、改めて弁護団は別の申し立てに向けて住民を募る考えだ。

 以上の弁護団の戦略を踏まえ、「また高浜原発が司法にストップをかけられる事態になるかもしれない」。これが関電の株価上昇を記者が冷ややかに眺めていた理由だ。しかし、恥ずかしながら、この見方はややのんびりとしすぎていたようだ。

 四隅の奪い合いがまだ決していなくても、盤上の情勢は大きく変わりつつあるのだ。

高裁判断を「参照する」

 大阪高裁決定の翌々日、30日に、広島地裁が四国電力伊方原発3号機の再稼働を容認した。その決定内容の一部を引用する。

 新規制基準の審査に合格した原発を巡る仮処分事案で「司法審査の在り方について直接言及した判例は見当たらない」。通常、判例とは最高裁の判断を指す。つまり、まだ四隅は決していないということだ。

 しかし、福岡高等裁判所宮崎支部の再稼働容認決定を「司法審査の在り方について一定の判断を示した、確定した抗告審決定であって、(中略)ほかに同種の事案に係る別の裁判所による確定した抗告審決定は見当たらない」と評価した。そして「本件における司法審査の在り方については、福岡高等裁判所宮崎支部の決定を参照とする」。

 分かり易く言えば「判例として参照できる最高裁決定がないので、川内原発の再稼働を容認した福岡高裁宮崎支部決定を判例として扱いますね」ということだ。高浜原発訴訟の住民側弁護団長で元裁判官の井戸謙一弁護士は「前代未聞。重大な事案ではあり得ない恣意的な判断だ」と憤る。

 大阪高裁と福岡高裁宮崎支部が住民側の主張をことごとく退けた考え方の枠組みは、1992年の伊方原発を巡る最高裁判決に沿っていると言える。高度な専門性が絡む原発の問題について、不合理な点が確認できなければ行政の裁量性を広く認める内容の判決だ。これが福島第1原子力発電所の事故前までに原発訴訟の四隅を担っていた判例だった。続く広島地裁が福岡高裁宮崎支部決定を引用したことで、1992年の判決は隠然たる影響力をもつ流れができてきたとも言える。

未だ見えない損害の全体像

 しかし、それで本当によいのだろうか。新規制基準とその審査の不合理性は無く、審査に合格した原発の事故発生確率が極限まで小さくなったのだとしても、関電自身も認めているとおりリスクがゼロになることはありえない。ならば、事故発生時の損害の大きさはどうなのか。発生確率が極小でも、損害が極大なら意味が無い。日本社会が大きな原発事故を経験したことがなかった時代に示された「1992年の判決」が、福島第1原子力発電所の事故後に、そのまま前例として踏まえられていくことには違和感を禁じえない。

 昨年、経済産業省が示した福島第1原子力発電所の事故処理費用21・5兆円は、損害規模算出の1つの指針になるのかもしれないが、高レベル放射性廃棄物の処理方法がまだ未確定など、不合理だらけの試算といえる。結論を急いでよい問題ではないはずだ。今後もまだまだ続く原発訴訟の中で、現実と向き合った議論が少しでも深まってほしい。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/040600440/


 


 
日本で原発議論が進まない真の理由

地元の反発から逃れるためだけの無計画さ

田原総一朗の政財界「ここだけの話」

2017年4月7日(金)
田原 総一朗
 福島第一原子力発電所の事故から6年が経った。今、原発はどういう状況なのか。

 先日、東芝が開発したサソリ型ロボットが、福島第一原発の敷地の中でも格納容器内の放射線量が最も高いとされる2号機に投入された。ところが、スロープ上に積もるゴミに足を取られてしまい、結局2時間ほどで立ち往生してしまったという。

 こんな状況の中で、福島第一原発を廃炉にできるのだろうか。


事故から6年が経った福島第一原子力発電所。(代表撮影/ロイター/アフロ)
 問題は、技術的なものだけではない。事故に伴う費用がどこまで膨らむのか、明確には分からないのだ。当初、廃炉・賠償費はおよそ2兆円と見積もられていたが、その後11兆〜12兆円に修正され、今では21.5兆円まで膨らんでしまった。実際は30兆円を超えるのではないかとの話もある。

 今、東京電力はメルトダウンした核燃料などが固まった「燃料デブリ」を取り出そうとしているが、原発反対者のみならず推進者の間からも「無理なのではないか」という声が上がっている。第一、燃料デブリを取り出したとしても、どこに持っていくのか。その場所がない。

地元の反対が強いから、非現実的な計画を打ち出している

 そもそも、なぜ福島第一原発の燃料デブリを取り出して移動させようとしているかといえば、地元の反対が強いからだ。しかし、持っていく場所がない。実のところ、地元の反発を抑えるために、できもしないことを「やれる」という格好を見せているだけのようだ。

 使用済み核燃料の問題も同様だ。今、日本には1万6000トンもの使用済み核燃料がある。そのほとんどが青森県六ケ所村に集まっているが、ここからどうすればいいのか誰も分からない。

 原発反対を主張している小泉純一郎元首相が「反対」と言い出したきっかけは、2013年にフィンランドの核廃棄物の最終処分場「オンカロ」を視察したことだった。固い岩盤の地下400メートル以上の場所にトンネルを掘り、使用済み核燃料を埋めるのだが、これが無害化するまでに10万年もかかるという。この10万年という途方もない数字が、小泉元首相を反原発に向かわせた。

 火山列島の日本には10万年も安定しているような場所はないから、オンカロを建設することはできない。行き場のない使用済み核燃料をどうするのか。

 おそらく、日本が最初に米国から原発を導入したときには、「使用済み核燃料の処理方法については、米国がそのうち技術を開発してくれるだろう」と安易に考えていたはずだ。

 ところが、いまだに米国はその技術を開発していない。砂漠の真ん中に頑丈な鉄容器をつくり、その中に使用済み核燃料を保存しているのだ。

 米国は広い国だから砂漠の真ん中に保存すればいいだろうが、日本はそれができない。最終処理技術も開発されていない。

 そこで日本は、かつて1兆円を超える国費を投じて高速増殖炉「もんじゅ」を独自に開発した。核燃料サイクルを確立して、使用済み核燃料を再利用するためだ。しかし、問題が多発して、結局もんじゅは20数年もの間ほとんど稼働することがないまま、昨年12月に廃炉が決まった。

 ところが今、政府は「もんじゅは廃炉にするが、核燃料サイクルの開発は続ける」と言っている。使用済み核燃料を生かすために、新しい高速炉を建設しようとしているのだ。

 ここにも大きな問題がある。新しい高速炉の開発はいくつかの段階があり、まずは「実験炉」、次に「原型炉」、「実証炉」を経て、ようやく「実用炉」に進む。もんじゅは「原型炉」だ。

 本来ならば、政府は原型炉の徹底検証をしなければならないのに、段階を飛ばして実証炉を開発しようとしている。あまりにも無茶苦茶な話だ。

地元の反発を抑えるための無意味な計画

 民主党政権時代の2012年9月14日、野田佳彦首相(当時)は「2030年代末までに原発をゼロにする。使用済み核燃料の再処理もやめる。青森県の大間原発の開発計画も抜本的に見直す」と表明し、9月19日に閣議決定しようとした。しかし、それは実現できなかった。

 なぜかと言えば、青森県が猛反発して、「もし使用済み核燃料の再処理をしないのであれば、六ケ所村で預かっているものをすべて各地の原発に返す」と言ったからだ。

 もんじゅは停止しているから、核燃料を再利用することはできない。でも、本当に原発に返されたら困る。だから野田首相は、ほとんど意味を成さない使用済み核燃料の再処理を認めてしまった。さらには、青森県の怒りをなだめるために、大間原発まで認めてしまったのだった。

 僕は、新しい高速炉開発についても、同じことを繰り返しているだけのではないかと思う。もんじゅを廃炉にすれば、六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理は必要なくなってしまう。そうなれば六ヶ所村は使用済み核燃料を返すと言うだろう。それを回避するために、政府は無理矢理にでも「核燃料サイクルを確立する」と言っているのではないか。

 このように、原発の周辺では今、地元の反発を抑えるために、その場しのぎの非現実的な計画を進めるようなことがたくさん起こっているのだ。

「責任者不在」が最大の問題だ

 では、根本的な問題は何なのか。一番大きな問題は、自民党に原発問題の責任者がおらず、原発をどうするのかという具体的な計画が立てられないということだ。

 福島第一原発事故が起こった当時は民主党政権だった。民主党は、論客は多いのだが、原発問題のような「汚れ仕事」を嫌う人も多い。しかし、そこで泥をかぶる覚悟をした男がいた。仙谷由人氏だ。

 仙谷氏は、前原誠司氏、細野豪志氏、枝野幸男氏、古川元久氏らをまとめ、協力体制をつくり上げた。ここまではよかったのだが、仙谷氏が引退すると、みんなバラバラになってしまった。

 当時野党だった自民党も、原発問題については民主党と協力する必要があると考えていた。そこで僕は、自民党の大島理森氏と仙谷氏を会わせ、協議をしてもらった。当時、通産省官僚で後に東電の役員になった嶋田隆氏、安倍首相の秘書官である今井尚哉氏が加わり、みんなで東電処理を行うこととなった。

 その途中で自民党政権が発足し、最終的に原発問題の処理は大島氏がやったのだが、後に衆議院議長になってしまったことで原発問題から離れてしまう。結局、今は原発問題の責任者が不在なのだ。

 その時に僕は、自民党の幹部たちに「原発の責任者を決めろ」と迫ったのだが、みんな嫌がった。こんな状況で、原発をどうするのか。使用済み核燃料をどうするのか。核燃料サイクルをどうするのか。今は誰も決められない。言ってみれば、とても無責任状態なのだ。ここに大きな問題がある。

 僕は、自民党の幹部たちに、「河野太郎氏を原発の責任者に据えればいいのではないか」と言ったことがある。河野氏本人もやる気を見せていた。しかし、幹部たちは皆、いい顔をしなかった。

責任者不在では、原発問題は一歩も進まない

 はっきり分かっていることは、日本で原発の新設は無理だということだ。どこに建設しようとしても、地元の強い反発は避けられない。今、原発は40年で廃炉にするという原則が定められているが、仮に60年に延ばしたとしても、あと30〜40年ですべてなくなってしまう。

 そこで、日本のエネルギー計画はどうするのか。責任者不在の日本では、その点も全く議論できていない。

 原発をなくすのならば、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを普及させればいいという意見もある。しかし、実際にどれくらいのコストがかかり、どれくらいの電力を生み出せるかなどといった具体的な見積もりすらできていない。

 これが、今の実態だ。

 政府はどうするべきか。自民党は最初に、「原発の新設はしない」と決めてしまうことが必要だと思う。そうすれば、再稼働についても国民の反応が変わってくるだろう。国民は、先がどうなるか分からないから、強く反発しているのだ。

 同時に、責任者を決める必要がある。先にも述べたが、僕は河野氏を推している。

 自民党議員たちのほとんどが、原発を推進すべきか反対すべきか、明確にしていない。実のところ、安倍首相自身もよく分かっていないのではないかと思う。

 まず、政府は責任者を決めることだ。その上で方向性を定め、早急に原発問題、エネルギー計画を一歩でも前に進めるべきだ。


このコラムについて

田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/040500015  

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コメント
 
1. 2017年4月07日 16:16:52 : H2gUjkq7xI : kFjtT9Dqauo[7]
仙谷由人は原子力村の住民、今は東京電力の顧問弁護士、今や原子力村のイヌ。

それを持ち上げるとはさすがは日経新聞の日経ビジネス、内容も一見まともそうに書いているが原発を廃止すべきとは言っていない。


2. 戦争とはこういう物[1926] kO2RiILGgs2CsYKkgqKCpJWo 2017年4月09日 19:48:46 : 9PG0M0b68Q : jKnbezZWN40[569]
 裁判結果が論理的整合性に無関係にひっくり返されるのが国家行政訴訟。
「オセロ」とは言い得て妙だと被虐的に感心してしまう。
裁判を解り易く市民のモノにする、と称して死刑に繋がる刑事訴訟のみ導入されたのが、裁判員制度。
行政訴訟こそ、解り易く市民のものにするべく「裁判員」で判断させ、高裁以後も尊重するべきもの。
そうで無いなら裁判員制度の意味とは何か。

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