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東電福島第一原発 極めて「危険な状態」。原子炉圧力容器の毀損で漏洩した核燃料が、格納容器の仕切りだけで守られている状態に(各紙)
http://rief-jp.org/ct4/67678?ctid=76
2017-02-11 01:39:42 一般社団法人環境金融研究機構
東京電力福島第一原発2号機の原子炉格納容器内を精査したロボット撮影によると、内部の空間放射線量は推定毎時650シーベルトを記録。前回調査の同530シーベルトを上回った。原子炉圧力容器から核燃料が漏えいしている可能性が濃厚になった。格納容器は圧力容器より数段、脆弱で、今後強い地震等が発生すると、漏洩した燃料デブリから外部に大量の放射能が漏えいする可能性もある。
福島第一原発の圧力容器が破損している可能性は以前から専門家の間で指摘されていた。今回判明した数値通りだとすると、2号機の格納容器内の放射線量は原子炉内の濃度と変わらないことになる。2011年3月11日の事故発生時から、圧力容器の毀損で、漏洩した燃料デブリが、手が付けられない状態で放置されたままになっているといえる。
安倍首相は「福島原発は、アンダーコントロール」と国際公約したが、実態は「アンコントローラブルな危険な状態にある」と言わざるを得ない。
今回のロボット調査で記録された放射線量は、人が数十秒浴びれば即座に死亡するレベル。1月下旬に実施した前回の測定では、530シーベルトを記録、画像の解析によりことから、政府部内では高線量を疑問視する向きもあったという。しかし、今回の調査でもさらに高線量が検出されたことで、東電も「ロボットのカメラは1000シーベルトに耐えられるが2時間で壊れた。500~600シーベルトはおおむね正しいと思う」と認めている。
ICRP(国際放射線防護委員会)の指標では、宇宙線や大地からの「自然放射能」に加えた「追加被曝線量」の公衆限度は年間1ミリシーベルトとしている。毎時換算でおよそ0.11マイクロシーベルト。福島原発事故後に日本政府が避難指示を解除する目安の除染目標にしたのは、年間20ミリシーベルト。長期にわたって居住が制限される「帰還困難区域」の線引きは、年間積算線量が50ミリシーベルト。それらを大きく上回る水準だ。
1999年に茨城県東海村の核燃料加工会社で発生した臨界事故で死亡した作業員の被曝量は、最大で20シーベルトと推定されている。放射線医学総合研究所によれば、毎時6〜7シーベルトが100%致死量という。650シーベルトのレベルは、完全に「死の世界」である。
メルトダウン(炉心溶融)した核燃料が毀損した圧力容器からその底を突き抜け、地下水と接触して再臨界に達している可能性が現実化してきた。また、今回の報告では、圧力容器の下部分に、縦横1mほどの穴が開いていることも判明した。
東電は「この穴は、津波が福島第一原発の冷却システムを破壊した後、溶け落ちた核燃料によってできたものと推測される。ただ、現時点では仮説に過ぎない」としながらも、圧力容器毀損を暗に認めている。
原子炉格納容器の専門家は、「東電が公開したカメラ映像では、原子炉の真下に大きな穴が開いている様子が見えた。核燃料が圧力容器を破って外に漏れ出たことは間違いない。今回、メルトダウンした核燃料が原子炉圧力容器を突き抜けて、外側の格納容器に漏れ落ちるメルトスルー(溶融貫通)が起きていることは裏付けられた」と指摘する。
圧力容器は70気圧にも耐えられるように設計されているという。だが、それが地震の衝撃で毀損し、中の核燃料が漏れ出たわけだ。圧力容器は70気圧に耐えられるよう設計されている。しかし、その外側の格納容器の設定はわずか4気圧。さらに建屋のコンクリート壁の場合は、単なる『覆い』で、超高温のデブリ(溶融燃料)による浸食を防げない。
東日本大震災は、頑丈な原子炉の圧力容器を壊すほどの威力があったことになる。今後、同程度の地震が発生すると、脆弱な格納容器でしか外界と仕切られていない3つの事故原発が再び、毀損するリスクがある。格納容器に地震などの衝撃で、亀裂が入ると、そこから高濃度線量の放射性物質が大気中に漏えいするリスクが続いているわけだ。
また格納容器が壊れなくても、漏洩してしまった燃料デブリが原子炉建屋の床を突き破る「メルトアウト」に至っている可能性も高い。この場合は、デブリが地下水に達していれば、いくら循環冷却しても放射性物質の拡散を防げない。チャイナシンドロームが進行中といえる。
旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では、原子炉爆発で手が付けられず、原子炉全体をコンクリートで固める「石棺化」した。そのコンクリートの劣化によって、昨年11月に原子炉全体を覆う鋼鉄製シェルターを完工、ようやくカバーされた。事故から30年かかった。
福島第一原発も、原子炉再事故・放射線拡散リスクを封じ込めるには、各原発を鋼鉄製のシェルターで覆う工事を早急に実施するべきではないのか。
政府は、核燃料デブリの取り出しを2021年に始め、30〜40年で廃炉を完了させるというスケジュールを立ててきた。しかし、燃料デブリの回収はほぼ原子炉圧力容器と同じ線量の中で作業をせざる得ず、そうした机上のスケジュールの実行は、ほぼ不可能である。事態は予断を許さない状況だ。
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