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原発停止訴訟は3月がヤマ場、司法判断に政権の影響も? 週刊ダイヤモンド2017年2月25日号「弁護士 裁判官 検察官 司法エリートの没落」より
http://diamond.jp/articles/-/118688
2017年2月21日 週刊ダイヤモンド編集部
週刊ダイヤモンド2017年2月25日号の第1特集は「弁護士 裁判官 検察官 司法エリートの没落」。法曹3者がそれぞれ抱える環境変化への苦悩を追った。現在、全国の原子力発電所に対して、運転差し止めの仮処分申請が各地の地方裁判所に申し立てられている。四国電力伊方原発、九州電力玄海原発については、一連の審尋が終了し、3月に判断が示される模様だ。原発訴訟のヤマ場を前に司法への注目が高まっている。
原発訴訟は、裁判官を苦しめる案件の一つだ。
原発の複雑で難解な技術や装置の一つ一つを検証するだけでなく、地震を引き起こす断層かどうかなどの、周囲の自然環境も加味しなければならない。他の案件よりも、かかる労力は比べ物にならないといわれる。
一方で、国は原発を重要な電源と位置付けるなど、原発はエネルギー政策の根幹ともいえる存在だ。それに、原発は米国との日米原子力協定にも関わるし、二酸化炭素削減にも重要だという位置付けだ。
何よりも、東京電力福島第一原発の事故を通して、原発が事故を起こすと、いかに甚大な被害をもたらすかということが明らかになった。仮に自身が稼働可能と判断した原発でひとたび事故が起これば、住民の生活を破壊することになる。
一地裁の裁判長の判決・決定が、日本国内のみならず海外にも影響を及ぼすことになるといっても過言ではないのだ。
そんな原発訴訟の判断が3月、広島、松山、佐賀の各地裁で相次いで示される予定だ。広島・松山両地裁は現在稼働中の四国電力伊方原発3号機の運転差し止め仮処分、佐賀地裁は九州電力玄海原発の稼働停止仮処分についてだ。稼働停止を求める住民や国、電力会社の間では、日に日に注目が高まっている。
■国の政策とどう向き合うか
踏み絵となった原発訴訟
週刊ダイヤモンド2月25日号『弁護士 裁判官 検察官 司法エリートの没落』では、独立が保証された司法に、最高裁判事の人事を通して安倍政権の影響が及んでいる様について詳述している。だが、政権が及ぼしている影響は、これだけではない。原発訴訟においても、似た状況が起きている。
最高裁判所は2012年1月と13年2月、全国の地裁裁判長を集め、「特別研究会」を開催。原発訴訟に司法はどう向き合うかという議論が行われた。
司法は1970年代から続いてきた原発訴訟において、国の政策や判断を追認してきた。特別研究会は、「福島の惨状を無視して、果たしてこのまま国を勝たせ続けていいのか」と、司法が自問自答する機会だったと、複数の司法関係者は見る。中には「場合によっては、国を負かせても構わないというシグナルとなって、地裁裁判長に伝わった」という見方もある。
実際、この特別研究会後の14年5月と15年4月に福井地裁、16年3月に大津地裁で住民側を勝たせる判断が出された。
だが、この後の最高裁が発令した人事が波紋を広げた。福井地裁の樋口英明裁判長が、15年4月の異動で名古屋家庭裁判所へ“左遷”されたのだ。
地裁裁判長の人事権は最高裁判所の事務総局が握っている。国の意向を最高裁が忖度して、国の政策に沿わない判断を示した樋口氏を、地裁の現場から遠ざけたという見方がもっぱらだ。
この“左遷”によって、原発訴訟は裁判官にとっての“踏み絵”となった。
原発に反対する住民は、全国の原発の稼働停止を目指して、地裁に運転差し止めの仮処分を立て続けに申請している。いわば、原発運転阻止のための“仮処分爆弾”を大量に投下し、どれかが“当たる”と原発は止まる、という戦略をとっているのだ。
今回、標的になっていた四国電伊方原発に対しては広島、松山、大分の3つの地裁に、九州電玄海原発は佐賀地裁では2件の仮処分申請が申し立てられていた。
■原発反対住民による仮処分爆弾に
戦々恐々の電力各社
電力会社は戦々恐々だ。仮処分は即、効力を発揮するため、運転差し止めの仮処分が出された場合、即、運転停止が求められる。実際に停止となれば、電力需要を賄うために、急きょ火力発電を稼働させなければならず、コストがかさみ、業績悪化は避けられない。
元大阪高裁の裁判長で、自身も関西電力大飯原発に対して出された仮処分に対する抗告審の判断をした学習院大学法学部教授の林圭介氏は、「最高裁が何を言っても、個々の裁判官の判断には影響しない」と話す。ただし、こうも付け加える。
「世の中の様々な考えや事件、事故を見ながら、裁判官は判断する。したがって福島の事故ももちろん見ていて、判断に影響を与えることはあると思う。それ事態は当然のことです」
住民側の“仮処分爆弾”が続々と投下される中で、裁判所は原発をどう判断するのか。3月の判断は大きな話題を呼びそうだ。
『週刊ダイヤモンド』2月25日号の第1特集は「弁護士・裁判官・検察官〜司法エリートの没落」です。
今回、取材班は法曹人口増加で混沌とする弁護士業界にとどまらず、裁判官と検察官の秘密にも迫りました。
法曹界で最上位層の秀才が集うのは、昔も今も裁判官です。
その頂点に立つ最高裁判所は内閣と国会を監視する立場にありますが、最高裁判事人事で安倍政権の介入を受けた可能性が高いことが、今回の取材で分かりました。
まさに今、最高裁が権力にひれふそうとしているのです。
一方、「巨悪は眠らせない」ことで知られる検察官。
しかし2010年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件の傷が癒えず、まるで眠ってしまったかのような状況が続いています。
東芝の不正会計問題では立件に難色を示すなど慎重姿勢が目立ち、捜査関係者からは特捜不要論まで出る始末。不敗神話が失墜し、もがき続ける検察の姿がそこにはあります。今回、検察官から弁護士に転じた「ヤメ検」の生態にも迫りました。
法曹三者の没落ぶりを裏付けるのが、下げ止まらない法科大学院の志願者数です。その多くで定員割れを起こし、崩壊が目前に迫っています。<
大激動時代を迎えた法曹界で今、一体何が起きているのか。その全てを徹底解明しました。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 重石岳史)
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