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米原発 衰退の危機
シェール台頭や老朽化 新規建設、コストの壁
米国の原子力発電産業が衰退の危機に直面している。シェール革命で安くなった天然ガスを使う火力発電に押され、老朽化した原発の停止が相次ぐ。2011年3月の福島第一原発事故後、米国でも安全規制が強化。東芝の巨額損失を招いたように、新規建設のコストはこれまで以上に膨らむ。温暖化対策に消極的なトランプ米大統領の政策も逆風になりかねない。
閉鎖が決まったNY近郊のインディアンポイント原発=ロイター
「13年から13基も原子炉停止が表明された。原発産業をどうするのか」(米原子力エネルギー協会=NEIのマリア・コスニック最高経営責任者=CEO)
「米原発市場の競争力があるとはいえない」(米原発運営会社サザン・ニュークリア・オペレーティング・カンパニーのスティーブ・ククズンスキーCEO)
1月27日、コロラド州で「米原発」を巡る討論会が開かれ、先行きを懸念する声が相次いだ。
15〜20基停止も
世界の原発発電量の3分の1を占める米国。現在、全米で稼働している原子炉は99基で、ピークだった1990年から15基減った。NEI前CEOのマービン・フェーテル氏は、今後5〜10年でさらに15〜20基が停止する可能性があると指摘する。
1月9日、ニューヨークの中心街マンハッタンから約70キロ離れた場所にあるインディアンポイント発電所の原子炉2基の閉鎖が発表された。運営主体であるエンタジー社のレオ・デナルトCEOは「天然ガス価格の歴史的な低下や運営コストの上昇が響いた」と閉鎖の理由をコメントした。
シェール革命で天然ガス生産が急増した米国では、天然ガスの価格(16年平均)が10年前に比べて6割強下落した。燃料費だけではない。設備の技術革新もあり、天然ガス発電全体のコストは10年間で45%低下した。天然ガス発電が普及した結果「電気料金は過去10年で45%下がった」(エンタジー社のデナルト氏)
一方、米エネルギー情報局(EIA)によると、米原発の発電コストは15年までの10年間で4割も上昇した。電気料金が下がったにもかかわらずコストが上昇したため、苦境は深刻になった。
コスト増の背景にあるのが設備の老朽化だ。79年に起こったスリーマイル島の事故以降、長く新規原発の建設が認可されなかった。多くの原発が稼働から40年以上たつ。修理・保守費がかさみ、小規模原子炉ではコスト増を吸収できなくなってきた。
米国の原発が抜本的に競争力を取り戻すには高効率の新型原子炉への設備更新が欠かせない。
GE、海外にらむ
「AP1000はゲームチェンジャーになる」(サザン・ニュークリア社のククズンスキー氏)。東芝傘下ウエスチングハウス(WH)が開発した最新鋭原子炉のことだ。簡素な構造だが高出力。安全性の向上だけでなく建設期間の短縮や労働力削減も売りにする。米国で建設中の原発4基はすべてAP1000だ。
しかし、建設作業は遅延に遅延を重ねコストが膨らみ、今回の東芝の経営危機にもつながった。
福島の事故を受け、米原子力規制委員会(NRC)は安全規制を厳格にしている。AP1000は世界で一基も稼働していないだけに当局の目も厳しく設計の見直しも多いという。米国での新規建設は巨額の費用がかかり民間企業の手に余る。
15年時点で米発電の燃料別シェアは天然ガスが33%で原子力の19%を上回る。40年には倍以上になる見通しだ。
米市場の縮小を見越し、WHは中国、ゼネラル・エレクトリック(GE)は英国など米原発メーカーは海外展開を急いでいる。だが、特に新興国では中国勢やロシア勢との競合が激しい。ある外資系証券アナリストは「米原発産業は新たな環境に適応している最中」と言うが、反転への突破口はまだ見えてこない。
ニューヨーク=稲井創一
[日経新聞2月7日朝刊P.6]
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