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右手前が米山隆一知事。左手奥から東電・廣瀬直己社長と數土文夫会長。(撮影/横田一)
ようやく実現した東電トップとの初会談で“再稼働バトル”――米山知事「検証には数年」明言
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170124-00010000-kinyobi-soci
週刊金曜日 1/24(火) 10:26配信
新潟県の米山隆一知事は1月5日、県庁を訪れた東電の數土文夫会長と廣瀬直己社長らと初めて面談した。鳥インフルエンザなどの影響で延期になっていたのがようやく実現したものだ。數土会長は知事選当選祝いから切り出し、福島第一原発事故の県の検証への協力を申し出るなど友好関係を築こうとする姿勢が透けて見えた。
これに対し米山知事は、知事選で訴えた「三つの検証が終わらない限り、再稼働の議論はできない」を繰り返し、「検証には数年かかる」と明言した。この瞬間、柏崎刈羽原発の再稼働は最低でも数年は困難となったのだ。
12月19日の世耕弘成経済産業大臣との初面談でも米山知事は、「三つの検証終了が再稼働の議論開始の前提条件」と発言。早期再稼働を目指す経産省に釘を刺していた。
前提条件となる三つの検証項目は、「一・福島原発事故の原因解明」と「二・事故による住民の健康と生活への影響」と「三・柏崎刈羽原発で事故が起きた時の避難計画」。泉田裕彦知事時代に設置された「県技術委員会」や「(東電と県の)合同検証委員会」が1番目の事故原因解明の検証を進めてきたが、残り二つの検証については手薄なため、体制拡充する方針も米山知事は東電トップに伝えた。
こうした県の姿勢に廣瀬社長も「(事故の検証で)私共も事故を起こした責任者として、一番多くを学ばなければいけない」と強調した。しかし東電の本音も早期再稼働。同社の再建計画は、柏崎刈羽原発6号機と7号機の再稼働が前提で、年間1000億円程度の収益改善効果があるとされるからだ。「友好的関係を築いた上で米山知事を懐柔する」という東電の作戦は失敗したが、反転攻勢に出る可能性は十分にある。初面談後の囲み取材で數土会長は、「知事の同意が得られるまでは柏崎刈羽原発は動かさないという理解でいいのか」との質問に「そうなると思います」と答えつつ、「我々は世論がどうなるのかは分かりません。地球温暖化とか、化石燃料の状況だとか、東南海地震の襲来があった時にどうするのか」と言い出した。
東電の次なる手段が見えてきた。それは、「原発は地球温暖化対策に有効」「化石燃料輸入で国富流出」「地震時の予備電源になる」といった情報を流して世論誘導、米山知事批判が噴出するように仕掛けるというものだ。実際、米山知事の囲み取材では『産経新聞』がこんな質問をした。「(東電が福島原発)事故処理費用を捻出して税金とか電気料金値上げを通じての国民負担を最小化するという意味で『一定程度の再稼働も必要』という意見もあるが、検証の長期化と国民負担の兼ね合いについてどうお考えですか」。
米山知事は「知事の責務は県民の命と暮らしを守ること。基本的には私が第一に考えることではない」と答えたが、「国民負担最小化を阻害する新潟県」との批判狙いは明らかだ。
【「地震説」なら再稼働困難】
一方、新潟県の徹底検証で、全国の原発再稼働にブレーキがかかり、安倍政権の原発推進政策を根底から揺るがすことも考えられる。柏崎刈羽原発の立地場所は地震の揺れが大きくなる軟弱地盤。しかも米山知事は福島原発事故原因として「地震説」を排除しておらず(東電や経産省は「津波説」を主張)、新潟県がさらなる検証を進めた結果、「地震説が有力」との結論になる場合も考えられる。その場合、津波説前提の今の対策では不十分で、新たな配管補強などで天文学的な費用が必要になり、再稼働は極めて困難で廃炉を余儀なくされる事態に陥るのだ。
筆者がこの点を聞くと、米山知事は一般論と断りつつも、「合理的に(原発の)安全が確保できないのであれば、(再稼働は認められない)私の現状の認識が続くわけですから、再稼働は認められないことに必然的になる」と答えた。新潟県の地震説採用で原発の安全確保のハードルが上がり、柏崎刈羽原発はもちろん全国の原発再稼働が困難となる波及効果も考えられるのだ。今後も新潟県と東電の“バトル”から目が離せない。
(横田一・ジャーナリスト、1月13日号)
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