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もんじゅ廃炉の次に待ち構える「悪夢の原子力行政」 「夢の原子炉」を追う危険な経産省
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50583
2016.12.27 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■「もんじゅ」廃炉はいいけれど…
政府は、原子力規制委員会の最後通告から13カ月もかかって、ようやく“金食い虫”の高速増殖炉(原型炉)「もんじゅ」(福井県)の廃炉を決めた。
もんじゅの廃炉費用は、出力28万キロワットに対して3750億円以上と、一般的なもの(100万キロワット級原発で3000億円程度)と比べて規模の割にかなり割高だ。が、地震対策などに今後8年の歳月と5000億円以上の費用がかかるうえ、その後8年の運転経費が5400億円以上に達するため、再稼働を断念したという。
もんじゅは、使った以上の燃料を生み出して「核燃料サイクル」を実現する「夢の原子炉」になるはずだった。50年以上前から開発が始められ、完成から約24年の歳月が過ぎたが、事故や事故隠しが度重なり、運転できたのはわずか250日に過ぎない。
今回の決定により、これまでに費やした予算1兆410億円は水泡と帰し、「夢の原子炉」はまさに夢半ばで幕を閉じることになる。
血税を無駄にしたことよりも大きな問題は、政府が、コア技術の開発を目指した「原型炉」もんじゅの失敗を直視せず、逆に大きな成果を挙げたと言い張り、「商用炉」の前段階に当たる「実証炉」に計画をステップアップして、新たな高速炉開発に取り組むとしている点である。
もんじゅ廃炉に対する「原子力ムラ」の不満を抑える意図は明らかだが、あまりにも非現実的で、無責任だ。新たな墓穴を掘りかねない。また、こうした姿勢は、「核燃料サイクル」継続と称し、核兵器開発に直結するプルトニウム抽出に拘っている証左と、日本に対する国際的な不信感を募らせることにもなりかねない。
失敗を失敗と率直に認めて高速炉開発を断念、青森県・六ケ所村の再処理施設で使用済み燃料を再処理して作り出したMOX燃料を使うプルサーマル方式だけに「核燃料サイクル」を絞り込むことこそ、政府に求められている最低ラインの決断のはずである。
13カ月前の本コラム(2015年11月14日付『原子力規制委員会がついに「もんじゅ」にレッドカード!どうして安倍政権は廃炉を決断できないのか』)でも書いたが、もんじゅは、旧原子力委員会が2012年末にまとめた見解『今後の原子力研究開発の在り方について』でも、「年限を区切った研究計画を策定・実行し、成果を確認の上、研究を終了すべきである」と、近い将来、お役御免にすることを求められていた代物だ。
加えて、福島第一原発事故の発生を機に原発依存度の引き下げが課題になり、使用済み燃料がそれほど増えない見込みとなり、「2050年以降の商用化を目指す」高速増殖炉の必要性も薄れていた。
そこで、原子力規制委員会の田中俊一委員長は昨年11月13日、馳浩文部科学大臣(当時)に対し、日本原子力研究開発機構以外への運営主体の交代か、廃炉を含む抜本的見直しを迫る勧告を手渡した。
客観的に見て、機構に代わる運営主体探しは不可能に近く、大方が事実上の廃炉命令と受け取った勧告だった。しかも、規制委員会が文科省に与えた猶予は「概ね半年程度」と短かった。
ところが、水面下での文部科学省(旧科学技術庁)や経済産業省、もんじゅの地元・福井県などに根ざす原子力ムラの抵抗は激しかった。
政府には国策を容易には覆せないというメンツだけでなく、そういった勢力への配慮も働いた。
そもそも安倍晋三首相が自ら、原子力規制委員会の勧告の2日前(昨年11月11日)の国会閉会中審査で、「(もんじゅを)国際的な研究拠点と位置付けている。速やかに課題解決に対応すべきだ」と述べ、もんじゅ存続に強い意欲をみせ、原子力ムラを勢い付かせる始末だったのだ。
■恥ずかしすぎる自画自賛
そうした中で、政府は先週水曜日(12月21日)、首相官邸2階の小ホールで、外務、文科、経産、環境、科学技術政策担当、原子力防災担当の各大臣と官房長官で構成する原子力関係閣僚会議が第6回の会議を開催した。
席上、会議の主宰者である菅義偉官房長官が、「運転再開に相当の時間と費用を要することから、(もんじゅを)廃炉にする」と結論づけたという。
同会議に提出された資料『「もんじゅ」の取扱いに関する政府方針(案)』によると、具体的な廃炉作業は、これまでの運営主体である日本原子力研究開発機構が担当する。タイムスケジュールは、2022年までに使用済み核燃料を取り出し、2047年までに施設の解体を終えることになっている。
しかし、この方針は、政府が率直にもんじゅをの失敗を認めたものとは言い難い。
それどころか、むしろ、「もんじゅの設計・建設・運転・保守等を通して、実証炉以降の高速炉の開発に資する様々な技術的成果が獲得されるとともに、その過程で涵養された研究人材の厚みも相まって、我が国は、世界の中でも高速炉開発の先進国としての地位を築いてきた」といった具合に強引に成果を強調し、自画自賛する部分が目立つ。
そして、その自画自賛のロジックを演繹して、同じく同会議に提出された資料『高速炉開発の方針』で、「将来の高速炉の 実現に向け、戦略の策定、体制の整備等を一体的に進める」といい、取り扱いが難しいナトリウムを引き続き冷却材に使い、何度、組織の抜本改革をしても安全を重視する文化を育成できなかった日本原子力研究開発機構を軸に高速炉開発を進める方針を掲げたのだ。
同じく資料『「もんじゅ」廃止措置方針決定後の立地自治体との関係について』では、「もんじゅを支えてきたのは、ひとえに福井県及び敦賀市をはじめとした地元自治体」、「もんじゅに係る計画変更に伴い、地元に大きな影響が生じないよう、また地元が共に発展していけるよう、必要な地域振興策等に政府として取り組む」とした。
振興策の選定は、別分野の新たな産業に目を向ける格好の機会なのに、端から「(周辺地域を、)我が国の高速炉研究開発の中核的拠点の1つとして位置付ける」と、地元自治体を高速炉開発と運命共同体にする内容になっている。
結局のところ、「もんじゅ廃炉」正式決定という政府発表の裏で進むのは、もんじゅより困難な新たな高速炉の開発という国策に過ぎないのだ。
しかも、その開発主体は、原子力規制委員会が13カ月前に、もんじゅの運営主体として相応しくないと駄目出しした、あの日本原子力研究開発機構である。
■「夢の原子炉」は危険な発想
日本は、「使用目的のないプルトニウムは保有しない」と国際的に公約することで、核兵器を持たないのに、唯一、使用済み燃料の再処理を認められてきた国家だ。しかし、核燃料サイクルの開発の遅れから、海外で保管してもらっているものも含めると原爆を約6000発も製造できるプルトニウム(約48トン)を保有しているのが現状だ。
関連する日米原子力協定が2018年に期限を迎えることから、トランプ次期米大統領のハラ次第で原子力政策に大きな混乱を招くリスクも高まっている。
それだけに、カネ食い虫のうえ、技術的にも開発が難しく、先進各国が相次いで商用化を断念してきた次世代の「夢の原子炉」を追い続けるのは危険である。
むしろ、こちらも22回の竣工延期を繰り返してきたものの、もんじゅよりは実現性のある、日本原燃の六ヶ所村再処理工場の建設や、海外で再処理してもらったMOX燃料を燃やすことが可能なプルサーマル発電専用の大間原発の完成を急ぐほか、これまで国がかたくなに拒んできた使用済み燃料の「直接処分」も実現する必要があるのは明らかなのだ。
ところが、今回の見直しで実現しそうなのは、原子力の研究開発分野の政策を担う官僚勢力の中心が、旧科学技術庁(文部科学省)から経済産業省に移ることぐらいである。
というのは、今回のもんじゅ廃炉や新高速炉開発を打ち出した原子力関係閣僚会議の素案作りを担ったのが、世耕弘成経済産業大臣が主宰する、つまり経済産業省が牛耳る「高速炉開発会議」だからだ。加えて、今後の開発の統括チームも、同省の官僚たちが主導することになっている。
経済産業省は、かつての金融機関の不良債権処理の際の公的資金投入のけじめの一環として解体された大蔵省と同じように、本来ならば、東京電力・福島第一原発事故の後始末費用が21.5兆円とこれまでのほぼ2倍に膨らんだことのけじめとして解体されるべき省庁だ。
ところが、実際は、国営・東電による電力会社の統廃合を推進することによってエネルギー産業の政府による支配を強めるとともに、旧科学技術庁が所管していた原子力の研究開発も傘下に収めるというのである。
残念ながら、日本は、誰も暴走する経済産業省の官僚と、その暴走に手を貸す政府に待ったをかけることができない状況に陥った。どうやら、「夢の原子炉」の夢がついえた後、待ち構えているのは、悪夢の原子力行政のようである。
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