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「もんじゅの失敗を繰り返さないために」〜プロジェクトとしては失敗に終わったと見るべき。ところが見直すどころか…本末転倒/nhk・水野 倫之
「もんじゅの失敗を繰り返さないために」(時論公論)
水野 倫之 解説委員
2016年12月19日 (月)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/259487.html
高速増殖炉もんじゅについて、政府はきょう、正式に廃炉にする方針を表明。
その一方で高速炉開発と核燃料サイクルは続け、もんじゅの後継として実用化手前の実証炉の開発を目指す方針も。
もんじゅをなくすのに、政策を見直すこともなく高速炉開発にこだわって、この先失敗を繰り返すことにならないのか。担当は水野倫之解説委員。
政府の高速炉開発会議がまとめた開発案のポイントは
▽高速炉は放射性廃棄物を減らせ、エネルギーも有効利用できることから意義がある
▽もんじゅがなくてもほかの設備で実証炉開発は可能で、2018年までに工程表を作成する。
あくまで高速炉開発にこだわり、核燃料サイクルを堅持するとしている。
もんじゅについては正式に廃炉にする方針を表明。しかし福井県知事は立地に協力してきたのに、地元への説明も不十分で拙速すぎるなどと反発。政府はあらためて協議の場を設けるものの、廃炉の方針自体は変えないという。
この一連の方針は多くの問題を抱えている。
日本は、原発の使用済み燃料を再処理工場に運んでプルトニウムを取り出し、もんじゅのようにプルトニウムを増やすことができる高速増殖炉で繰り返し使う「核燃料サイクル」を基本。
しかし要となるもんじゅはトラブルが相次ぎ、ほとんど運転できなかった。
もんじゅ廃炉は当然の流れで、プロジェクトとしては失敗に終わったと見るべき。
要がなくなるから、当然核燃料サイクル全体の見直しが必要。
ところが見直すどころか、さらに先を目指すと言う。
これは原発開発の大原則を破るもの。
小型の実験炉で基本性能を確認、原型炉で安全性や発電能力を検証。さらにコスト的に見合うか確認する実証炉を経て、商業炉を建設する。
政府はそのように説明してきた。
もんじゅは原型炉だがフルパワーで運転したことはなく、日本として高速炉の安全性や発電性能を確認できたわけではない。今、その先の実証炉が可能とは言えないはず。
ただ政府は国内の実験炉やフランスの実証炉計画に参加することで、十分知見が得られるという。
本当にそうなのか。このうち40年近く前日本で初めて運転を始めた実験炉「常陽」を取材。
格納容器中央部の床下に原子炉。中にはプルトニウムの燃料と冷却材のナトリウム。
周りの機器を含め、全体に古さは否めないが、手入れは行き届いている印象。
これまでプルトニウムが増えるか、燃料の組成がどう変化するのかなど基礎的な研究。
ただ出力はもんじゅの5分の1と小型で、発電設備がない。中でも発電に必要な蒸気を作る蒸気発生器は海外でナトリウムが漏れて激しく反応する事故も報告され、安全性の高い機器の開発が必要だが、常陽ではできない。
これについて政府は、フランスが計画する実証炉で確認できるというがまだ設計段階で建設されるかどうかも決まっておらず、発電設備の確認ができる保証はない。
日本のエネルギー事情からどうしても必要と言うのであれば、もんじゅの失敗を教訓に、基盤研究からやり直し、運営主体も改善して出直す、というならわからないでもないが、背伸びして一つ上に行こうとすれば、失敗を繰り返すことになりかねない。
決め方にも問題。
高速炉開発会議は経済産業大臣に文部科学大臣、それに原子力機構と電力業界、三菱重工業と、これまでもんじゅを推進してきたメンバーだけで構成。しかも議論は多くが非公開。毎回数十分の会議を4回開いただけ。
これでは最初から高速炉開発ありきかと。
もんじゅ関係者ではない、第3者の有識者による委員会を設置し、開かれた場でもんじゅ問題の総括と政策の見直しをしなければ。
政府の意思決定のどこに問題があったのかなど、政策面からももんじゅ失敗の教訓を明らかにしなければ。
その上で核燃料サイクルの見直し。ポイントとなるのは使用済み燃料の扱い。
政府が核燃料サイクルを堅持しようとする大きな理由の一つが、一般の原発の再稼働。再稼働すれば使用済み燃料が出るが原発のプールは満杯に近いところもあり、運転停止に追い込まれる可能性。再処理工場持つ青森県も核燃料サイクル続けることを受け入れの条件、やめるのであれば使用済み燃料を元の原発に返すと。
政府としては、高速炉開発の意思表明はしておかなければならない事情。
しかしこれでは本末転倒。
使用済み燃料をすべて資源と言うのではなく放射性廃棄物として処分できるようにする必要。
そしてそのための中間貯蔵と最終処分に向けた選定作業を急がなければならない。
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