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11月30日、福島第1原発の廃炉費用など膨大な資金負担に直面する東京電力ホールディングス再建の先行きが一段と不透明になってきた。写真は同社のロゴ。2011年6月撮影(2016年 ロイター/Yuriko Nakao/File Photo)
焦点:袋小路の東電再建 めど立たぬ廃炉資金、社債発行も見通し難
http://jp.reuters.com/article/focus-tepco-idJPKBN13P1CI
2016年 11月 30日 21:16 JST
[東京 30日 ロイター] - 福島第1原発の廃炉費用など膨大な資金負担に直面する東京電力ホールディングス(9501.T)再建の先行きが一段と不透明になってきた。
経済産業省の試算によると、廃炉コストは従来想定の4倍の8兆円に膨らむ見通しで、これだけでも同社の純資産約2兆2700億円をはるかに上回り、債務超過の懸念も現実味を帯びかねない。年内の対策提言を目指す同省の有識者会議が決定打となる措置をまとめられるかどうかも見通し難が続いている。
<廃炉費用、従来比4倍に急増>
経産省の試算について、複数の関係者は、福島第1原発で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しなど今後本格化する廃炉事業にかかる費用について、東電が確保するとしている2兆円から4倍増の推計約8兆円、 賠償・除染を加えた福島事故関連の費用も倍増して合計22兆円の巨費に上る可能性があることをロイターに明らかにしている。賠償費用の上振れや困難さを増す廃炉作業。これらを念頭に、今年7月末の記者会見で、数土文夫東電会長は政府に対し「事業環境整備をお願いしたい」と事態打開に向けた政策作りを要請。同時に、「事業再編を含めた非連続な経営改革が必要」とも述べ、東電自身が「身を切る改革」に取り組む姿勢を示した。
<低調な議論の東電改革委>
東電の要請を受けて今年10月に始まった経産省の有識者会議、「東京電力改革・1F問題委員会」はこれまで4回の会合を開いた。再稼働を目指している柏崎刈羽原発を分社し、他電力との再編、統合を促すような抜本的な改革案を打ち出せるかどうかが最大の焦点。東電の持ち株会社制移行(今年4月)に伴い分社した送配電事業も、他社との再編や統合が俎上(そじょう)に上がっている。
しかし、記者会見で伝えられる会合でのやりとりを見ると、有識者会議での議論は低調さが否めない。今月18日の第4回会合後の記者会見で、伊藤邦雄委員長(一橋大学大学院商学研究科特任教授)は、「委員の間では、(原子力や送配電で)再編、統合という方向に踏み出す必要があるというトーンが醸成されてきた」と述べた。第3回会合では、オブザーバー参加の広瀬直己・東電社長が原子力事業について「安全、防災、信頼回復、福島第1原発の廃炉事業などの連携」を行うと説明した。
だが、「東電の解体」に直結するこれらの再編、統合案を東電が自ら進んで打ち出す様子はない。また、他の電力会社には経産省主導で進む原発の再編構想に巻き込まれることへの警戒感が非常に強い。東北電力(9506.T)の原田宏哉社長は「他社の原子力事業への関与、連携についてはまったく念頭にない」(10月27日の決算会見)と述べるなど、改革委での議論と電力業界との大きな温度差がすでに明らかになっている。
<原発再稼働シナリオにも狂い>
経産省は10月25日、福島第1の廃炉費について2015年度までの3年間の平均金額の約800億円が数千億円に膨らむとの見方を示した。これに対し広瀬社長は「合理的に見積もられた数値ではない」(10月31日の決算会見)と反論。議論の大前提となる廃炉費用や賠償などの算定についてもコンセンサスができていない実態を示した。
巨額な対策費をどのように捻出するか、という具体策も合意には程遠い状況だ。これまでのところ、東電も経産省も、巨額の廃炉費を賄う方策として、同社のコスト削減や事業再編を通じた合理化努力で捻出するというシナリオしか打ち出せていない。政府と東電の本音は、柏崎刈羽原発の再稼働こそが廃炉費用を賄う上で最善の策というものだ。原子力規制委員会による審査中の同原発6、7号機が再稼働すれば年間で2000億円を超える利益を上積みできる計算になっている。しかし、柏崎刈羽原発の地元新潟県では再稼働に慎重な米山隆一知事が10月に就任。同氏は、「現状においては再稼働は認められないとの立場は堅持する」(10月25日の就任会見)と述べており、早期の運転再開は展望できない状況が続きそうだ。
<社債発行、年度内は困難か>
原発再稼働と並んで東電が切望する公募社債市場への復帰。2014年1月に政府に認定された現行の再建計画では、2016年度末に行われる経営評価で、g原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて政府が50%超の議決権を握る一時公的管理から離脱できるかどうかが試される。起債は収益が安定している送配電子会社が担う。ただ、送配電事業も東電改革委で再編議論の対象になっているうえ、原子力リスクが送配電子会社に波及することを防ぐ仕組みが十分に講じられるかどうか不透明だ。このため同子会社は社債発行に必要となる格付けもまだ得ていない。広瀬社長は10月末の決算会見で「年度内に社債を発行するという考えは変わりない」と強調したが、関係者からは「今年度中の社債発行はできないと思う」との指摘も聞かれる。
(浜田健太郎 編集:北松克朗)
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