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原発防潮堤 液状化の恐れ
安全審査終盤の泊と柏崎刈羽 砂の地層、沈下なら津波被害も
国の安全審査が終盤を迎えていた2つの原子力発電所で、津波対策として設けた防潮堤の地盤に液状化の可能性が相次いで浮上した。北海道電力の泊原発と東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)だ。地震による液状化で防潮堤が沈み込むなどすれば、津波を防ぎきれずに大規模な事故につながる危険がある。
津波は地震と並ぶ原発の大きな自然災害のリスクだ。東日本大震災では、東電福島第1原発に15メートル級の大津波が到達。地下にあった非常用発電機などが水没し、電気を供給できなくなったことが大事故につながった。
この事故を教訓に、原子力規制委員会が定めた原発の新しい規制基準では、厳しい津波対策を求めている。電力会社は想定される最大級の津波「基準津波」の高さを詳しく計算。津波の高さが敷地を超える場合、防潮堤などの建設が求められる。
福島第1原発の事故後、全国の電力会社は、原発を津波から守るために巨大な防潮堤や防波壁を次々と建設した。いずれも高さは想定される最大の津波を上回る。泊原発では津波が最大で12.6メートルに対し防潮堤の高さは16.5メートル。柏崎刈羽原発は6.8メートルの津波想定に対して約15メートルと2倍を超す。
ところが、この2つの原発で防潮堤の安全を揺るがしかねない問題が起こっている。地盤が液状化する可能性だ。液状化は地震で地面が揺さぶられて、地盤がまるで液体のように軟らかくなる現象。液状化が起きれば、防潮堤が土の中に沈んで低くなったり傾いたりして、津波から原発を守れなくなる危険がある。
即不合格ではない
2つの原発で液状化の可能性が出たのは、防潮堤が立つ地盤に問題がある。柏崎刈羽原発の場合、防潮堤の地盤には液状化が起こりやすい軟らかい砂の地層が広がる。地面に近い場所では地盤改良の対策を取っているが、それより深くにある砂の地層が新たに問題になった。
泊原発では砂の地層のほか、防潮堤を建設するために埋め立てた土にも液状化の可能性が出ている。防潮堤より海側にある防波堤の下には砂が分厚く積もり、3メートルほど地盤が沈下したり津波に流されたりする懸念もあるという。
両原発では当初、完成した防潮堤の地盤が液状化する心配はないとしていた。ただ、いずれも福島事故の直後に計画されたもので、新しい規制基準に基づく審査は受けていなかった。安全審査が進んで新たな地震や津波の想定が決まり、新基準を満たすかどうか改めて計算や調査をやり直したところ、液状化の懸念が出てきた。
ただ、液状化の可能性が出てもすぐに安全審査に「不合格」とはならない。関西電力の高浜原発(福井県)では過去、4号機の設備を守る防潮堤で液状化の可能性が発覚した。このとき関電は地盤に薬液を注入して固める対策を取り、再稼働にこぎつけた。
では泊原発と柏崎刈羽原発ではどのような対策を取るか。両者の対応は少し異なる。
柏崎刈羽原発の場合、敷地が海抜5メートルの1〜4号機側と12メートルの5〜7号機側に分かれる。津波想定は最大6.8メートルで、現在、安全審査を受けている6、7号機に津波が到達する恐れは比較的低い。ただ、液状化の可能性があるのは1〜4号機側の防潮堤で、3号機に設ける計画だった「緊急時対策所」と呼ぶ重大事故時の対応拠点は浸水が避けられない。そのため、まず対策所を6、7号機に隣接する5号機に移した後に、液状化対策を打つ考えだ。
津波想定、高さ増す
泊原発では、審査の過程で津波の想定が従来の7.3メートルから12.6メートルへと跳ね上がった。防潮堤は1〜3号機全体を取り囲むため、液状化対策を打つ他に方法がない。北電は今後、さらなる地盤の調査や工事などの対策をとり、安全審査への合格を目指す。
規制委の審査にはこれまで4原発8基が合格したが、津波リスクは比較的低い原発もある。再稼働にいち早くこぎつけた九州電力川内1、2号機(鹿児島県)や、審査に合格した四国電力伊方3号機(愛媛県)は、想定される最大の津波に襲われても津波が敷地の高さに到達せず、巨大な防潮堤は必要がなかった。
今後はより巨大な津波が想定される原発の審査も進む。東北電力の女川2号機(宮城県)で想定される最大の津波は23.1メートル、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)は17.1メートルに達する。これらの原発では、特に津波対策の重要性が高い。
津波への備えは福島事故の大きな教訓だ。防潮堤など設備が十分に機能するのか、万一の浸水への準備はできているかが、あらためて問われることになる。
(松添亮甫)
キーワード 基準津波
原発ごとに考えられる最大規模の津波の高さのこと。地震では2004年のスマトラ沖地震や東日本大震災といった巨大地震を想定。地震のほか海底の地滑りや火山噴火などあらゆる発生原因を考え、コンピューターによる計算も加えて想定を決める。想定される津波が敷地の高さを超える場合は防潮堤などの対策設備が必要になる。
13年に施行した新しい規制基準で設定が義務付けられた。電力会社が地震などの条件をもとに計算し、原子力規制委員会の承認を受け正式に決まる。安全審査の過程で当初の想定が甘いと指摘され、全国の原発で引き上げが相次いでいる。
[日経新聞11月11日朝刊P.31]
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