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廃炉に外国人「我々がやるしかない」 被ばくに不安の声
http://mainichi.jp/articles/20161107/k00/00m/040/140000c
東京電力が廃炉を進める福島第1原発の過酷な最前線で、外国人が働いていた。「日本人がやらないなら、外国人がやるしかないと思った」。汚染水貯蔵タンクの建設に従事した日系ブラジル人の男性は言った。彼らは、必要な人数がそろわない日本人の穴を埋めていた。【関谷俊介】
「福島第1原発について私は皆さんに約束する。状況はコントロールされている」。安倍晋三首相は五輪招致に向けて2013年9月、国際オリンピック委員会の総会で力説した。第1原発ではその前月、鋼材をボルトでつなぐフランジ型のタンクから汚染水約300トンが漏れ出た。
現場は増え続ける汚染水と格闘していた。政府は溶接型タンクの増設を指示し、東電は大手ゼネコンに発注。2次下請けに入った東京の溶接会社は13年11月ごろ、半年で約50基建設という日程的に厳しい作業に着手した。
溶接会社の社長は取材に「当初は原発で働く予定だった日本人従業員も、直前に家族の反対で断念した。(ぎりぎりの要員で)毎日が戦争状態だった」と証言。「日本人溶接工三十数人を集めたが、技量不足で半数を入れ替えた」と話す。
「外国人がやるしかない」と語った津市在住の溶接工、石川剛ホーニーさん(43)はブラジル生まれの日系2世で日本に移って日本国籍を取得。外国人作業員たちのまとめ役を務めた。彼らも日系2、3世やその配偶者で就労制限はなかった。
石川さんは14年1月に初めて第1原発に入り、目を疑った。汚染水の円柱タンク(高さ、直径とも約10メートル)は、分割された約20個の部材を溶接でつなぎ合わせて作る。だが、現場に集められた日本人作業員の多くは高齢で溶接の技量が低く、作業は進まなかった。
最初のころはタンクの残り容量に余裕がなく、突貫工事を強いられた。トイレに行く時間も惜しく、現場で用を足した。外国人作業員をタンク上部の足場に残したまま、下部で溶接の火花から引火したとみられるボヤ騒ぎも起きたという。
日当は通常の約1.5倍。「一緒に働く外国人から、被ばくしたら補償はあるのかと不安の声も上がった。こちらは『この日当は他では出ない』と報酬の話をするしかなかった」と振り返った。
外国人作業員のうち40代の日系ブラジル人男性が取材に応じた。石川さんから作業を請け負った後も有期で別の会社に雇われ、日本人が次々去る現場で約1年間タンク建設に携わった。「(廃炉作業に)日系人が入ったのは私たちが初めてだと思う。その後は他のグループが溶接以外の現場にも入るようになった」と話す。
事前に放射線防護教育も受けた。内容は核燃料物質の知識や放射線の身体への影響、関係法令など。労働安全衛生法の規則に基づき原子力施設で働く作業員に雇用主が行うが、第1原発では東電が元請け企業などを支援する立場でテキストを作り、実施する。男性は「日本人と同じ講義で通訳もなく、漢字の形を暗記した」と話す。
外国人作業員のうち何人かは、別の元請けの下でも外国人グループを組んで働いた。そこに加わった別の40代日系ブラジル人男性はこう説明した。「グループは10人くらいで、約25基を作った。作業中の会話はポルトガル語で、構内放送があると日本語ができる作業員が苦手な作業員に意味を教えていた」
福島第1原発の汚染水
山側から大量の地下水が原子炉建屋に流れ込み、溶けた核燃料に触れるなどして放射性汚染水が発生している。東京電力は昨年9月から建屋への流入前に地下水をくみ上げて海に放出し、流入量は1日約400トンから一時は約150トンに減った。だが、降雨の影響で再び増え、現在1日300〜400トンで推移する。貯蔵タンクはフランジ型から溶接型に順次建て替え、計約1000基(容量約100万トン)に上る。
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