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凍土壁 効果見えず
福島第1原発 汚染水対策の切り札 地下水遮断の確証なく 廃炉工程に影響も
東京電力福島第1原子力発電所で、放射性物質が混じった汚染水の増加を抑える切り札とされる「凍土壁」。地盤を凍結する作業が始まってから半年以上たち、今月、ようやく一部が完成した。しかし凍土壁がきちんと働けば減少するはずの井戸水の量が減らないなど、肝心の効果がはっきりしない。東京オリンピックが開かれる2020年中に終えるとした汚染水対策が遅れ、原発事故の後始末全体に影響が出る恐れもある。
凍土壁は地盤を凍らせることで氷の壁を造り、地下水の流れを遮る仕組みだ。凍結管と呼ばれるパイプの中をセ氏マイナス30度の冷却剤を循環させ、凍結管の周りの温度を氷点下に下げて地盤を凍らせる。最終的には厚さ1メートル程度の氷の壁で地下水をせき止めることをめざす。
山側と海側に建設
福島第1原発1〜3号機の建物の底には、事故で溶け落ちた核燃料に触れた高濃度の汚染水がたまっている。東電は20年中に建物にたまった汚染水をすべて取り除くことを対策の目標にしている。しかし新たに地下水が流れ込み、汚染水を増やし続ける悪循環が続いていた。凍土壁は地下水が流れ込むのを防ぎ、悪循環に歯止めをかける切り札として13年に建設が決まった。
内陸から原子炉の建物の地下水が流れ込むのを防ぐ山側と、原子炉の建物から汚染水が海に流れ出るのを防ぐ海側を合わせ、全長1.5キロメートルの氷の壁で4棟の建物を取り囲む。地下に長さ30メートルの細長い凍結管を約1メートル間隔で計1568本打ち込んだ。地下水を遮るためにコンクリート壁などを打ち込むと、地下に埋まった電線や配管などを断ち切る恐れがあるため、凍土壁が採用された。
凍土壁はトンネル工事の地下水対策などでは実績があるが、1.5キロメートルにわたり地盤を凍らせる例はないという。福島第1原発ではこれまでに345億円の国費が投じられ、工事が進んでいる。
凍結管などの工事が終わり地盤を凍らせる作業が始まったのは、予定より大幅に遅れて3月末。さらに地下水の流れが速く凍りづらい場所が見つかったり、相次ぐ台風や大雨によりいったん氷点下まで下がった地盤の温度が上昇したりして凍結作業は難航した。結局9月中に設定していた海側の凍土壁の完成は10月にずれ込んだ。
ようやく完成したものの、肝心の地下水を遮る効果は現時点ではほとんど見えていない。原子力規制委員会と東電は、凍土壁よりも海側にある井戸から水をくみ上げる量が減少しているかどうかを指標としている。効果があれば、建物側から海側に流れ出す水がせき止められて減るという理屈だ。この効果を示す基準として、井戸からくみ上げる水の量が1日70トンまで減るという数値を設定した。
ところが、工事の完成が近づき地下水を遮る氷の壁が広がっているはずの直近2カ月間の数字をみると、最も少ない日でも約200トンを超えている。台風や大雨が続いた9月には1000トンを上回る日もあった。東電は今後の見通しについて「雨の影響が無ければ順調に減少していくだろう。年内には評価ができるようになるのではないか」としているが、効果に確証が得られているわけではない。
東電は、効果を示すもう一つの指標として、凍土壁を挟んだ地下水の水位差を主張している。効果があれば、水がせき止められる建物側では水位が高くなり、海側では低くなるという理屈だ。
水位差に偏り
現状では水位差は大きい地点で1.5メートルほどあるが、10センチメートル程度の場所もあり一様ではない。規制委は井戸からくみ上げる地下水の量を重視しており、規制委委員の更田豊志さんは水位差については「本質的に効果を示すものではない」と否定的だ。
山側でも凍結作業が進められているが、7カ所は凍結させずに地下水が通るようにしたまま。完全に凍結させて急に地下水の流入が減ると、建物にたまった汚染水が逆流して外部に流れ出す恐れがあるためだ。海側の凍土壁で効果を確認したうえで、来年以降に完成させる予定という。
東電は9月、20年中としてきた汚染水対策について、地下水の浄化設備を増やすなどすれば、2年前倒しで完了できるとする計画を公表した。しかし、この計画は凍土壁の効果が順調に出ていることが前提だ。
京都大学名誉教授の嘉門雅史さんは「汚染水処理に時間がかかれば、廃炉作業全体の工程にも影響が出てくる」と指摘している。溶け落ちた核燃料の取り出しを政府は21年中に始める計画だが、そうした作業が遅れる心配もある。
(安倍大資)
キーワード 汚染水処理
事故を起こした原発の建物に地下水などが流れこむと、溶け落ちた核燃料などに触れてセシウムやストロンチウムなど大量の放射性物質が含まれる汚染水が生じる。ほとんどの放射性物質は浄化装置で取り除けるが、処理した後もトリチウム(三重水素)と呼ばれる放射性物質が残る。
残ったトリチウムを含む水などは原発敷地内のタンクに保管されているが、すでに1000基に迫り保管は限界に近づきつつある。福島第1原発では最近でも1日400トン前後の汚染水が増えており、汚染水を減らすとともに、たまり続けるトリチウムを含む水をどう処分するかも課題となっている。
[日経新聞10月21日朝刊P.35]
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