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高齢原子炉 徐々にもろく
高浜原発「最長60年」認可 放射線や高温で、安全稼働へ先手の対処
原子力規制委員会は関西電力高浜発電所1、2号機の運転期間の20年延長を認可した。いずれも運転期間が40年を超えた「高経年化炉」で、厳しい安全審査を経て60年まで使えることになった。現在は休止中だが、1号機は2019年9月、2号機は20年4月にも再稼働できる見通し。高経年化すると、どんな点に注意や対策が必要なのだろうか。
原発は原子炉圧力容器内で核燃料に核分裂反応を起こさせ、発生する熱で湯を沸かし水蒸気でタービンを回して発電する。大量の放射線やセ氏300度前後の高温などのため、炉や配管は時間とともにもろくなり衝撃への抵抗力が弱まる。経年劣化と言われる現象だ。
代表的なのは核分裂によって生じる放射線の一種、中性子が圧力容器に当たって起きる「照射脆(ぜい)化」だ。圧力容器は厚さ10〜20センチメートルの鋼鉄製だが、中性子のエネルギーによって原子の配列が乱れ粘り強さが低下する。
鋼鉄は高温では粘りがあるが、低温だと硬くもろくなる。中性子の累積の照射量が増えると、もろさが増す温度が高温側へシフトする。この温度を「遷移温度」と呼び、脆化の指標に使われる。
電力中央研究所は実測データや金属組織の観察結果をもとに遷移温度の変化を予測する式を考案し、日本電気協会の規格に採用された。60年運転時のもろさを推定できる。
圧力容器の内壁にはあらかじめ複数の「監視試験片」が組み込んであり、何年かごとに取り出して粘り強さを測る。高浜1、2号機ではいずれも運転開始以降、4つの試験片を調べ、ほぼ予測式と合うデータが得られた。
仮に60年時点で事故が起き、高温の炉を外から水で急速に冷やしたらどうなるかも調べた。炉の内外の温度差によって1センチメートルの深い亀裂が生じても、破壊に対する抵抗力は破壊力を上回るという。
試験片に衝撃を加えて粘り強さを実測するにはある程度の大きさが必要だ。現在は角砂糖を5つ並べた程度だが、場所をとり個数も限られるため改良の工夫が進む。
電中研はデータのばらつきを統計的に処理する方法により、角砂糖半分ほどに小型化しても正しい値が得られることを示した。日本電気協会の最新規格に取り入れられた。
実際に照射脆化が引き金となり炉内に傷が生じていないかはロボットを使い超音波で検査し、5ミリメートル以上の傷なら確実にわかるという。高浜1、2号機では作業員十数名が1日24時間、1カ月がかりで炉内の全面と溶接部を検査し異常がないことを確かめた。
高経年化に伴う現象として、圧力容器内の構造物の「応力腐食割れ」も知られる。ステンレス鋼が強い中性子照射や高温の影響を受け、そこに引っ張り力が加わった時などに結晶の隙間を縫うように亀裂が入り局所的に腐食する。溶接部や燃料を支える構造物、ボルトなどで発生することがある。高周波の電流を流して抵抗値の変化を調べる渦流探傷試験で、1ミリメートル程度の表面の亀裂を検出できる。
このほか停止・起動に伴い温度や圧力が繰り返し変動し、圧力容器の冷却水の出入り口付近などに「低サイクル疲労」が起きることもある。蒸気発生器のステンレス配管などが長時間熱にさらされ、粘り強さが低下する「熱時効」も知られる。水蒸気をタービンに送る炭素鋼の配管などでは水流で管の厚みが減る「配管減肉」も発生しうる。
劣化の補修法もある。応力腐食割れならレーザー光を当てたり、水流で発生する泡が崩壊する際の力を使い、原因となる引っ張り力を解消する方法などがある。ただ、異常がなくても早めに機器や部品を交換する場合が多い。
高浜1、2号機では数十億円する蒸気発生器や原子炉圧力容器上蓋、燃料取り換え用水タンクなどを交換済みだ。2号機の格納容器内に入ると壁面が塗装し直されており、配管の多くが新しく40年間の使用を感じさせない。炉内構造物も「再稼働後、比較的早い時期に炉内構造物を取り換えたい」という。
原子炉内で起きる現象は複雑だ。照射脆化の予測式などの不完全さを指摘する声もある。東京大学教授の関村直人さんは検査や安全性の評価法に「新しい知見をどんどん取り入れるべきだ」と指摘する。今後、廃炉されるものを研究材料として活用したいという。劣化に関するデータを収集すれば、他の高経年化炉の運転延長にも役立つとみている。
(編集委員 安藤淳)
キーワード 原子炉圧力容器
核燃料を束ねた燃料集合体が入り、核分裂反応が起きる原発の心臓部。原子炉容器とも言う。制御棒や冷却水を通す管、計測器、燃料を支える板などが設置され、溶接や穴開けなどの加工が施してある。東京電力福島第1原子力発電所事故の際には、溶けた燃料の一部がこうした穴から下に落ちたとみられている。
稼働中には容器内はセ氏300程度の高温や、核分裂反応で発生する中性子の照射にさらされる。定期点検などで停止すると温度が下がり、再び稼働する際には上昇して大きな温度変化も受ける。溶接部や照射量が多い部分などはもろくなって傷みやすいため、詳細な検査や補修、交換を実施している。
[日経新聞10月14日朝刊P.31]
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