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高速増殖炉もんじゅ(「Wikipedia」より/ )
もんじゅ、ずっと運転停止でも計1兆円税金投入…廃炉でさらに3千億、日本の原子力政策破綻
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16662.html
2016.09.16 文=平沼健/ジャーナリスト Business Journal
政府は、日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営する高速増殖炉もんじゅを廃炉にする方向で最終調整に入ったと報じられている。
かつて「夢の原子炉」と呼ばれたもんじゅだが、原子力規制委員会はJAEAによる運営では安全性が確保できないとして、運営主体の変更を求めていた。また、現在停止中のもんじゅの再稼動には4000〜5000億円の追加費用がかかるとの試算もあり、政府は国民の理解を得ることが困難と判断したようだ。
だが、もんじゅは国の核燃料サイクル政策の中核を担う機関であり、原子力政策そのものを見直さなければならなくなる。
高速増殖炉の運転中は摂氏500度を超える高温となるため、冷却媒体として液化ナトリウムが使用されている。液化ナトリウムは、空気に触れると発火し、水に触れれば大爆発を起こす。だが、もんじゅでは液化ナトリウムの取り扱いがずさんで、実際に1995年に発火してナトリウムが漏れる事故を起こした。さらに、それを隠蔽していたことが発覚して問題となった。
その後、長らく運転が停止したままになっていたが、地元の反対運動などを押し切って2010年に運転再開にいたった。再開後も、性能試験中に誤警報や故障などのトラブルが頻発し、さらにトラブルはすべて迅速に公表するように念を押されていたにもかかわらず、事故を過小評価して報告を怠った。そして、作業員の操作ミスによる人為的事故が続いたことで運転を停止し、それが現在まで続いている。
95年の事故後も根本的な解決策を講じていないJAEAの体質に、原子力規制委員会が見切りをつけたといえる。
■核燃料サイクルを断念できないワケ
核燃料サイクルは、国策として推進されてきた原子力計画だ。原子力による発電の過程で発生する使用済み核燃料を、リサイクルして再び燃料にすることで半永久的に発電が可能になると考えられてきた。
そのため、使用済み核燃料は原発を保有する大手電力会社にとっては「資産」ととらえられている。ある試算では、全国の電力会社を総計すると使用済み核燃料の資産価値は15兆円ともいわれている。しかし、リサイクルできなくなれば、この使用済み核燃料は価値を失いごみとなるだけでなく、処理が困難で未来永劫管理し続けなければならない莫大な「負の資産」となる。
もんじゅは、稼動していないにもかかわらず維持費が年間200億円もかかっており、再稼動にも莫大な費用がかかるため、廃炉は妥当な判断だろう。だが、JAEAが12年に発表したところでは、廃炉にするには原子炉の解体など30年間で約3000億円の費用がかかるという。ナトリウムを使用していることで、一般の原発を廃炉にするより高くなるのだ。
政府は、もんじゅ廃炉後も高速炉の研究開発は継続するという。これは原子力政策の失敗を認めないための悪あがきとみる向きも多い。なぜならば、政府はこれまで原発で核廃棄物が生じても、それが再び燃料になるという前提において原子力政策を推進してきたからだ。
また、再利用できないとなれば、原発の存在そのものに疑問を投げかける動きが活発になるだろう。核燃料のリサイクルができない原発は「トイレのないマンション」にたとえられる。捨てることもできない排泄物=使用済み核燃料がたまり続ける現実を認めることになってしまう。さらに、14年までに投入された事業費の総額は、9847億円に上る。このすべてが無駄だったとすれば、責任の所在を問う声が高まるのは不可避だ。
研究継続によって、「核燃料サイクルは失敗したわけではない。可能性はある」と言い訳できる状況をつくるのだ。
■地元の既得権益
廃炉報道を受けて、もんじゅのある福井県敦賀市の渕上隆信市長は、松野博一文部科学大臣に対し「一定の成果が上げられないまま撤退という判断になれば、30年の協力はなんだったということになりかねない。地元の期待を裏切らないでほしい」と存続を強く求めた。
これは、もんじゅがあることで地元に巨額の利益をもたらしているためだ。渕上市長の言う「地元の期待」とは、敦賀市にもたらす既得権益を指すといえる。
たとえば、99〜14年度までにもんじゅの固定資産税として総額412億円が敦賀市に納められている。また、97年度に「リサイクル研究開発促進交付金」として約24億円、08年度には「高速増殖炉サイクル技術研究開発推進交付金」として約20億円が国から敦賀市に交付されている。さらに、研究開発費として毎年約4億円が計上されている。
このように、研究に携わる人たちや従業員の雇用という面からも、もんじゅ廃炉や研究中止に反対する力は強く働くのだ。
(文=平沼健/ジャーナリスト)
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