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原発と司法、海図なき航海
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投稿者 あっしら 日時 2016 年 5 月 23 日 04:45:38: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


原発と司法、海図なき航海
福島事故で脱「消極主義」? 編集委員 滝順一

 大津地裁が3月、住民の求めに応じ、関西電力に対し高浜原子力発電所3、4号機の運転差し止めを命じたのは衝撃だった。

 司法の姿勢に変化があるのか。幾人かの法曹関係者から話を聞いてみた。脱原発か原発推進かを問わず、全員が「変わった」、または「これから変わる」とみていた。「パラダイムシフトだ」とすら言う人もいた。これも正直なところ驚きだった。

 大津地裁の決定を受け、原発推進側からは判例を逸脱したとの批判や非難の声があがった。しかし電力会社やその応援団がいまなすべきは、法曹界の意見に注意深く耳を傾けることではないか。

 四国電力・伊方原発の設置許可取り消し訴訟での最高裁判決(1992年)が、原発訴訟でよく引き合いに出される判例だ。

 判決は行政の裁量を広く認めたものと理解されてきた。原発は複雑な技術なので、安全規制は専門家に委ねることにし、審査の過程に見過ごしがたい過ちがある場合に設置を無効にできるとして、住民側の上告を棄却した。つまり審査プロセスは問うが、基準の中身は問わないという。

 ただ判決文を見直すと「審査基準に不合理な点があり、あるいは(中略)看過しがたい過誤、欠落があり」とある。これは基準の中身も問えると読める。そうした読み方はこれまでもあったが、世間で広く知られたのは狭い解釈の方だ。「判例を逸脱」の批判は狭い解釈から生じたものだろう。

 これはなぜか。ひとつには「裁判所が伊方の判例を適切に踏まえて、規制基準の合理性を問うことを怠ってきたからだ」と、学習院大学の桜井敬子教授(行政法)は話す。もっとはっきりと、裁判所は「逃げていた」と厳しい言い方をする人もいる。

 教科書的な本にもある。原発訴訟に限らない一般論だが「行政に対するコントロールを自制し、司法審査に関して各種の限界理論を形成するなどして裁判審査を消極化してきた」(原田尚彦著「行政法要論」)。

 東京電力・福島第1原発事故が流れを変えた。大津地裁の決定は、規制基準に対しても「十二分に余裕を持った内容にすべき」だと真っ向から疑問を投げかけた。

 福島事故で、司法が判断を委ねてきた専門家が実は頼りにならないことが露呈した。例えば停電時間。8時間以上の停電はないと専門家は主張していたが、福島第1では外部電源復旧まで10日以上かかった。

 津波によって多重の安全システムが同時に損なわれた「共通要因故障」が惨事の引き金だった。「伊方判決のころはこうした事態を十分に想定していなかった」と、一橋大学の高橋滋教授(行政法)は指摘する。

 旧原子力安全委員会の班目春樹委員長ら規制関係者も、福島事故以前の基準には足らざるところがあったと認めている。

 司法の消極的な姿勢は過去のものだと断言するのは性急に過ぎるが、変化があるとみるのが自然だ。

 「危ないものは危ないという裁判官の生の判断が出るようになった」と住民側に立つ弁護士の河合弘之氏は言う。河合氏らは全国で300人を超える弁護士を組織化し、各地で運転差し止め仮処分を申請している。差し止めの判断が今後も繰り返される可能性があり、原発は「司法リスク」に直面している。

 河合氏らの動きに対し批判的な見方もある。

 仮処分は裁判で最終的に判断が確定する前に、即時に効力を発揮する。高浜3、4号機は運転を止めた。

 社会的に大きな影響を及ぼしかねないため「著しい損害が起きる恐れがあったり、急迫の危険が存在したりすることが仮処分の要件だ」と、名古屋大学名誉教授で弁護士の森島昭夫氏は指摘する。仮処分がもたらす利益と不利益の比較考量が必要で、大津地裁の決定は「前のめりだ」とみる。

 また伊方訴訟は政府の判断の是非を問う行政訴訟だったが、運転差し止めは民事訴訟だ。原発が生命の安全や健康的な暮らしを脅かすとする。

 「規制基準の合理性を問うのであれば、行政を相手にした行政訴訟にすべきであって、民事訴訟は適切な受け皿とはいえない」と高橋教授は言う。

 福島事故を風化させないという意味で差し止め申請の連発は効果的であるかもしれない。原発の安全性に対する国民の関心や懐疑を常に喚起できる。

 ただそれが原子力をめぐる大きな意見の隔たりを乗り越えるうえで有用だろうか。逆である可能性が大きくはないか。

 電力会社には何ができるのか。自然災害などへの備えについて今まで以上に丁寧な説明が要るのは当然。説明の以前に、多く人々が抱く心配に耳を傾ける姿勢が求められる。

 九州電力は熊本、大分地方で地震が続くなか、隣県の鹿児島にある川内原発の運転を止めない判断を下した。原子力規制委員会もこれを是認した。

 なぜ自信をもってそう判断できるのか。その根拠は。多くの人が知りたがったが、九電も規制委もどれだけ耳を貸しただろうか。

 原発の安全性に関し、電力業界は国民と対話する貴重な機会を逸したのかもしれない。

[日経新聞5月16日朝刊P.7]

 

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コメント
 
1. 2016年5月23日 20:09:16 : S7yh7G1r3g : Cbhx3YOBFbQ[1]


 福島原発事故から ボタンの掛け違い

 絶対安全で事故 メルトダウン は認めなかった

 放射線量の隠蔽で安全性の確保

 事故の終息で 被害地 被害者 補償の回避

 責任逃れの金儲けが 基本的人権 財産権で憲法無視

 立法府行政府が司法を無視  か 司法の腑抜け 尻尾振って財界と 行政府 にすり寄る

 ルール無視 どんどん中国に似てくる


2. 2016年5月24日 01:43:38 : ANXvDLH7ok : swib1SeKawg[3]
原発を推進したい新聞が一見公平を装って原発推進側の主張を述べているの図。

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