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いとおしいすべての命のため…「福島原発告訴団」女性団長の奮闘
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160522-00010000-jisin-soci
女性自身 5月22日(日)6時0分配信
’53年、福島県矢吹町で生まれた「福島原発告訴団」の団長、武藤類子さん(62)は現在、福島第一原子力発電所から約45キロ離れた福島県田村郡三春町に住んでいる。三春町は、樹齢千年を超える“三春の滝桜”が有名で、たくさんの観光客が訪れる風光明媚な城下町だ。
しかし、福島第一原子力発電所の事故により、三春町にも放射能は降り注いだ。
武藤さんは15年ほど前、約20年続けていた特別支援学校の教師を辞め、祖父から譲り受けた三春町の山を開墾。木造りの家を建て、そこで喫茶「燦(きらら)」を営みながら、自然と共生する暮らしをしてきた。ソーラーパネルを取り付け、一軒で使用する電気の半分は自給。木の実や山菜、ハチミツなどを採って食べ、井戸水を飲み、まきで火をおこし、自然の恵みを存分に享受する生活−−。
「でも、それらすべて放射能によって汚されてしまったんです。植物も虫も獣も、大地もすべてです」
そう話す武藤さん。原発事故後も25歳年下のパートナー佐藤真弥さん(37)と、愛犬のみちこと共に、この家に住んでいる。が、原発事故前のような自然の恵みを享受する暮らしは、もうできない。燦は、「どんぐりカレー」が売りだったが、どんぐりから放射能性セシウムが検出されたため、それも提供できなくなり店じまいした。
「『福島原発告訴団の団長、なんて言うと、どんなすごい闘士かと思っていたけど、普通のおばさんですね』なんて、よく言われるのよ」(武藤さん)
福島原発告訴団とは、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、被害を受けた住民1万4,716人で構成されている史上最大規模の告訴団。津波対策などを怠り、過酷事故に至らしめた東電や国の刑事責任を問うため、福島県内で30年近く脱原発活動を続けてきた「脱原発福島ネットワーク」が中心となり、全国から告訴人を募って、’12年3月「福島原発告訴団」を結成した。告訴人は、北海道から沖縄まで全国にいる。
告訴団の団長として日本全国を飛び回り、各地で頻繁に講演をしている武藤さんだが、人前で話すのは本当に苦手で、今でも自信がないという。
だが、「武藤さんには、多くの人をひきつける天性の魅力がある」と話すのは、武藤さんを告訴団の団長に推薦した、前いわき市議の佐藤和良さんだ。
25年前から佐藤さんは、武藤さんらとともに、東京電力に対する業務改善の交渉(通称・東電交渉)を月に1度続けてきた仲間の1人。佐藤さんは、親族の葬儀があった1回をのぞき、25年間休まず東電交渉に出席している。そんな佐藤さんが、武藤さんを告訴団の団長に推したのは、「人間だけじゃなく、動物や自然など、すべての命をいとおしむことができる人だから」だという。
「原発は、命より経済を優先してきた男性社会の象徴です。これからの世の中を変えるのは、命を第一に考える武藤さんのような女性じゃないでしょうか」(佐藤さん)
未曾有の原発事故から5年。過酷事故を引き起こした東電幹部が罪に問われないどころか、強制捜査すらされないという異常事態が続いていたが、告訴団の粘り強い追求の末、’15年7月、ようやく東電の元会長・勝俣恒久氏、元副社長の武黒一郎氏・武藤栄氏の3人が強制起訴され、いよいよ画期的な刑事裁判がスタートすることになった。
「この裁判は10年かかるといわれていて、まだまだ先は長いんですけど、ようやく起訴にこぎつけたのは、日本全国の人たちが、私たちの訴えに賛成してくれたおかげだと思っています」(武藤さん)
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