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事故対策の不備が指摘される川内原発。国民の不安をぬぐえるのか (c)朝日新聞社
災害に強い再生エネルギーの宝庫である九州に原発は必要なのか?〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160427-00000187-sasahi-soci
週刊朝日 2016年5月6−13日号
震度7の地震が2度起こり、余震も過去最多のペースで発生している熊本地震。あらためて思い起こされたのが、2011年3月の福島第一原発事故の悪夢だ。
現在、日本で唯一稼働中の川内原発(鹿児島県)は、地震発生後も運転を続けている。震源からの距離が90キロあることから、政府は「停止させる必要はない」と静観の構えだ。
一方、インターネットでは川内原発の稼働停止を求める署名活動が広がり、すでに約12万人の賛同者が集まった(4月23日現在)。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は言う。
「熊本地震では、高速道路や新幹線が寸断され、交通網に大きな影響が出た。仮に川内原発で地震による原発事故が起きた場合、避難計画は絵に描いたモチです。さらに、川内原発には福島第一原発事故で司令塔となった免震重要棟もなく、災害時の対策が万全ではありません。稼働停止が叫ばれるのは当然のことです」
さらに、今回の震源の延長線上にある四国の中央構造線断層帯には、伊方原発(愛媛県)もある。そこで、経済評論家の森永卓郎氏は、こんな提案をする。
「地震が川内原発や伊方原発の地域で起き、原発事故となれば周辺地域は壊滅状態になってしまう。川内原発と伊方原発は廃炉にすべきです。ただ、廃炉は経済的な負担が大きく、電力会社も簡単には納得しないでしょう。そこで、補正予算で廃炉作業の財政的な支援をすればいい。まずは被災者の不安を取り除くのが、一番の支援です」
だが、安倍政権は原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置づけ、再稼働を続ける姿勢を変えていない。政府は、30年度時点の電源構成として、総発電量に占める原発の割合を「20〜22%」にすることを目指している。これを達成するには、40年を超える老朽原発を稼働し、さらに原発の新設も必要となる。
ただ、今後も九州に原発が必要なのかは疑問だ。自然エネルギー財団の事業局長・大林ミカ氏は言う。
「自然の恵みが豊かな九州は、再生可能エネルギーの宝庫です。ここ数年で再エネの発電量も急速に増え、電力需要の少ない春と秋の昼間は、すでに全発電量の50%以上を再エネが占めている状況です」
また、再エネは災害にも強い。前出の飯田氏が言う。
「地震後のヒアリングでは、大きな被害を受けた南阿蘇村でも、ソーラーパネルと蓄電用バッテリーを持つ家庭は、電力を自給できていた。停電もなく、炊飯器のような電力をたくさん使う家電製品も使用できている。ソーラーパネルやバッテリーの価格は年々下がっていて、一般家庭でも手に入るようになっている。今後は、災害対策の観点からも、小規模分散型の発電を支援する政策が必要です」
高い潜在能力を持つ九州で、再エネ発電をさらに普及するには、どのような予算が必要なのか。
「現状では大手電力会社が送電線を管理しているので、どうしても原子力や火力などの既存の発電設備が優先的に運転されます。再エネは系統が不安定との批判がありますが、諸外国では太陽や風力で3〜4割発電する国が登場しています。既存の発電はベースロードどころかバックアップ。送電線を中立的に運営し、公正な競争を市場に導入すべきです」(前出の大林氏)
ちなみに、送電線をすべて買い取ると10兆円ほどかかるという。高い買い物だが、購入費用は送電料で回収できるので、再エネ普及を目的に、国が一気に買い取ることも一つの方法だ。(本誌取材班 鳴澤大、西岡千史、永野原梨香)
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