http://www.asyura2.com/16/genpatu45/msg/408.html
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原子力ムラは、東芝・ウェスチングハウス(WH)の第3世代の新型原子炉AP1000を
大幅な安全性向上により福島のような事故は起きないと主張し、原発輸出の主役に
据えているが、実際はどうだろうか?
「最新型原子力発電所『AP1000』」 (YouTube gigazine 2011/11/30)
https://www.youtube.com/watch?v=_rbFn8P74dw
このAP1000は、圧縮ガス、重力、自然循環力による静的(受動的)安全系を採用した改良型
加圧水型軽水炉である。
屋上に巨大な水槽を設置し、一次冷却水喪失のような重大事故がおきても、3日間は、
炉心に冷却水が注入され炉心損傷を防止できる。
また格納容器壁と外周建屋の間の自然通風路が空気が循環して格納容器を冷却するという。
(図は「東芝子会社、米国で新型原子炉の設計認証を取得 (ecool 2011/12/23)」より引用
http://www.ecool.jp/press/2011/12/toshiba11-1223.html)
しかし解説を読むと、安全性・信頼性の向上よりも、ポンプ、配管、ケーブルなどの部品の
大幅削減や建屋体積の削減によりコストダウンや工期短縮できることに重点が置かれている
印象が強く、とても安全性が飛躍的に向上したは思えない。
事故が起きれば何年間も注水冷却を行わなければならない。福島第一では未だに行なっている。
3日間だけ自動的に注水冷却したところで炉心溶融は防げない。
そもそも、こんな大きな水槽を屋上に乗せた原発が、地震に耐えられるだろうか。
以下は、元原子炉設計者のアーニー・ガンダーセン氏が2012年に来日したときの答弁である。
「アーニー・ガンダーセン氏 日本記者クラブ2012/2/20」
https://www.youtube.com/watch?v=-5AFQ1I6XoU
「アメリカは最近、発行いたしました認可というのは、AP1000と呼ばれるシステムなんですけども、
これは非常に面白いポイントがありまして、日本では絶対に使えないという種類の設計だと思います。
AP1000というのは巨大な水槽、水のタンクを屋上に置くという、そういう設計になっております。
全部で600万ポンドの重量になっていまして、(これをキロに換算しようとしたんですけど
うまくいかないんですけど)とにかく巨大な水タンクを屋上に置くというシステ ムになっておりまして、
日本のように地震のある国では、こんなデザインというのは有り得ないということだと思います。
ですから、アメリカでも認可が発行されましたのは、地震活動の低いジョージアというところに対して
発給されたんですが、カリフォルニアなんかでは決してこれは認可されることは無かったでしょうし、
また日本ではちょっと有り得ないシステムだろうと思っております」
600万ポンドは2720トン、実にトヨタ・プリウス1900台分の重量である。
こんな頭デッカチな原発は、とても地震の強い揺れには耐えられず、傾くか倒壊してしまうだろう。
さらにガンダーセン氏は別の問題点も挙げている。
「フクシマ原発事故のウェスティングハウス・東芝AP1000原発の設計への衝撃」
(YouTube Jonny Rayden 2011/11/10)
https://www.youtube.com/watch?v=iCbackK-s7Q
(1) 格納容器の最大耐圧は59ポンド、事故時の内圧は58.3ポンド、わずか0.7ポンドしか余裕がない。
(2) 福島事故では、原子炉の正常な停止後も、偶発的な臨界で発熱が続いたが、AP1000では
全くそれは考慮されていない。発熱で内圧が上がっても(1)で述べた通り全くマージンがない。
(3) 福島では冷却ポンプは津波で流され、緊急用ディーゼル発電機が動いても冷却不能だった。
AP1000ではそれは全く考慮されていない。
屋上の巨大水槽は、地震で大きく揺れ壊れる可能性が高いし、テロリストにも狙われやすい。
福島第一のように隣の原子炉が爆発したら、飛んできた破片で破れ冷却手段を失うかもしれない。
(4) 燃料プールは福島のものと同じで何の改善もされていない。NRC(米国原子力規制委員会)は
稼働中の他の原発の燃料プールは改良すべきと言いながら、AP1000に関しては従来のままで
承認するのはおかしい。
(5) 600万ポンドのタンクから水が落ちて冷却すると煙突効果が起きる。外気がはいりこみ、
放射性蒸気が格納容器の頂上から放出される。
隣の原子炉の爆発で、砂や泥が空気取入口を塞ぎ、冷却機能が失うかもしれない。
(6) 放射性物質は格納容器の外へは絶対に漏れないと言っているが、福島では3基とも
外界へ漏れ出し、3号機では爆轟も起きた。AP1000は耐圧の余裕がなく危ない。
隕石が衝突するぐらい稀であると彼らが主張した炉心溶融が、福島では3基続けて起き、
溶融燃料が格納容器外に漏れたのに、NRCは未だにそういったことが起きる可能性は
ゼロと言い張り、改善策を行なうようメーカーに指導しない。
ガンダーセン氏は、福島の教訓に学ばないNRCを繰り返し批判しているが、その通りである。
AP1000の前身であるAP600の開発が始まったは1985年、AP1000の最終設計承認を得たのは
2006年である。巨大で複雑な原発の設計は長い年月がかかるため、10年以上前の設計なのに
この業界では「最新鋭」なのである。
もちろん福島原発事故前の設計であるから、その教訓は全く活かされていない。
原発の存亡が問われるような大事故が起きたのだから、原子炉の設計を白紙に戻し、
根本から見直す必要があるが、そういった常識は原子力ムラには通用しない。
ほとんど設計変更なしで、NRCはAP1000にゴーサインを与えてしまった。信じられないことである。
事故の原因究明と対策に真剣に取り組まないから、いつまでたっても原発の安全性は
向上しないという見本である。
ほかにもAP1000はいくつもの重大な問題点がある。
トラブル多発の蒸気発生器についてはまともな改良をしていない。というより原理的にできない。
加圧水型の格納容器は、そうでなくても沸騰水型に比べて脆弱なのだが、コスト削減、
工期短縮のため、小型化され、コンクリート使用量が数分の1に減り、より弱くなった。
炉心溶融から格納容器爆発まであっという間であろう。飛行機が墜落したら一巻の終わりである。
溶融燃料の受け皿であるコア・キャッチャーもついていない。
要するに現在の加圧水型原発が抱えている問題は何一つ解決されていないのだ。
屋上に巨大な水槽を設置したAP1000は、いかにも新しく安全性が向上している印象を与えるが、
だまされてはいけない。
恐ろしいことに、中国はこのAP1000をベースにしてCAP1400という国産原子炉を開発している。
パクリ元がこの程度なのだから、その安全性は推して知るべしだろう。
AP1000とそのコピーが大事故・大爆発を起こすのも時間の問題である。
そのとき原子力ムラは、いや第4世代の新型原子炉なら安全です、とまた同じ言いわけをするのだろう。
結論。
AP1000は安全性が向上した、事故はもう起きないというのは真っ赤なウソである。
福島原発事故の教訓は何一つ活かされていないし、加圧水型原発の欠陥も改良されていない。
こんな欠陥原発を安全だと偽って世界に輸出するとはとんでもないことである。
まともな優良事業部門を売却し、オソマツなAP1000に社運を賭けた東芝は、そう長くはないだろう。
世のため人のため、一刻も早く東芝は倒産すべきだろう。
(関連情報)
「原発の安全性向上は絶対に不可能 -- その5つの理由」 (拙稿 2012/7/23)
http://www.asyura2.com/12/genpatu25/msg/793.html
「加圧水型原発が沸騰水型よりも安全というのはデタラメだ」 (拙稿 2015/1/30)
http://www.asyura2.com/14/genpatu41/msg/736.html
「広瀬隆氏講演 川内原発に警鐘 加圧水型はわずか22分でメルトダウンする (ダイヤモンド社サイト)」
(拙稿 2015/11/10)
http://www.asyura2.com/15/genpatu44/msg/301.html
「AP1000」 (ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/AP1000
「AP600及びAP1000 (02-08-03-04) 」 (ATOMICA)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-08-03-04
「米原発に「経済性」の壁:シェール革命・老朽化…採算厳しく 計画凍結・廃炉相次ぐ」
(阿修羅・あっしら 2013/8/7)
http://www.asyura2.com/13/genpatu32/msg/802.html
「新型炉ばかりの中国原発、安全確保に大きな不安」 (阿修羅・赤かぶ 2014/3/30)
http://www.asyura2.com/14/genpatu37/msg/235.html
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