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[大震災から5年]帰還住民5%の現実 福島原発事故後、初の全町避難解除
楢葉町、企業誘致に活路
東京電力福島第1原子力発電所事故で、全住民が避難した福島県の7つの自治体で初めて楢葉町の住民の帰還が始まった。昨年9月の避難指示解除から5カ月余り。約7400人いた住民のうち週4日以上町で暮らす人は430人ほどで、帰郷した人の割合は5%台にとどまる。帰還の意欲はなぜ低調なのか。希望はあるのだろうか。来春以降、避難指示解除を目指す他の自治体は、同町が再起の先駆けとなるのか注目している。(文中敬称略)
昨年9月、避難指示解除と同時に楢葉町の自宅に帰還した元公務員の男性(71)を取材した。その後、元気にしているだろうか。5カ月ぶりに訪ねると玄関の戸は固く閉ざされていた。
防犯パトロールなどに尽力していたが循環器系の持病が悪化。専門医の診察が必要で1月中旬、いわき市の仮設住宅に戻っていた。
男性には妻と3人の子、5人の孫がいる。孫は同市の小学校に通うため子世帯は町に帰れない。子はフルタイムの仕事に就き、妻は孫の世話で忙しい。帰還できたのは男性だけだった。
若い世代は仕事と子育て。おばあちゃんは働く娘らを支援。単身帰郷したおじいちゃんは体調を崩し仮設に逆戻り。この家族の例は町の苦境を言い尽くす。
避難先で生活確立
国は当初、原発事故避難者の帰還を目指した。が、結果的に移住に誘導する施策を打った。帰還困難区域の住民らが避難先で家を購入した場合、従来は事故前に所有していた不動産価格のみだった賠償を、新居と所有不動産の差額の最大75%にまで積み増したのだ。
これが避難者の住宅特需を喚起し、昨年の公示地価でいわき市郊外の宅地の上昇率は全国首位の17.1%に。追加賠償という人道的に正しい政策は、ミニバブルと被災地の帰還人口減少を招いた。住民回帰を願う自治体にとって国の政策は、経済学でいう「合成の誤謬(ごびゅう)」と映る。
復興庁が全町避難が続く大熊、富岡、浪江各町の全戸を対象にした調査で「町に戻らない」と答えた割合はそれぞれ63.5%、50.8%、48.0%。避難先で家を持つ割合は3割を超した。避難指示解除を目指す自治体の前途も多難だ。
国が復興の「1丁目1番地」という除染ゴミの中間貯蔵施設(双葉、大熊町)の用地買収が難航し被災自治体の田畑などに汚染土を詰め込んだ化学繊維の黒い袋が積み上げられている。
今月16日、いわき市で用地の地権者と環境省の交渉があった。地権者会会長の門馬幸治は「約束通り30年後に土地を返す担保を」と契約書に国の債務不履行時の違約金条項を明記するよう求めたが同省は難色を示す。住民帰還の障害である汚染土処分のボトルネック解消の道筋は見えない。
厳しい現実を踏まえ楢葉町は、企業誘致を核とした町づくりを目指す。
「今後3年が勝負」
常磐線・竜田駅東側に福島第1原発の廃炉関連企業が入居する事務所を整備する。1月末、大手住宅関連会社が事業者に決まった。同町新産業創造室の磐城恭は「造成が終わる11月までに数社の誘致を決めたい」。同地区には17年度開業のホテル建設も決定。100人規模の地元採用が見込まれるなど、好材料も兆す。
一方、商業施設は住民帰還が進まない現状から「採算を不安視し営業再開に二の足を踏んでいる」。廃炉技術研究などビジネス人口流入をにぎわい創出の起爆剤とし、住民帰還の呼び水とするシナリオだ。
財団法人「日本立地センター」が廃炉関連だけでなく幅広い業種に楢葉町への進出の可能性をアンケート調査(回答296社)したところ、「拠点の対象となる」「条件次第で対象になる」と答えた企業は26社(8.8%)あった。
一方、「興味はあるが参入方法が分からない」が30社(10.1%)。同センター専務理事の徳増秀博は「立地優遇策などをPRすることで廃炉や復興事業に参入する企業が増える可能性がある」と分析する。
「今後3年が勝負」と町幹部は言う。再生の先陣を切る楢葉の帰還率が5割以下なら「原発被災自治体の広域合併が現実味を帯びる」と危機感を抱く。
和歌山章彦が担当しました。
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移住の実態明確に/戻った高齢者に支えを 元日本原電理事、原発事故被災者 北村俊郎氏
東京電力福島第1原発事故で被災した自治体再生の課題は何か。日本原子力発電理事(社長室長)を退任後、自宅のある福島県富岡町で「3.11」に遭遇し、今なお県内で避難生活を続ける北村俊郎氏に原発の専門家として、また被災者の視点で語ってもらった。
――福島県全体ではなお10万人弱が避難生活を余儀なくされています。
「本当にそうでしょうか。いわき市などに避難した人の多くが避難先に家を建て子供たちは近くの学校に通っています。彼らは『元避難者』とみるべきで、特に帰還困難区域では本当の避難者は半分程度でしょう」
「賠償金で家を新築しても仮設住宅などを借り続け住民票もそのままにしている人が多い。県や自治体は正確な状況を把握できていない。避難なのか、移住なのか。実態を明確にし真に必要な被災者支援、復興策を考える時期に来ている」
――昨秋、避難指示が解除された楢葉町では住民の帰還が進んでいません。
「直ちにやるべきは戻ってくれた高齢者を全力で支えること。集落の隣人はほとんどいない。商業施設や総合病院も近くにないのだから町は毎日1食は無料の弁当を宅配するなどして暮らしを見守るべきだ」
「高齢者支援を車が運転できる帰還住民に依頼すればいい。住民同士が助け合い古里の復興に貢献してもらうことは生きがいにつながる。そうなれば迷っている人も帰還するだろう」
――中間貯蔵施設の建設が進まず、各地に除染ゴミが山積みされています。
「国は地元2町に建設容認の苦渋の決断を迫りながら地権者の居場所さえ十分把握していない。30年後の最終処分の道筋も不明だ。放射性廃棄物処分場を確保せずに原発を次々と建設したのと同じ問題先送りだ」
――国や東京電力に求められることは何ですか。
「停止中の福島第2原発4基を今後どうするのか。福島県知事は廃炉を要請したが、東電は明確な回答を避けている。国もエネルギー政策全体との関係を明らかにする必要がある。もし、再稼働に向かうのなら帰還しようとする住民にとって大きな懸念材料になる」
「半面、第2原発が再稼働すれば地元への雇用や交付金など経済効果は抜群だ。運転保守要員が町に戻れば復興の柱になるとの見方もある。東電は第2原発の設備全体の現状や、新安全基準で改修・再稼働するのに必要な費用、期間などの情報を公開し、県民の疑問や不安にこたえるべきだ」
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双葉町、止まった時間 住民の今 ルポ
福島県浜通りに雪が降り積もった1月30日。全町避難が続く双葉町の住民で、避難先の茨城県から一時帰宅した大沼勇治(39)と妻が防護服に身を包み、墓前に供花していた。
一時帰宅の許可を得て双葉町で墓参する避難住民
大沼夫妻の2人の子供は震災後、避難先で生まれた。「彼らが大人になったとき古里の映像を見せ、原発事故で何が起きたのかを伝えたい」。雪道に足跡ひとつないかつての目抜き通りの風景をビデオに収めた。
公共施設の時計の針は東日本大震災が起きた午後2時46分で止まったまま。全壊した民家には飼い犬とみられる動物の頭の骨が転がっていた。「時が止まったまま」は比喩でなく、双葉町の現実だ。
いわき市中心部から20キロほど南西の同市南台に双葉町からの避難者が身を寄せる仮設住宅がある。1月9日、同市のプレハブ校舎で学ぶ双葉町の小学5、6年生が、仮設の一角で町の復興をテーマにした自由研究の成果を発表した。
面積の96%が放射線量の高い帰還困難区域であることを学んだ6年生の男子児童が「将来、町の4%にしか帰ることができないかもしれないと聞き、とても悲しくなりました。古里がぼくたちからどんどん離れていく」と話すと、目頭をおさえる大人もいた。
昨夏、この仮設の独り暮らしの70代の女性が亡くなっているのが見つかった。警察は周囲の状況から自殺と判断した。仮設に常駐する町の社会福祉協議会の職員は「茶話会などの催しにもよく顔を出していたのに……。悩みを受け止められなかった」と悔やむ。
同町の復興計画は、比較的放射線量の低い避難指示解除準備区域に第1原発の廃炉や除染、インフラ復旧の拠点を整備するメドを「2020年〜25年」とした。復興の入り口の時期も明示できず、住民の帰還はさらに遅れる。
いわき市に自宅を建て仮設住宅を退去した70代の男性は「生きているうちには戻れない。高齢者にとって双葉町は帰還困難ではなく『不可能区域』だ」と話す。
双葉町は除染ゴミの中間貯蔵施設の建設を受け入れた見返りに、政府から389億円の自由度の高い交付金を得た。男性は「復興のためやむを得ないが双葉町に痛みが集中している」と感じる。町は来年度から町民1人当たり年10万円を配る方針。先の見えない避難生活の支援が目的だ。
[日経新聞2月21日朝刊P.9]
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