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今回は、私の中国留学時代の思い出話にお付き合い願えれば幸いだ。もう20年あまり前のことになるだろうか。このような体験をした人も珍しいと思うのでご紹介する。資料写真。
<コラム>「3日後に必ず立ち去ると約束できるか?」、中国の国境地帯で警察官に連行された結果…
http://www.recordchina.co.jp/a150818.html
2016年9月24日(土) 13時40分
今回は、私の中国留学時代の思い出話にお付き合い願えれば幸いだ。もう20年あまり前のことになるだろうか。このような体験をした人も珍しいと思うのでご紹介する。
本コラム欄のプロフィールにも書いているが、私は中国の民族音楽を勉強したいと思って留学した。民族音楽と言っても実技ではなく理論だ。いろいろな先生方、その他の周囲の人に、実によくしてもらった。私が中国の現状についていろいろ批判をしても、中国を本質的に嫌いにはなれないのは、当時の経験があるからだと思う。
話を本筋に戻そう。世話になっている先生の1人に、ある少数民族地域の国境地帯の村に、中国ではもはや存在しないと思われていた伝承音楽の奏者が1人だけ残っていると教えていただいた。こういう時には、とにかく現地に足を運ぶしかない。
辺境地域などでは、外国人が立ち入り禁止の場所がある。まずは北京の公安(警察)に行き、立ち入り可能かどうかを尋ねた。某市の名を告げると「大丈夫です。外国人にも開放されています」と教えてくれた。そこで、現地に向かうことにした。
「某市」などと持って回った言い方をしているのは、もう「時効」だとは思うが、現地で接触した人に迷惑をかけたくないからだ。読み進めていただければ、ご理解いただけると思う。
列車やバスを乗り継いで、某市についた。そこからさらに、山道をバスで2時間ほども乗っただろうか。やっとのことで目的地の村に到着した。小さな宿があったので、そこに停まることにした。その晩はよかった。一晩明けた早朝、警察官2人が私の部屋にやってきた。すぐに署まで来いという。従わざるをえなかった。
署につき、警察官は私に言った。「ここは、外国人立ち入り禁止だ」と。私は北京の警察で立ち入り可と確認したと言うと「市街地はOK。しかし、郊外地区は禁止」と言う。「北京の担当者は、まさか郊外まで出るとは思わなかっただろう。君には気の毒と思うが、規則なのだから仕方ない」とも付け加えた。
中国では宿泊の際、中国人ならば警察の発行する身分証、外国人旅行者ならパスポート、長期滞在者なら居留証を提示せねばならない。宿泊施設側は、控えを警察に提出する。警察官は、私が居留証を提示したことを知り、急いでやってきたに違いなかった。
警察官2人は続けて、私にやってきた目的を尋ねた。私はありのままに説明した。少数民族の貴重な音楽伝承があると聞き、どうしても自分の耳で聞きたかったと話した。すると警察官2人が顔を見合わせた。「このまま待っていてくれ」と言って、部屋のすみにいって何やら相談している。
しばらくして戻ってきた。「相談したいことがある」と言い出した。何かと思えば「3日後に、必ずここを立ち去るかどうか、約束できるか」と言う。さらに聞くと、「3日後の日付で、日本人がここにやってきたが、立ち入り禁止と告げたので、そのまま立ち去ったとの書類を作る」と言ってくれた。しかも、私が探していた伝承者を紹介してくれるという。
警察官はさらに話した。その村が外国人立ち入りを実施しているのは、かつてスパイの逃走経路になっていたからで、すでにその心配はほとんどないし、私がスパイでないことは、学生証も提示しており明らかだ。さらに彼らは「本当は、日本人がこんなところまできて、われわれの伝統文化を知ろうとしてくれたことは、実にうれしいんだ」などと言い出した。
最初に警察署についた時と、部屋の空気は一変していた。その時に勤務していたのは、私の「取り調べ」を担当した2人だけだったらしい。
警察官らは私に、退去を要求したことで怒ってはいないかなどと尋ねた。私はもちろん「怒っているわけがありません。あなたたちは、自分の仕事をしただけなのですから」と答えた。
すると2人は「じゃあ、オレたちは友達だな」と言い出した。そして続けて「友達になったのだから、飲もう」と言い、どこからか酒瓶を持ってきた。中国によくある、「白酒(バイヂウ)」と呼ばれる、度数の強い蒸留酒だ。警察署で朝から、酒盛りが始まった。
結局は、昼ごろまで飲んでしまった。その日の午後は、宿でひっくり返っているしかなかった。伝承者を取材できたのは翌日。その次の日の朝のバスで、引き返すことになった。警察官2人が「翌日」ではなく、「3日後に引き返してくれるか」と言い出した理由がわかった。
もうずいぶん前なので、記憶にずいぶん違いがあるかもしれないが、私が覚えているのはこんなところだ。中国ではほかにも、警察絡みや酒絡みで妙な体験をしたことがある。ご要望があれば、いずれまたご紹介しようと思う。(9月24日寄稿)
■筆者プロフィール:如月隼人
日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。
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