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中国 鉄鋼業、半分はゾンビ
中国の鉄鋼業は半分がゾンビ企業――。中国の研究機関が最近、こんな衝撃的な調査結果を発表した。利益が出ないのに生き残っているゾンビ企業は中国経済の「病根」で、鉄鋼は過剰設備が最も深刻な分野。問題の先送りはいよいよ許されなくなってきた。
調査は、中国人民大学国家発展戦略研究院が7月下旬に公表した。製造業に占めるゾンビ企業の比率は2000年に30%あったがその後低下し、05〜13年は7.5%程度で推移した。報告書は「ゾンビ企業の問題は徐々に和らいでいる」と説明している。
2000年に経営内容が悪かったのは、1997年のアジア通貨危機の後遺症とみられる。01年の世界貿易機関(WTO)加盟を機に事態は好転したが、足元は出口のみえない経済成長の鈍化が続き、「問題は和らいでいる」との説明はいかにも楽観的にみえる。
もっとも、中国の公式文書が「全体として良好」などと肯定的な内容から説き起こし、続いて核心部分へと切り込むことはよくある。肝心なのはこの先だ。
「13年の上場企業のデータを利用し、我々は発見した」。そう前置きしたうえで明らかにした業種別のゾンビ企業の比率は鉄鋼が51.4%で、不動産が44.5%。いずれも中国の苦境を象徴する業種だ。およそ2社に1社が存続に無理があるというデータを前に「問題は和らいでいる」という先の表現はむなしく響く。
ゾンビ企業は経済発展が遅れた西南や西北、東北地域に多い。民間企業より国有企業がはるかに多く、古い企業に目立つ。
「病状」が分かれば、処方箋もみえてくる。問題の本質はゾンビ企業の効率が低く、先行きの展望がないにもかかわらず、淘汰されない点にある。報告書が真っ先に挙げたのが、政府の干渉を減らすことだ。地方政府の圧力で、銀行がゾンビ企業に融資することを問題視した。
国有企業はただ大きくしても意味がなく、質を高める必要があることも訴えた。関連して、政治・社会的な役割を担う国有企業を限定することも求めた。
穏当な書き出しで始まる報告には、非効率な国有企業が幅をきかす現状への批判が込められているのは明らかだ。過剰生産能力の解消とゾンビ企業の淘汰は、習近平国家主席が掲げる重要課題。つまり政権の意向に沿っているわけだが、病根をえぐった意義はある。
習氏は反腐敗を掲げ政敵を排除してきた。改革の旗を振り、主導権を握るのは権力闘争の常とう手段。「ゾンビ退治」は習氏の手法に合致するようにみえるが、一気に進めれば雇用不安などで社会を動揺させる。
中国経済は不透明で不公平かつ非効率な仕組みを解消できないまま、あまりにも巨大になった。その真ん中にゾンビ企業がある。「鉄鋼企業の半分はゾンビ」という目のくらむような現実に、政権はどう対処するのか。社会不安になるのを防ぎながら経済の構造を立て直すという難題が、重くのしかかっている。
(編集委員 吉田忠則)
[日経新聞8月21日朝刊P.11]
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