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天安門広場に掲げられている毛沢東の肖像画(資料写真)
毛沢東と習近平を一緒にするのは間違いだ 権力の集中は官僚システム修正のため
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47597
2016.8.17 金刻羽 JBpress
(北京より)
世界の多くは、中国の指導者・習近平を、懸念を抱いて眺めている。習近平が中央集権化を再び始めているというためだけではない。彼が行う急進的な反汚職キャンペーンが、政治的粛清のカモフラージュだと見る者は多い。
このように見る論者は、「習近平は個人崇拝のカルトを築いているのだ。それは、毛沢東の周りで文化大革命を引き起こした者たちのカルトと同じようなものだ」と憂慮する。
しかし実際のところ、習近平は全くそんな邪悪なものではない。
確かに、習近平がある程度権力を蓄えているというのは事実だ。しかし彼の動機は、中国を(中国政府も、中国経済も)強くするための必要性に駆られてのものだ。その目的を達成するために彼は、少しばかり制御不能になった官僚システムを元に戻さねばならない。
* * *
この30年の間、中国の権力機構は大幅に分権的になった。地方公共団体は、実質的な自治権を徐々に多く与えられるようになり、外国投資を誘致し、GDP成長を誘発させるといった改革を実験してきた。さらに地方公共団体は、土地・財政・エネルギー・原料物質といった資源に対し、また地方インフラに対し、直接的なコントロール権を与えられた。結果として、2000年から2014年にわたって、地方政府の支出が公費全体の71%を占めることになった。これは世界最大の連邦国家と比べてもかなり大きい。例えば、アメリカの地方の支出が公費に占める割合は46%だ。
地方分権は、地方の間での競争を促進して全体的な経済成長を誘発しようという目的で行われていた。地方政党の権力者たちは、地方政府の経済実績によって彼らの出世街道が決まるということを知っていた。そして、彼らが経済成長を促進するために熱心に動いたことによって、中国が世界第2位の経済に(測定の仕方にとっては世界最大の経済に)のし上がっていくことが可能になった。そして同時に、ポスト毛沢東時代の与党である中国共産党の正当性も確かになった。
しかし、地方分権にもマイナス面はある。地方分権によって相当の無駄が出た。例えば地方政府には多額の負債ができた。さらに、大がかりな政治腐敗を引き起こした。地方官吏は事業者に、税金猶予や金利の安いクレジット、市場価格より安い土地といったものを与える「特別な取引」をしていた。
規制が厳しく金融市場が未発達な国では、民間の企業家は事業を始めるにあたって高い参入障壁に直面する。民間企業が違法取引によってしか求める資源や市場に行き着くことができないのならば、彼らは喜んで違法取引に関わることだろう。彼らは現金その他の報酬を、ルールを曲げて私腹を肥やす官吏たちに払うことになるだろう。
1990年代には、こうしたお膳立ての上で、何十万もの成長促進企業が市場に参入することができた。経済成長が第一優先の時代においては、経済成長を促す汚職は黙認され、多くの者が軽々しく目をつぶってきた。
しかし汚職は制御不能になり、今や中国の安定性も、共産党の正当性も脅かしている。ガバナンスのゆるい30年を経て、地方当局の中には、彼らの違法な権益や経済的利益を守るために手を結ぼうと派閥を組む者も現れた。彼らの行った公費着服や横領は天文学的な金額に上るが、それは、彼らが政界の階段を上るために助け合って 既得権益を守る共犯者なくては不可能であっただろう。
こういった密かな政治ネットワークは実質的に頑強なものとなり、たくさんの官吏たちが中央政府に対抗するようになっていた。彼らはポストや特権を守ることで、彼らの経済的な利益を守ろうとした。中央政府は、地方の統治者たちを制御しない限り、改革計画に別れを告げることはできなかっただろう。
そういった経緯の中、習近平は、汚職に対して目をつぶることをやめた。彼は地方政府の権力を中央当局の手中に収めた。そして彼は、広範囲に及ぶ反汚職キャンペーンを始めたのだ。
* * *
この2年の間、中国全土の地方官吏は、下級の省課長たちから上層部にいる地方のドンに至るまで、次々に投獄されてきた。ときには地域特有の考慮もされた。まずは周辺的な地方政府の官吏を逮捕して、その次に中心的な地方政府の官吏を逮捕するといったものだ。
政敵と見られるたくさんの数の上級官吏(及び軍人たち)を一斉検挙するというのは、粛清のようにも見えるかもしれない。しかし、実のところは、訴追して投獄された者たちはすべて、確かな証拠に裏付けられて有罪となっている。中国の司法制度自体はまだ不完全であるとはいえ、今日の中国ではもはや、毛沢東時代のように、政治的理由のみで官吏たちを投獄することはできない。
習近平の中国の官僚制度を制御しようとする試みは、弱まることなく続く。短期的には経済活動にも影響をきたすかもしれない。地方政府が注目を避けるために意思決定を遅らせるからだ。
しかし、いったん制度が浄化されてしまえば、中国は、持続可能で安定的な経済成長を達成するためにより強い位置につけることができるだろう。
文化大革命2.0を恐れる者たちは、中国はもう50年前の中国とは違うということを理解しなければならない。独裁政治の土壌と個人崇拝のカルトは、開放と経済成長の高まった30年で破壊されてきた。習近平以上にこの事実を理解している者はいない。
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