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infinity>ライフ>定年 [定年バックパッカー海外放浪記]
中国人は損得勘定で行動する
公徳心を求めるのは間違い
GW特別編 完全アウェイ、艱難辛苦の中国雲南省の旅(第4回)
2016年05月05日(木)高野凌 (定年バックパッカー)
広州ー昆明ー大理ー麗江ー香格里拉ー欽徳ー梅里雪山ー西双版納ー建水
(2016.2.4-3.17 42days 総費用12万4000円)
麗江古城の大広場にて
2月13日 麗江古城は黒龍潭から湧き出る清流が街の中を流れる美しい古都である。大理からの長距離バスから降り青年旅舎(ユースホステル)に向かう。途上の大広場は早春の陽光を楽しみながら散策する都会からの中国人観光客で溢れかえっている。
麗江古城に清冽な湧き水を供給する黒龍潭、遠くに玉龍雪山を望む
石畳で綺麗に舗装された観光名所となっている大広場のベンチで休んでいたら、赤いコートを着てハイヒールを履いた都会風の35歳くらいの気取った雰囲気の観光客の女性が通りかかった。彼女は突然私の目の前で吸っていたタバコを綺麗に清掃された石畳に火も消さずにそのままポイ捨てした。
数メートル先には煙草の吸殻専用のごみ箱が設置されているにも関わらず平気でポイ捨てする女の行為に呆気にとられた。その瞬間近くで石畳を掃除していた地元の清掃員の中年女性が彼女を呼び止め吸殻をゴミ箱に捨てるよう注意した。都会の女は清掃員のおばさんの注意など歯牙にもかけず完全無視で通り過ぎようとした。
おばさんは逃すまいと女の前に立ちはだかった。女は彼女を見ると「それはあんたの仕事でしょ!!」と不快感をあらわにして叱責するように言い放った。
麗江古城の大広場のシンボルの水車
2、3回ほど2人の間で言葉の応酬があったが女は清掃員の手を振り払って面罵しながら足早に歩き去った。10メートルくらい離れたところに保安員(警備員)がおり、清掃員のおばさんは応援を求めるように彼を見たが警備員は二人の諍いを無関心そうに眺めているだけであった。結局取り残された清掃員のおばさんはぶつぶつ独り言を言いながら吸殻をゴミ箱に入れた。
黒龍潭の太鼓橋の上で婚礼写真撮影中の成金風オジサンと年下娘のカップル
中国社会では町内毎に公園や道などの公共の場所を掃除することを生業としている専門の清掃員がいる。概して中高年の貧しい階層の男女である。他方で町内の治安秩序の維持のために保安員が存在する。ごみのポイ捨ても条例で禁止されており本来であれば保安員が制止するはずである。中国社会では煙草に限らずゴミのポイ捨てはふつうであり、保安員がいようがいまいが人々はポイ捨てする。保安員も些細なことには関わらないようである。
束河古鎮の呆れた人々
束河古鎮の入口に聳える大門。映画ロケ地として有名になってから観光名所らしく建設されたもの
2月14日 高倉健主演の日中共同制作映画「単騎千里を走る」のロケ地となった束河古鎮を訪問。高倉健主演の「君よ憤怒の河を渡れ」は中国で累計8億人の観客を動員して空前の大ヒットとなったと聞いたことがある。それで日中共同制作の運びとなったという。ちなみに中国人で40歳以上の人はほぼ全員高倉健(ガオツンジェン)を知っており共演の中野良子(ジュンイエリャンズ)も知られている。
皇帝に献上された名水が湧き出る九鼎龍潭
束河古鎮には皇帝に献上された名水が湧き出る池があり観光名所となっている。それだけに池の周囲は柵で囲われておりゴミ捨て禁止の注意書きが至る所に貼られている。私が池のほとりの東屋で清らかな湧き水を眺めていたら、いきなり後ろから空き瓶のペットボトルが飛んできて池の真ん中に落下した。振り向くと小学校3年くらいの男児が次のペットボトルを投げようとしていた。男児は他の数人の子供達に力自慢を見せつけるように大きなモーションで力いっぱいペットボトルを池の中央に向かって投げ込んだ。私が呆気に取られているとさらに3本目のペットボトルに手を伸ばした。
近くには子供たちの保護者と思しき老婆が5、6人子供たちの遊びを見守っていたが誰も注意をしようとしない。私は思い余って男児に走り寄って男児の手を掴んでペットボトルの投げ捨てを制止した。男児は私の顔を睨み付けてから老婆たちに向かって何か叫んだ。老婆たちは慌てて駆け付けてきて私に向かって男児の手を放すよう口々に大声で喚いている。
九鼎龍潭の湧き水を泳ぐ錦鯉の稚魚。これを狙って男児はペットボトルを投げ込んだ。
私が男児の手を放すと代表の老婆が「子供に乱暴するのは許せない」というような趣旨のことを言って私を非難している。私は「男児がペットボトルを投げ捨てるのを止めようとしただけだ」と身振り手振りを交えて説明。そしてゴミのポイ捨ては禁止されていると注意書きを指しながら言った。老婆たちはいっせいに「小さな子供に罪はない」「子供が楽しく遊んでいるのがなぜ悪い?」「外国人が勝手に小さな子供をイジメるとは何事か」などと激しく私を非難し始めた。そして「ペットボトルなんかは清掃員が掃除するから何の問題もない」「外国人が余計な口出しをするな」と興奮した口調で喚いた。私はほうほうの体で逃げ出すしかなかった。
香格里拉(シャングリラ)への長く不快な道のり
2月23日 麗江から香格里拉までは長距離バスで4時間ほどである。沿道の山々を眺めながらの爽快なバス移動になるはずであった。しかし麗江バスターミナルを出発してから15分も経たないうちに不快なバス旅になってしまった。車内で初老の大人しそうな男が先ず煙草を吸い始めた。それからは車内禁煙表示を無視してそこかしこで喫煙が。
たちまち車内はタバコの煙で充満。たまりかねて私が注意しても完全無視、吸い終わるまでタバコを消さないのである。何人かに注意しても無視されるので根負けした。私が注意したときの彼らの表情からは“おかしな外国人がわけのわからないことを言っている”と読み取れた。車内喫煙が悪いことであるという認識は全くないのである。また他の乗客も車内喫煙を当然のように黙認しているのである。
麗江からバスで一時間半。石鼓にある長江源流金沙江の名勝「長江第一湾」
香格里拉で語り合った中国民衆の公徳心
麗江のユースホステルの2段ベッドで山西省から来た井戸掘り技術者の青年
2月27日 香格里拉のゲストハウスで香港人の学生と相部屋となった。久しぶりに英語で心置きなく文明人と会話をして爽快であった。彼に私が見聞きした中国人の煙草のポイ捨て、ゴミのポイ捨て、禁煙指定の公共の場所での無遠慮な喫煙など公徳心のなさを鬱憤晴らしに批判したところ、「それは中国の現実であり当然です。中国人に公徳心を求めるのはそもそも間違いです。中国人にとっては自分自身の損得勘定が行動規範なのです」とのコメント。
白鶏寺(海抜3500m)からの香格里拉の町の眺望
さらに「公共空間を清潔に保つために煙草の吸殻やゴミをわざわざゴミ箱に捨てに行ったり、公共の場所で喫煙を我慢しても金銭的に何の得にもなりません。逆にポイ捨てしたり車内喫煙したら罰金を科せられるということが明確になれば大衆は規則を守ろうとするでしょう。しかし現実には警官も保安員も公共施設の管理人も規則違反者を摘発して処罰しようとしない。それは彼らの上司、即ち共産党の末端組織がゴミや吸殻のポイ捨てを真剣に取り締まる意欲がないからでしょう」と続けた。
私が「なぜ民衆に直接接している共産党の末端組織が条例違反者を黙認しているのですか」と問うと「共産党トップがゴミ問題や禁煙対策に関しては本気でやる気がないから、下部組織の党員さらには現場の人間もやる気がないのでしょう。共産党トップは長年にわたり文明精神(公徳心)向上を唱えていますがそれは単に形式的なお題目です。内政面では社会秩序維持・経済成長という支配者にとり政権維持に関わる切実な問題が最優先事項ですから」との回答。
香格里拉の独克宗古城(旧市街)の街角のチベット仏教の仏塔
香格里拉旧市街の中心、大亀山公園の巨大マニ車。全員で力を合わせてマニ車を押す
私は彼の分析に納得した。私の経験では中国共産党は過去30年文明精神(公徳心)向上を目標としてきた。しかし共産党による継続的な公徳心向上のキャンペーンにも関わらず草の根レベルではほとんど効果が上がっていないように思われる。シンガポールのように強権を以って条例に基づき取り締まりを強化すれば簡単に効果が上がるはずであるが上層部が本気でなければ誰も動かないであろう。中国は法治主義ではなく人治主義国家であるといわれるがその通りである。
共産党指導部は大衆にゴミやタバコのポイ捨てを厳格に取り締まれば拡大する経済格差や官僚の汚職などで鬱積している大衆の不満に火をつけると懸念しているのではないか。共産党指導部の衆愚政策の一環としてポイ捨てを意図的に放置していると推測するのは考えすぎであろうか。
⇒第5回に続く
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6609
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