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[エコノフォーカス]中国過剰債務 膨らむリスク
日本のバブル期並み水準
中国の企業や個人が抱える過剰債務が深刻さを増している。国際決済銀行(BIS)によると、国内総生産(GDP)の2倍を超え、バブル崩壊後の日本に迫る勢いだ。リーマン・ショック後の大規模な景気対策で設備や不動産への投資が膨らんだ。債務圧縮が課題だが、急ぎ過ぎると需要が冷え込み、対中輸出の悪化や市場の動揺を通じ、日本の景気も足を引っ張られかねない。(川手伊織)
財政出動が契機
16日に閉幕した中国の全国人民代表大会。李克強首相は「新経済の発展を加速させる」と表明し、鉄鋼や石炭の過剰設備の解消などを明言した。中国の過剰債務は2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも取り上げられるなど、世界経済のリスクとの認識が広がっている。
BISによると、中国の金融機関を除いた民間債務は2015年9月末時点で21.5兆ドル(2578兆円)で、GDP比で205%に高まった。日本の民間債務はバブル末期の1989年9月末に200%を超え、95年12月末には221%まで跳ね上がった。中国も日本のバブル末期から崩壊後の水準に迫る。
中国の民間債務残高はリーマン直後の08年12月末から4倍に急増した。中国が景気対策として打ち出した4兆元(当時のレートで約57兆円)の財政出動と金融緩和を背景に、中国企業は借り入れを増やして投資を拡大。粗鋼生産では世界の半分を占めるまでになった。だが生産調整が進まず、過剰生産で海外にデフレ圧力を広げている。
民間債務のうち、企業が15年9月末で17.4兆ドルと8割を占める。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は「負債比率が高い金属、資源、不動産、建材などの債務不履行に注意すべきだ」と警鐘を鳴らす。家計も住宅ローンの増加でリーマン当時の0.8兆ドルから4兆ドルに急拡大している。
バブル後の日本は過剰債務に苦しみ、貸し出しを増やした銀行の経営が揺らいだ。貸し渋りや貸し剥がしによる企業倒産も急増し、1990年代後半の金融危機を誘発。債務圧縮が一段落するのに約10年を要した。
過剰債務に苦しんだのは日本に限らない。低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の拡大をきっかけにリーマン・ショックに見舞われた米国では08年9月末に民間債務が169%とピークに達し、債務圧縮に約4年かかった。
景気にブレーキ
今後、中国の企業や個人が債務の返済を優先させれば、消費や投資に回るお金が減り、景気にブレーキがかかる。日本にとって中国は米国に次ぐ主要輸出先。すでに15年の対中輸出額は建設機械などが不調で前年比1%減になり、輸出額全体に占める比率も17.5%と08年(16.0%)以来の低水準だった。債務圧縮で中国の需要がさらに縮むと、対中輸出は一段と減る可能性が高い。
バブル後の日本と同様に過剰債務の処理に手間取れば、経済がデフレに陥る危険性もある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩シニアエコノミストは「デフレで中国の金融システムが不安定になり、日米欧に飛び火するリスクもある」と警告する。市場が債務問題を意識すれば、年初以降の世界的な市場動揺が再び深刻になる可能性も否めない。
為替の変動を通じて急増する訪日観光客の動向にも影響が及ぶ。BISによると、海外の中国向け与信残高は15年9月末時点で1.1兆ドル。今後、資本の流出や海外からの借入金返済の動きが強まれば、人民元安が加速しかねない。
第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「元安の進行は訪日客の消費にも影を落とす」とみる。SMBC日興証券は元が10%下落すると、訪日客の消費は年換算で1491億円減ると試算している。
[日経新聞3月21日朝刊P.3]
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