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[Asia300]香港・長江和記実業、「脱・中国」戦略に逆風
英携帯買収、当局「待った」
香港を代表する大富豪、李嘉誠主席が率いる複合企業、長江和記実業(CKハチソンホールディングス)の経営戦略に向かい風が吹いている。中国経済の減速を見越して中国・香港で資産売却を進める一方、欧州でM&A(合併・買収)を加速してきたが、英国での携帯電話会社買収に規制当局が待ったをかけた。中国国内からも資本流出をけん制する声がくすぶり、「脱中国」戦略は足踏みを迫られている。
李嘉誠氏がメディアの前に姿を現す年1回の恒例行事である17日夕の決算記者会見。個人資産が約3兆円に上る「投資の達人」の肉声を聞こうと、CKハチソンの本社には今年も100人近い記者やカメラマンが詰めかけた。
「全世界を見回しても英国での事業は非常にうまくいっている。英国人が自分の利益を考えるなら、欧州連合(EU)から脱退する確率も小さいだろう」
グループ再編後初となるCKハチソンの2015年12月期決算で稼ぎ頭に浮上したのは欧州だ。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の地域別内訳をみると欧州が53%と過半を占め、中国(13%)や香港(6%)を大きく上回った。
だが先行きには不透明感も漂う。
CKハチソンは昨年1月、英携帯電話2位のO2UKを最大102億5000万ポンド(約1兆6400億円)でスペインの通信大手テレフォニカから買収する計画を発表した。自社の傘下で同4位のスリーUKと統合して40%超のシェアを握り、顧客獲得や料金設定で有利に立つ狙いだった。CKハチソンはイタリアでもロシアの通信大手、ビンペルコムと携帯電話事業を経営統合することで合意した。
欧州連合(EU)の規制当局の承認を待っている段階だが、ここに来て当局からは「英国の携帯電話会社が4社から3社に減れば競争を阻害し、通信料金の値上げなど消費者に不利益をもたらしかねない」との懸念が漏れる。
慌てたCKハチソンは2月上旬、O2UKの買収を完了した後も、5年間は料金を値上げしないと発表した。今後5年間で50億ポンドを英国内に投資するほか、競合相手に通信網を開放するなど、消費者利益の向上や通信サービスの改善に努めると約束した。
規制当局は4月にも判断を示すとみられているが、英国での合併にゴーサインが出るかは不確定要素が多い。仮に合併が承認される場合も大幅な譲歩を迫られるとの見方が強く、巨額の投資に見合う収益力向上を実現できるかどうかも不明だ。
「Asia300」は中国・香港、韓国、台湾、インド、東南アジアの上場企業から、時価総額や成長性などに基づき選びました。
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中国は資本流出を批判
「中国本土には1000億元(約1兆7000億円)以上の不動産を持っている。北京の東方広場(複合商業施設)も絶対に売らない」
李氏は記者会見で、中国から資本を撤退しないと強調した。
昨年9月の長江基建と電能実業の合併計画発表直後、中国国営メディアは李嘉誠氏を批判するキャンペーンを突然展開した。中国株バブルの崩壊や人民元切り下げで市場に混乱が広がるなか、「香港の超人」として中国国内からも尊敬を集めてきた李氏の資本撤退観測が中国経済への不信を増幅し、海外への資本逃避を加速させかねないとの懸念があったとみられる。
「事実無根」との李氏の反論を受けて、バッシングはいったんはやんだ。だが、かつて最高実力者のケ小平氏や江沢民・元国家主席ら中国共産党の歴代トップと親密な関係を誇った李氏も、現在の習近平国家主席とはそれほど近くないとの見方は強い。中国政府に協力的な香港の資本家の代表とされてきた李氏も中国国内の世論の風向きに気を配らざるを得なくなっている。
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事業承継に不安も 長男主導の再編暗礁
CKハチソン傘下でインフラ事業を手掛ける長江基建集団と電力投資会社の電能実業を合併する計画も暗礁に乗り上げた。電能実業が保有する豊富な現金を長江基建に取り込み、海外のインフラ事業の買収を加速する腹づもりだった。だが株式交換比率に不満を強める電能実業の独立株主が反対に回り、昨年11月の臨時株主総会で否決された。
両社の合併はグループの後継者と目される長男の李沢鉅(ビクター・リー)副主席が主導した。「議決権行使助言会社が株式交換比率の引き上げを再三求めたにもかかわらず、強行突破を図ったビクター氏の判断ミス」(アナリスト)との指摘は少なくない。
87歳を迎えた李嘉誠氏は「経済の調子が悪い時期にリタイアしたくない」と今年も引退を否定する一方、「ビクターはよくやっている。私がいつ辞めても問題ない」と強調した。だが事業承継が順調に進むか不安視する声は消えない。
香港=粟井康夫
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長江グループの概要
長江グループ インフラから通信、港湾、小売りまで世界中で手掛ける複合企業「長江和記実業(CKハチソンホールディングス)」と、香港・中国で不動産を扱う「長江実業地産」の2社を中核とする企業集団。2015年12月期の売上高はCKハチソンが3163億香港ドル(約4兆6000億円)、長江地産が588億香港ドル(約8500億円)。
[日経新聞3月18日朝刊P.9]
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