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中国、「宇宙強国」へ推進力
独自ステーションや火星有人探査の野心、開発インフラ整う
中国の宇宙開発がめざましい勢いで進んでいる。10月17日に打ち上げた有人宇宙船「神舟11号」が、今月中にも宇宙飛行士2人を乗せて地球に帰還する予定だ。今月上旬には世界最大級という新型ロケットの打ち上げに成功した。日米などで運用する国際宇宙ステーション(ISS)に加わらず、2020年にも独自での宇宙ステーションの運用開始を目指す中国。どこまで技術力や実績を培ってきたのか。
「神舟11号」は打ち上げ2日後、あらかじめ打ち上げていた宇宙実験室「天宮2号」とのドッキングに成功。宇宙飛行士2人が約30日間滞在し近く帰還する。滞在日数は中国としては最長で、宇宙へ行った中国の飛行士はのべ14人になった。
今年は中国にとって「飛躍的に発展するスタートの年」。中国の宇宙開発に詳しい科学技術振興機構研究開発戦略センター特任フェロー、辻野照久さんはこう位置づける。開発を支えるインフラの整備が急速に進んでいるためだ。
6月、4カ所目となるロケット発射場で初打ち上げに成功した。打ち上げた「長征7号」は、これまで使っていた有害物質を含む燃料が、ケロシンを主成分とする低公害型の燃料になった。
11月3日には、世界最大とされる米国の「デルタ4ヘビー」に次ぐ大きさの新型ロケット「長征5号」も打ち上げに成功。機体の直径が約5メートル、打ち上げられる衛星の最大重量は23トン程度で月に到達できる規模の性能を達成しているという。
中国の宇宙開発は1950年代に始まった。70年代には世界で5番目に人工衛星を打ち上げ、2003年に世界3番目に有人宇宙飛行にも成功した。ここ20年程度で有人宇宙船や宇宙実験室の開発、宇宙船どうしのドッキングなど核となる技術を次々と獲得してきた。
米ロに並ぶ勢い
10年代に入ると、11年にはロケットの年間打ち上げ回数が米国を上回り、12年には人工衛星の打ち上げでロシアを超えた。今年も26回打ち上げる計画のうち、9月までに14回を実行。16回の米国、14回のロシアと肩を並べる。ロケットの打ち上げ回数は2015年までの累計で230回で、成功率は94.3%。回数では世界4位、成功率では欧州に次ぐ2位になった。
なぜここまで順調に開発が進んでいるのか。辻野さんは「中国共産党独裁下で宇宙開発は非常に効率よく行われている」と指摘する。まず、国主導で長期的な目標がはっきり掲げられている。中国政府直轄の研究機関、中国科学院は30年までに月へ、50年までに火星へ有人宇宙船を送り届けるとする。ほかに国務院(政府)が25年までのインフラ整備計画を、国営企業の中国航天科技集団公司が5年ごとの計画を出している。
軍が人手や資金を支えていることも要因のひとつ。予算額は宇宙船で100億円、ロケットで50億円ぐらいとされ、一見安いが、動員される軍人の人件費や軍用トラックによる輸送費など、見えない経費が別途かかっているとみられる。
国主導の計画や軍の支えのもとで続けられてきた開発の結果、経費と効果のバランスを考えて他国が手を出さないことを中国が実現したといえそうだ。
直近の計画で注目すべきは、月探査だ。30年には月で有人探査をする目標のもと、18年までに探査機「嫦娥4号」を打ち上げ、世界で初めて月の裏側に着陸する方針。サンプルの持ち帰りにも挑戦する。成功すればアポロ計画以来、約60年ぶりに人類が降り立つ可能性がみえてくる。
性能高める必要
ただ、着実に目標を達成するには、より精度などを高める必要もありそうだ。ロケットエンジンの燃料でも日米欧で利用が進む液体水素などを使った無公害型をより取り入れれば、技術力への信頼が高まりそう。8月には地球観測衛星を搭載していた「長征4C型」ロケットの打ち上げで2年8カ月ぶりに失敗、「まだ経験不足の所もあるようだ」(辻野さん)。
躍進がめざましいとはいえ、技術自体は欧米ですでに使われているもので、ロケットの構造はロシアのソユーズに似ているという。月面着陸も50年近く前に米国が成功ずみだ。火星探査など未知の分野の計画をどこまで独自に進められるかで、中国の真の実力が試されることになりそうだ。
(猪俣里美)
キーワード 宇宙ステーション
宇宙に人が長期滞在するための施設で、生命科学や素材などに関する様々な実験が行われている。1970年代に旧ソ連(現ロシア)が運用した「サリュート」が最初だ。日本人宇宙飛行士も滞在する国際宇宙ステーション(ISS)は米ロ、欧州など15カ国が参加。98年に建設を始めて2011年に完成した。
中国はISSに参加せず、独自に宇宙ステーションを開発する方針。その準備として宇宙実験室「天宮」シリーズを運用しており、現在2号機に宇宙飛行士が滞在している。今後、実験棟「天和」などを順次打ち上げ、20年ごろの完成・運用開始を目指している。
[日経新聞11月18日朝刊P.37]
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