郭文貴 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%AD%E6%96%87%E8%B2%B4郭文貴 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 郭 文貴(かく ぶんき、クオ・ウエンコイ、英語:Miles Kwok、1970年5月10日 -)は、中華人民共和国出身の実業家、投資家。2014年に中国を逃れ、アメリカ合衆国へ亡命した。2017年1月26日、明鏡集団(Mirror Media Group)の独占インタビューを受けて、「身の安全、財産の安全、復讐」のために、中国共産党の最高指導部メンバーらの腐敗・汚職を暴露しはじめた[1]。やがて一連の暴露行為は「Whistleblower Movement」(中国語: 爆料革命)として、グローバル的に広がって、特に中国国内で浸透しており、一部の中国共産党高官を脅かしている。郭文貴はトランプ米大統領が所有するフロリダの会員制ゾート施設「マール・ア・ラーゴ」の会員である。 2020年より、本国以外に居住する中国人に対して、自身が主催しているメディア会社G-TVの未公開株や仮想通貨G-COIN(「G」は「郭」の中国語読みである「GUO」の頭文字)等への投資を促しているが、詐欺の疑いがあり、現在米FBIによる捜査が続いていると米ウォールストリートジャーナル紙が報じている。 人物・来歴 山東省聊城市莘県古城鎮西曹営村出身、八人兄弟の七番目として生まれた。郭家は吉林省盤石県紅旗嶺趙家溝へ移住したが、1970年代後半、故郷に戻った。1980年代、中学校卒業後の郭文貴は、恋人の岳慶芝を連れて、河南省鄭州市に移住。 1989年、二人とも黒竜江省林薬聯営公司の鄭州市事務所の職員になったが、「六四天安門事件」期間中、郭文貴はデモ隊に資金や物資を提供したため、逮捕され入獄。出獄後、1992年には家具工場の経営者、1993年には不動産会社オーナーになった。2008年に行われた北京オリンピックの公園開発にも携わった[2]。 郭文貴は台湾人建築家の李祖原と連携して、五つ星ホテル「鄭州裕達国貿酒店」(1999年、河南省鄭州市中心部)と竜形超高級ビル群「盤古大観(2007年、北京市朝阳区)を建設。 2014年には中国の「胡潤百富榜」にて74位にランクインし、個人資産額は155億元(約2550億円)と推定。 2015年にアメリカに国外逃亡して以降は、中国共産党内部の暴露を続けている。「江沢民の息子が臓器移植を複数回受け、5人が彼のために命を落とした」、「中国共産党の藍金黄計画が、アメリカを蝕んでいる」など、日本やアメリカで、金品やハニートラップが展開されていると指摘している[3]。中国政府は汚職容疑者として郭文貴らを引き渡すように求めたが、米国政府により拒否されている[2]。 2017年4月には国際刑事警察機構(ICPO)によって国際指名手配されたが、これは前年12月にICPO総裁に初の中国人である孟宏偉が就任したことで実現したとされている[4][2]。2017年4月19日、米国の国営放送であるボイス・オブ・アメリカ(VOA)で3時間話す予定であったが、1時間で打ち切られ、何らかの圧力があったものとされた[5]。後に郭文貴にインタビューして中継を行っていた記者3人がVOAから解任されてる[6]。また、「マレーシア航空370便墜落事故は、江沢民派が起こした」といった発言もある[7]。江沢民など歴代の中国指導者は批判するのに対して、腐敗撲滅に取り組む習近平党総書記個人に対しては度々称賛しており[8]、郭文貴自身は「郭七条」を掲げて、中国の腐敗や警察の違法行為に反対しているが、国家や習総書記に反対してるわけではないと再三主張している[9]。ただし、王岐山書記など習近平派の側近の汚職も暴露している[5]。 2017年5月には、郭文貴のもとに、中国共産党中央規律検査委書記・劉彦平が帰国交渉のために訪れ、その際にFBIとアメリカ合衆国司法省が在留資格外の活動を行った劉彦平の逮捕と起訴を準備したため、これに米中関係への影響を懸念したアメリカ合衆国国務省が介入するという事件が起きた[10]。アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプは当初郭文貴を国外退去させようとするも、貴重な交渉カードを失うと見た側近の説得により思い止まったという報道もされている[11]。 2017年9月、郭文貴は米国に対して正式に亡命を申請[12]。 2017年10月4日に予定されていた米シンクタンク、ハドソン研究所(Hudson Institute)主催のイベント、「郭文貴氏と話す会」は、直前になって中止。2018年10月4日、ペンス米副大統領はハドソン研究所で対中政策演説を行い、英国のチャーチル元首相が行った「鉄のカーテン」演説を連想させるとして波紋を広げた。 2017年10月18日、中国共産党第十九回全国代表大会の開幕に際して郭文貴のYoutubeとTwitterとFacebookのアカウントが一時凍結された際は中国政府の圧力が囁かれた[13]。11月27日までYoutubeとTwitterとFacebookのアカウントの一時凍結がまだ完全に解除されなかった。凍結の理由が公開されていない。 2018年1月22日、SNSサイト「郭媒体(GUO.MEDIA)」が誕生。目的は中国の言論自由、民主主義、法治社会の実現に関心を持つ利用者に、最も自由な意見交換プラットフォームを提供。2019年10月現在、利用者数は1億1千万人以上。 2018年9月5日、郭文貴は、鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘前会長が2020年中華民国総統選挙へ出馬すると予言した。2019年4月17日、郭台銘は「媽祖に台湾海峡の平和をもたらすよう促された」として、台湾総統選に出馬する意向を正式表明(その後出馬断念)。 2018年10月12日、中国遼寧省大連市の中級人民法院(地裁)は、郭文貴が実質オーナーである「北京政泉控股有限公司(Beijing Zenith Holdings Co., Ltd)」に対し、強迫取引罪で罰金600億元(約9,600億円)を徴取。 2018年11月20日、郭文貴はスティーブン・バノンとニューヨークで記者会見を開き、「法治基金(Rule of Law Foundation)」を設立すると宣言。郭文貴が1億ドルの資金を提供し、バノンは基金を運営する会長に就任する。基金の主なミッションは中国共産党幹部の権力乱用行為を暴露し、中国政府に迫害された人々を援助。 郭文貴は名誉棄損で、ロビイストのロジャー・ストーン(トランプ陣営の元顧問)を訴えた。2018年12月17日、ロジャー・ストーンは郭文貴関連の無実な情報をWebサイトInfowarsなどで拡散したことを認めた上で、Infowars やInstagram、Facebook、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストで謝罪声明を公表。 2019年3月、ニューヨーク中心部のマンハッタンで、7階建ての防弾ビルを5年間借りて、「ヒマラヤ大使館」(Himalaya Embassy)と命名し、「法治基金」と「郭媒体」の事務所として利用。 2019年7月、ウォール・ストリート・ジャーナルは郭文貴が中国の反体制派を装った中国政府のスパイであると報じた[14]。8月2日、郭文貴氏はウォール・ストリート・ジャーナルやCNN、CNBC、Strategic Visionなどを起訴し、無実な報道を削除するほか、5,000万ドルの賠償金を要求。 2019年暮れより世界中で大流行した新型コロナウイルスについては、中国のウイルス研究所より広まったとする説をとっている[15]。 2020年6月にはバノンとともに、中国共産党政府に取って代わる新政府"New Federal State of China"(新中国連邦)の樹立を宣言した[15]。 2020年8月20日までに、バノンは郵便監察局の捜査員により詐欺、資金洗浄の容疑で逮捕されたが、逮捕場所はコネチカット州に停泊中の郭文貴所有の大型ヨット上であった[16]。 脚注 1.^ えっ? 中国共産党が北ミサイルより恐れる「郭文貴」を知らない? 2.^ a b c “郭文貴のVOAインタビューを中断させたのは誰か”. 日経ビジネス (2017年10月26日). 2017年4月26日閲覧。 3.^ 郭文貴氏、共産党の浸透工作を暴露 日本でも「藍金黄計画」を展開か 4.^ “[FT]国際刑事警察機構、中国人大富豪を国際手配”. 日本経済新聞 (2017年4月20日). 2017年10月26日閲覧。 5.^ a b 澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -222- 郭文貴が暴露した中国共産党の党内闘争日本戦略研究フォーラム(JFSS) 6.^ “米国営放送VOA、中国人大富豪郭文貴を取材した記者らを解雇”. 大紀元 (2017年11月17日). 2017年11月16日閲覧。 7.^ 「マレーシア航空370便、江沢民派が墜落させた」在米中国人富豪・郭文貴氏が暴露 8.^ “As Trump Meets Xi at Mar-a-Lago, There's a 'Wild Card'”. ニューヨーク・タイムズ (2017年4月4日). 2017年10月26日閲覧。 9.^ “海航集团反驳郭文贵指控,郭促其起诉”. 美国之音中文网 (2017年6月11日). 2017年10月26日閲覧。 10.^ “「亡命」富豪めぐる米中攻防、スパイ映画さながら”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2017年10月26日). 2017年10月26日閲覧。 11.^ “政商・郭文貴と交渉した中国諜報員 米NYで逮捕寸前”. 大紀元 (2017年10月26日). 2017年10月25日閲覧。 12.^ “中国富豪が米に亡命申請 高官の汚職告発で中国当局に国際手配”. 産経新聞 (2017年10月26日). 2017年9月8日閲覧。 13.^ “中国政府に批判的な活動家、YouTubeなどのアカウントが停止に 圧力か”. 財経新聞 (2017年10月26日). 2017年10月27日閲覧。 14.^ “米国逃亡中の中国人実業家、反体制派装う中国のスパイか”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2019年7月23日). 2019年7月23日閲覧。 15.^ a b “Mysterious ‘Federal State of New China’ banners seen on planes over NYC”. ニューヨーク・ポスト. (2020年6月3日) 2020年6月5日閲覧。 16.^ “トランプ氏のバノン元戦略官、詐欺罪で起訴 メキシコ国境の壁建設資金めぐり”. BBC (2020年8月21日). 2020年8月21日閲覧。
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