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“テロとの戦争”の時代の到来!?
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15年12月05日 永田町徒然草
今週も実にいろいろなことが起こった。あまり楽しいニュースはなかった。そして私は憂鬱な気持ちで毎日を過ごしている。その最大の理由は、イギリスとドイツがイスラム国(IS)への軍事行動に踏み切ったことである。この2カ国が有志連合の構成国として軍事行動に踏み切ったために、「21世紀前半は、テロとの戦争の時代になる」ような予感がしてならないのだ。
“テロとの戦争”という言葉は、9・11同時多発テロの時にアメリカのブッシュ大統領(息子)が使った言葉である。アメリカ国民は、これを熱狂的に支持し、アフガン戦争に突入した。“テロとの戦い”は、昔からあった。テロの標的となった国家権力が、テロ組織やテロリストと戦うのは当たり前のことであろう。しかし、“テロとの戦い”と“テロとの戦争”は、明らかに違う。
9・11以前のテロとの戦いは、諜報機関や警察権力がその主体だった。テロ組織の実態が明らかになり、その組織を攻撃するために軍隊が出動することはあったであろう。しかし、テロ組織の捜索・攻撃やテロリストの逮捕・攻撃に最初から軍隊が出ていくことはあまりなかった。テロとの戦争は、テロ組織に捜索・攻撃やテロリストの逮捕・攻撃に、最初から軍隊が出動するのである。
9・11同時多発テロは、ビン・ラデンが率いるアルカイダの犯行であった。ブッシュ大統領がアルカイダを攻撃・撲滅することは政治的に許されるであろう。しかし、タリバンが支配していたアフガニスタンという国に対して圧倒的な軍事力で“戦争”を仕掛けることは、果たして国際法上許されるのだろうか。私は最初からそのことに疑問を抱いていた。
アフガン戦争でアメリカとその同盟国は、アルカイダを追って軍事作戦を行った。その過程で多くのアフガニスタン国民が殺害された。ビン・ラデンは後にパキスタンで殺害されたが、オバマ政権になってからのことであった。アフガン戦争の後にイラク戦争が始まった。その理由は、フセイン政権が大量破壊兵器を持っている→テロに使われる可能性大ということであったのだろう。さすがにブッシュ大統領のこの理屈に多くの国は疑問を呈した。イギリスのブレア政権は行動を共にした。
イラク戦争でフセイン大統領は捕まり死刑になったが、大量破壊兵器は最後まで発見されなかった。イラク戦争は大義なき戦争となった。イラク戦争では何十万というイラク国民が犠牲となった。オバマ大統領はイラクから撤退したが、イラク戦争とその後のゴタゴタの中で、イスラム国(IS)なるものが生まれた。イスラム国について論じると長くなるのでここでは必要なことだけ述べる。
イスラム国は国際法上の国家ではない。しかし、これまでのテロ組織と違って、一定の地域を面的に支配している。その支配地域には何百万という人々が生活している。軍事組織も持っている。そうするとイスラム国という対象に対して、戦争という概念が成り立ち得る余地が生ずる。フランスのオランド大統領が、「これは戦争である」と言ったのは、このイスラム国に対して戦争することを意味しているのだろう。
フランス等は、イスラム国を撲滅させると言っている。たぶんイスラム国は、広い概念で捉えるならば強力なテロ組織なのであろう。そして一定の地域を国家と同じように軍事力をもって支配している。イスラム国という組織とその地域で生活している住民は、国家と国民という関係ではないであろう。そうするとイスラム国を撲滅するということは、イスラム国と名乗るテロ組織を撲滅することを指すことになる。
イスラム国の軍事組織やイスラム国の専用施設を攻撃することは、確かにイスラム国を弱体化させることにはなるであろう。しかし、イスラム国のメンバーは、イスラム国が支配している地域の住民の中に潜り込むことであろう。そうするとイスラム国のメンバーだけを攻撃することは、現実問題として非常に困難となる。アメリカもフランスもイギリスもそれは仕方ないことだ、とはまさか言わないであろう。
とにかく“イスラム国に対する戦争”が始まった。フランスではあまり反対がなかったが、イギリスでもドイツでも相当数の反対があった。私は反対した人々の意見をよく検討してみたいと思っている。いずれにせよ、戦争には多くの犠牲が発生する。その犠牲は、圧倒的な軍事力で攻撃されるイスラム国とその支配地域で生ずるであろうが、その反作用は大きい筈だ。その結果として「21世紀前半の世界は、テロとの戦争の時代になる」ことを、私は憂いているのだ。
それではまた。
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