1. 2015年11月30日 07:30:07
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鼻を折られたプーチン大統領との接し方に要注意 混迷を深めるシリア情勢、西側諸国はどう対処すべきなのか 2015.11.30(月) Financial Times (2015年11月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)露大統領、トルコから「まだ謝罪がない」 露軍機撃墜 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は最近、多少輝きを失ったが・・・〔AFPBB News〕 チェスの名人たるロシアのウラジーミル・プーチン大統領に、いったい何が起きたのだろうか。筆者はもう、プーチン氏のことを、世界の先進民主主義国の弱く、煮え切らない指導者たちを目立たせる大胆かつ決断力のある人物として描く論評を数えるのをやめた。誇張は常に、誇張でしかなかった。我々は今、ロシアの本当の脆弱性を垣間見ている。 輝きを失ったプーチン大統領 どんな尺度で見ても、プーチン氏は輝きをいくらか失った。 シリアにおけるロシアの軍事作戦は形勢を一変させるゲームチェンジャーとして広くもてはやされた。 米国のバラク・オバマ大統領なら絶対にそのリスクを取らないような大胆なチェスの序盤の布石だとされていた。 プーチン氏は部隊を派遣することで、シリア内戦を終わらせようとする国際的な努力の中心に自身を据えた。同氏はシリアのバシャル・アル・アサド大統領の強制排除を求める西側の要求を潰した。ウクライナに侵攻した後、礼儀正しい外交界から追放され、暗がりにいたしかめ面の人物が突如、テーブルの上座に戻ってきた。 流線形のロシアの戦闘機と水面下の潜水艦がシリアの反政府勢力を爆撃するテレビ映像は、偉大なる愛国的復興の指導者としてのプーチン氏の自己像を磨き上げた。ロシアはもう超大国ではないなどと誰が言ったのか。人は忘れっぽい。西側の視聴者が空を照らすミサイルを、歴史の弧を曲げる米国の力と誤解したのは、そう昔の話ではない。読者は2003年春のバグダッドを覚えておいでだろうか。 プーチン氏を重要人物扱いする動きは、自称イスラム国と関係のあるテロリストらが爆弾を仕掛け、エジプトのリゾート地シャルムエルシェイクから帰る飛行機に乗っていた220人近いロシア人観光客を殺す前から始まっていた。この殺害は、ロシアのシリア介入に対する報復措置だと標榜された。 また、シリア国境を越えてトルコ領空に入り込んだと言われるロシアのジェット機をトルコの戦闘機が撃墜した先日の一件の前の話であり、ウクライナの破壊工作員が――ウクライナ政府と結託したかどうかはともかく――送電線を爆破することでロシアの占領下にあるクリミアで停電を引き起こす前のことだった。 一部の人がウクライナにおけるプーチン氏の勝利と思ったものは、泥沼と化した。同氏はあの国が西側に魅了されることを防いだと主張することはできるが、その可能性は以前から誇張されていた。だが、クリミアの併合は高くつく負担だ。ウクライナ東部の親ロ派の飛び地も同様だ。一方、欧州の諸政府はロシア政府に本当のコストを強いる経済制裁を維持することで、自分たち自身の決意に驚くことになった。 たとえ欧米の経済制裁がなかったとしても、ロシア経済は深刻な問題に陥っていただろう。 石油・ガス価格の急落は、プーチン氏が国の経済生産の源泉を近代化、または多角化できなかったことを露呈させた。 経済は縮小し、生活水準は低下している。資本逃避は外貨準備を枯渇させており、海外の投資家はロシアに近寄らない。最悪の事態は終わったと言う人もいるが、著しい回復を見込む人はほとんどいない。 いずれも、プーチン氏が脅かされていることを示唆しているわけではない。ロシア国内では、同氏の強引な国家主義は国民に買われている。支持率は成層圏のどこかで高止まりしている。オバマ氏やドイツのアンゲラ・メルケル首相、あるいは、ほかに思い浮かぶどんな指導者も、喜んでプーチン氏と支持率を交換するだろう。また、最近の挫折が、場所がウクライナであれ、シリアであれ、プーチン氏が問題を引き起こす力を弱めることもない。 さまざまな兆候を見る限り、ロシアのジェット機撃墜の後、ロシア政府もトルコ政府も事態がエスカレートすることは避けたいと考えているが、新たな衝突の可能性を排除するのは間違いだ。ロシアと西側諸国の重複する軍事作戦は、絶えず存在する偶発的衝突のリスクをもたらしている。 西側が次に打つべき手 では、西側諸国の次の一手は何であるべきなのだろうか。最初の答えは、まずは停戦、その次にシリアのための何らかの政治的枠組みを求めてロシア政府との関与を深めることで、プーチン氏の問題を利用しようとすべきだ、というものだ。 第2に、米国政府、ドイツ政府、フランス政府はリセットや和解に関する迂闊な話を避けなければならない。故マーガレット・サッチャーの言葉を借りるなら、今はふらふらしている時ではない。第3に、2つ目に続いて西側諸国は、ロシア政府との関係に対して、外交官らが「厳密にインストルメンタルなアプローチ」と呼ぶものを採用すべきだ。 シリアでの軍事作戦を調整する必要性は、自明である。もしプーチン氏にイラク・シリアのイスラム国(ISIS)に対抗する本物のパートナーシップを組む気があるなら、西側諸国は奨励で応じるべきだ。 アサド氏が大統領の座にとどまっているうちは、永続的な取り決めは絶対にあり得ないが、ワシントンなどで次期政府として持ち上げられているいわゆる穏健派の反政府勢力は、もっぱら作り話だ。 政治的移行が存続可能な新体制とロシア、イランの同意を築くには、時間がかかる。 許されない過ちは、シリアからウクライナへの話の転換を受け入れることだ。プーチン氏は、シリアでの協力とウクライナにおける西側の譲歩とを交換することを望むだろう。その道には破滅が待ち受けている。 制裁を緩和したい気持ちになる欧州の指導者は、自分たちがイランの核合意をウクライナに関する論争から切り離しておくことに成功したことを思い出すべきだ。そして、ロシアが西側と全く同様に、凶暴なイスラム主義過激派の打倒に利害を持つことは誰も忘れてはならない。 シリアはすべての関係者を穴に陥れた。米国と欧州はほとんど発端から紛争を読み違えていた。決断力のある戦術家のプーチン氏は、お粗末な戦略家であることを露呈した。もしまだ取引が可能なのであれば、すべての人がチャンスをつかむべきだが、ロシア大統領が失地回復主義的な世界観を捨てたとは誰も考えるべきではない。 By Philip Stephens http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45391 |