2. 2015年11月20日 20:02:27
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コラム:「イスラム国」掃討でプーチン大統領は信頼できるかGregory Feifer [18日 ロイター] - パリ同時多発攻撃を受け、西側諸国が安全保障政策を見直すなか、ロシアは過激派組織「イスラム国」との戦いは同国なくして成功し得ないと主張することでこの機会をフル活用している。 トルコで先週末開催された20カ国・地域(G20)首脳会議に出席したロシアのプーチン大統領は、オバマ米大統領や他の各国指導者らと会談。その後、シリアの長期的政治解決をめぐる合意が明らかにされた。 ロシア政府は17日、先月エジプト上空でロシア機を墜落させたのはイスラム国であると確認。これを受け、残忍な同組織との戦いという共通の目的がついにプーチン大統領を動かし、欧州の難民危機だけでなく、シリアに存在する過激主義の根本原因に対処する一端をロシアが担うようになると、米国とその同盟国が期待しているのは明らかだ。 プーチン大統領はすでに、同盟関係にあるシリアのアサド政権に反対する穏健派反政府勢力への空爆を停止すると約束している。
ケリー米国務長官は17日、「政治的プロセスがもっと早く進むなら、(米軍とロシア軍の間で)より高いレベルの情報交換が行われる可能性がある」と述べ、数週間後にシリアで大きな移行が起きる可能性を示唆した。 西側諸国が真の協力を促す方法を追い求めるのは当然のことだが、大きく異なる目的をもつロシアを信頼するという過ちを繰り返し、現在シリアで起きている危機をこじれさせないよう細心の注意を払うべきだ。 クレムリンがどのように機能しているかを学ぶには、最近報じられた別のニュース、ロシア陸上界のドーピング問題を参考にするのがいいだろう。この問題により国際大会での暫定的な資格停止処分が科されており、来年のリオデジャネイロ五輪に出場できない可能性がある。 世界反ドーピング機関(WADA)が今月にロシアが陸上競技界で組織的なドーピングを行っている疑いがあるとする報告書を発表した後、閣僚らはロシアに対する陰謀だと強硬な姿勢を示していたが、プーチン大統領は発言を控えていた。 先週になってようやくプーチン大統領は口を開いたが、その発言はかなり控えめに聞こえた。その内容は、独自に調査を行い、WADAとオープンに協力する必要があると指示したというものだった。 まさにこれがプーチン流のやり方なのだ。 プーチン大統領がさまざまな選択肢を検討したことは間違いないだろう。ロシア連邦保安庁などの関与を示す証拠も報告されており、ロシア選手の出場停止を回避するのに、否定はほとんど役に立たないとの結論に至ったに違いない。 すでに孤立している国にとって、この問題の重大さは過小評価されれるはずがない。五輪に出られないとなれば、スポーツ好きの国民は失望するだろうし、昨年のソチ冬季五輪では、ロシアは史上最高となる500億ドル(約6兆1400億円)を投じている。同五輪は、ロシアが世界の大国として復活を果たした証左として国威発揚に使われた。 このような国家主義的な実例はクレムリンの思考系統に最も近いと言える。実際のところ、プーチン大統領はイデオロギーをもっていない。もっていれば、ドーピング問題を否定するなど、西側との対立を深める態度に出たはずだ。 だが、プーチン氏は必要とあらば妥協する。要するに、イデオロギーとして通用していることは政策を決定するものではない。むしろプーチン氏の権力を支えるという、矛盾も多い同氏の主な指針を達成するための道具として機能している。 ロシアの国営テレビは先週、重要な軍事機密を漏らしたかのように見えた。プーチン大統領と軍当局者らとの会合を撮影中、米ミサイル迎撃システムを回避可能な、原子力潜水艦に装備される新型ドローンの計画書をズームで捉えたのだ。 この意図的ともとれる「リーク」は、ロシア政府が実際にどのように機能しているかを表している。映像に映し出された文書は単に、西側を脅すために旧ソ連時代の計画を焼き直したものだろう。そのような無人潜水艇は存在しない。共産主義時代の虚勢にすぎない。 さらにソーシャルメディア上に掲載された写真には、シリアに配備された新型の地対空ミサイルS400が写っている。シリア上空では、同国政府とロシアの他には西側の部隊しか航空機を飛ばしていない。この点がロシアと西側の核心的な相違となっている。 関係が改善しているように見えても、イスラム国掃討のためロシアが提案する連合形成にはやはり「毒」がある。プーチン大統領がシリアのアサド大統領を支援していることは、欧州を襲う難民危機だけでなく、イスラム国の拡大に最も責任があるアサド氏の力を強めるだけだからだ。 ロシアはかつてないほど深くシリア内戦に関与し、予期せぬ結果に直面している。ロシア機墜落が今後、プーチン大統領の支持率にどう影響するかはまだ分からない。イスラム国は先週、近いうちにさらに多くのロシア人の血が流れることになると宣言した。 プーチン大統領は外見的には、イスラム国や他の悪いニュースに対して驚くべき抵抗力を示している。しかしロシアの権威回復には程遠く、同国の息が詰まるような独裁主義は大量の頭脳流出を引き起こし、技術的・経済的変革を停滞させ、繁栄への長期的可能性を低下させた。 ロシアの主張に反して、米ロ間に類似点はない。ウクライナとシリアの問題をめぐる米国との対立は、プーチン大統領の支持率を約90%という記録的高水準に押し上げる一助となっている。リセッション(景気後退)や個人の自由の後退も、同大統領の支持率を低下させる一因にはならなかったようだ。 国際的なルール違反によりロシアが重大な結果に直面していると主張することは、同国のごまかしへの対応の好例だと言える。つまり、西側の価値観を断固として曲げないことが肝要だ。WADAの報告書が指摘しているように、ロシアはロンドン五輪で不正を働いたかもしれないが、パリ攻撃によって、西側の対シリア政策に対して同国が同じことはできないはずだ。 ロシアの真の意図を見過ごすことは、イスラム国との戦いという究極の目標を損なうばかりか、自国についてロシア国民に誤ったシグナルを送ることになる。西側諸国は非常に慎重に事を運ばなければいけない。 *筆者は米公共ラジオ局NPRの元モスクワ特派員。著書に「Russians: The People Behind the Power」がある。 A still image taken from video footage shows a Russian Tupolev TU-22 long-range strategic bomber conducting an airstrike at an unknown location in Syria. Image released November 19, 2015. REUTERS/HANDOUT . http://jp.reuters.com/article/2015/11/20/column-islamicstates-russia-idJPKCN0T90QH20151120 |