2. 2015年11月04日 14:13:44
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米国、イラク向け送金を今夏に一時停止−IS流用を懸念 米FRBと財務省は今夏、イスラム国へのドル資金流出を恐れイラク中央銀行向け送金を一時停止していた。WSJのエミリー・グレーザー記者が解説する(ビデオ音声は英語のみ) Photo: Getty Images By EMILY GLAZER, NOUR MALAS AND JON HILSENRATH 2015 年 11 月 4 日 11:58 JST 米連邦準備制度理事会(FRB)と財務省は今夏、何億ドルにも上るイラク中央銀行向けの資金送付を一時停止した。ド ル資金が最終的にイランの銀行の手に渡り、そこから過激派組織「イスラム国(IS)」に流出するのではないかとの懸念 が高まったためだ。その後、監視が強化され、ドルの資金送付は再開されている。米、イラクの当局者や事情に詳しい関 係者が明かした。 ドル資金送付を停止した動きはこれまで報道されていなかった。停止の結果、イラクの金融システムは危機の瀬戸際に 立たされた。米国に敵対する組織にドルが流れるのを回避する今回の工作における重大な瞬間だった。 この状況は、米国の長年にわたるテロとの戦いの重要な側面に光を当てるものだ。米国の軍当局が米国製武器が敵の手 にわたるのを懸念するのと全く同じように、米金融当局はドルが米国に敵対する組織の手に渡り、活動資金に使われるの を阻止しようと世界に目を光らせている。 米・イラク当局者や関係者によれば、イラク当局は今年夏、イラク中銀によるドル流通の管理体制強化に同意した。こ れを受けて、監視が改善される中でドルは再びイラクに流れ込んでいるという。 それでも、ISの勢力拡張は米当局に警戒感を抱かせた。資金がテロリストに利用されるのではないかとの懸念だ。イス ラム教スンニ派の過激派組織ISはイラク第2の都市モスルを含めて、戦争で荒廃したイラクの3分の1前後を支配しており 、徴税や石油売買、その他一連の活動からすでに潤沢な資金を調達している。 イラクのゼバリ財務相は、ISへの非合法資金流出を取り締まるためイラク当局が多くの措置を講じたが、現金をイラク 国内にとどめておくのは至難の業だと語った。イラクでは汚職がはびこり、現金ベースの経済があるためだ。 ドル流出の問題は、昨年12月、FRBと米財務省当局者がトルコ・イスタンブールのホテルの会議室でイラク当局者と秘 密裏に協議した時に始まった。関係筋によれば、米側はイラクに持ち込まれるドルの規模が増加しており、そのカネが最 終的にどこに渡っているのかが不透明だったことに警戒心を抱いていた。 米国がサダム・フセイン政権を打倒し、イラク中央銀行の設立を支援した2004年以降、米ドルがイラクの主要な通貨に なった。経済の極めて大きな部分が現金ベースだったからだ。イラクが現金を必要とする時、そのカネ、つまりドル紙幣 はFRBにあるイラクの口座(大半が石油収入による)から引き出されており、バグダッドに空輸されている。 その規模は急増してきた。イラク国会がまとめ、ウォール・ストリート・ジャーナルが閲覧したデータによれば、2014 年、ニューヨーク連邦準備銀行からイラクに渡ったドル現金は年間136億6000万ドル(約1兆6500億円)で、12年の38億 5000万ドルの3倍以上に達した。 このイラクに渡るドルの急増は、低迷する最近の同国経済と合致していなかった。その結果、米当局者らはドルが退蔵 されていて流通していないのではないかと疑った。 それを確実に知るのは難しかった。米当局者や関係者によれば、資金フローを監視していたニューヨーク連銀の当局者 はそれまで、エクセル表計算ソフトで作成された表やアラビア語と英語による不可解なデジタル文書、手書きのメモや印 刷書類で、断片的な月間報告を受け取っていただけだった。 米・イラク当局者によれば、イスタンブールでの会合で、米側はドルがイラクの金融機関にどう流通しているかに関し て管理を強化し、情報を提供するよう主張した。イラク中銀当局者は翌1月、提供する情報量を増やし始めた。 イラク国内でドルを流通する仕組みは以下のようなものだ。イラクを含む外国の中央銀行はドルを保有しており、FRB に対し通貨の送付を請求できる。新しい100ドル紙幣はニュージャージー州イーストラザフォードにあるFRB施設を離れた 後、バクダッドに空輸される。バグダッドでは、この紙幣はイラク中銀に運ばれ、そこで日々の入札で売却される。入札 では、イラクの金融機関は主にイラク通貨ディナールを使ってドルを請求する。 当初、米国の懸念は、こうした入札に活発に参加していたざっと2000社の金融会社(両替所と呼ばれる)に集中してい た。 米当局者は、これらの金融会社の幾つかがISと結び付いていると考えており、両替所がISへのドル資金の供給源として 使われているとの懸念を深めた。米国は海外に送るドルをめぐって、ある時点でコントロールを失うことは避けられない が、他方でFRBは米国の敵にドルを渡す組織と承知しながら、そこに現金を送ることは禁止されている。 イラク当局者の一部は当時、同様の懸念を抱いており、汚職と贈収賄が長年にわたって問題だったと述べ、米当局がこ こに来て通貨の問題を緊急に処理すべき争点だとみなすようになったのはなぜか疑問に思っていると語った。米当局者は 、イラクの情勢は過去数年間動いており、ドル需要が増加するにつれて警戒するようになったと述べた。 6月ごろ、情報共有を改善する合意の下で活動していたイラク当局は米側に対し、イランの制裁対象銀行3行(イスラム 地域協力銀行、メリ銀行、そしてパーシャン銀行)が入札を通じて少なくとも数百万ドルの資金を確保していたと通告し た。FRBがこの事実を知りながら3行にドルを引き渡すのは非合法だった。 米当局者や関係者によれば、米当局はそのころ、ISが入札を通じてドルにアクセスしていることを懸念していた。イラ ク当局者は、このカネはこれらの入札を通じて確実にISに渡っていたと考えている。 イラク北部の都市キルクークは、クルド人支配下にありISの支配を免れていたが、過激集団の前線に近かった。そこに ある両替所はIS支配地域やIS戦闘員にドルが渡るのを最も積極的に容認していた、とイラク当局者は言う。加えてISは 2014年、モスルにあるイラク中銀の金庫から約1億ドルを盗んだ。 新たな情報に基づき、米当局は7月ごろ、イラク当局に書簡を送り、イランの銀行へのドルの流れを遮断すべきだと要 求するとともに、これとは別個にイラク当局に対し、全体的な状況が改善されるまで現金の請求を許可しないと通知した 。 この決定は、ちょうどイラク中銀の手持ち現金が枯渇する時期に伝えられた。多くのイラク人は、大口の預金引き出し が拒否され、パニックに陥った。為替レートは通常よりもはるかに大きく変動した。 イラク中銀の総裁はコメント要請に応じなかった。 7月、財務省のダニエル・グレーザー財務次官補(テロ資金・金融犯罪担当)ら幾人かの米当局者がバグダッドに飛び 、解決策を協議した。米大使館のダイニングルームでの会合で、アリ・アラク中銀総裁を含むイラク当局者は、大量のデ ータをFRBに引き渡すのに同意し、FRBはそれを米情報機関と共有した。イラク当局者は後日、入札を監視するため会計事 務所アーンスト&ヤングを雇った。 イラク中銀がドルが枯渇すると言っていたわずか数日前の8月6日、FRBとニューヨーク連銀は5億ドル近くをイラクに送 った。FRBはその後数週間で、さらに多くのドル紙幣を送付した。 グレーザー次官補はインタビューで、「テロ対策の見地から、米ドルの不足に起因するイラク経済危機は、われわれの 利益ではない」と述べた。 問題は現在でも完全には解決していない。関係者によれば、10月2日、米財務省はワシントンで非公開会合を開き、IS と関係している可能性のあるイラクの両替所の問題を集中して議論した。 これらの両替所のうち2、3カ所は、政治的に影響力のあるイラク人が保有している。関係者によれば、米当局者はこう した関係を断つため、他のイラク当局者たちをどう説得するのがベストかを話し合っているという。 FRB、イラクへドルを送金する理由
PHOTO: AFP/GETTY IMAGES EMILY GLAZER and JON HILSENRATH 2015 年 11 月 4 日 13:43 JST 米国はなぜイラクへ数十億ドルも送金しているのか。複雑な話なのだが、実際のところこの現金はイラクのものなのだ。 イラク中央銀行は他国の中銀と同様、米連邦準備制度理事会(FRB)に口座を持ち、米ドル資金を預けている。イラクの口座にある資金は大半が石油収入によるもので、米国が支援などの目的で同国へ供給している資金ではない。 ウォール・ストリート・ジャーナルは3日付の一面記事で、FRBと財務省が今夏、イラク中銀への数十億ドルの送金を一時的に停止したと報じた。ドル資金が最終的に制裁対象のイランの銀行に渡り、そこから過激派組織「イスラム国(IS)」に流出するのではないかとの懸念が高まったためだ。これまで報道されなかった送金停止という動きは、イラクの金融システムを危機寸前へ追い込んだ。米国に敵対する組織にドルが流れるのを阻止する試みは重大な瞬間を迎えた。 FRBと米当局の推計によると、米ドルの流通紙幣1兆3000億ドル(約157兆円)の半分から3分の2は、国境を越えて国外へ流出している。FRBの仕事の一つに、ドルを保有する国内外の金融機関へ通貨を供給するというものがある。 海外中央銀行はドルを保有しており、紙幣で供給するようFRBに要求できる。 FRBの報道官は声明で、「FRBは、他国が合法的な目的に基づき銀行券の形でドル預金にアクセスする必要性に応えようと努めている」とした上で、「イラク中央銀行を含め、世界中の多数の中銀はニューヨーク連銀に口座を保有しており、その口座からの引き出しを行う場合がある」と述べた。 報道官はまた、「各国中銀が、制裁を受けている海外組織やテロリスト、国際的な麻薬密売人との取引を禁じる法律を確実に順守するよう」、FRBは財務省と密接に協力しているとした。 米財務省のダニエル・グレーザー次官補(テロ資金・金融犯罪担当)はインタビューで、「イラクはドルを必要としている。法律を順守する市民・企業もしかりだ」とした上で、「われわれが取り組んでいるのは、こうしたドル資金が確実に彼らへ回るようにするだけでなく、ISの手に渡らないよう安全策を講じることだ」と述べた。 イラクでドル紙幣が必要となった場合、FRBの口座にある資金から引き出され、バグダッドへ送られる。 仕組みは以下の通りだ。新しい100ドル紙幣がニュージャージー州イーストラザフォードにあるFRBの施設からバクダッドに空輸される。この紙幣がイラク中銀に運ばれ、そこで日々の入札を通じ売却される。入札では、イラクの金融機関が主に自国通貨ディナールと引き換えにドルを手に入れる。 このプロセスに競争入札は伴わず、資金はおおむね要求に応じた形で分配される。事情に詳しい関係者によると、関連する安全策を考慮すれば、この分配プロセスだけで費用は数百万ドルに及ぶ可能性があるが、これはイラク中銀が負担している。 関連記事 米国、イラク向け送金を今夏に一時停止−IS流用を懸念 「イスラム国」 特集
[32削除理由]:削除人:関連が薄い長文
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