6. 2015年8月31日 11:08:25
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1人の男の野望の人質となったトルコ 独裁政治目指すエルドアン大統領、再選挙で2度目の賭け 2015.8.31(月) Financial Times (2015年8月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)トルコ内閣、汚職疑惑で10閣僚交代 エルドアン首相は続投 トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は大統領権限を強化する憲法改正を目指している〔AFPBB News〕 トルコは1人の男の野望の人質になっている。レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の野望だ。有権者が6月に新イスラム主義の与党・公正発展党(AKP)を過半数割れに追い込み、AKPに4度目の勝利を与えるのを拒んだ後、エルドアン氏はこの国を事実上乗っ取り、新たな総選挙に向かわせる。 6月の選挙結果はハングパーラメント(絶対多数の政党が存在しない議会)を生み出した。 だが、そのメッセージは、トルコ国民の大多数はワンマン支配を望んでいないというものだった。 昨年、それまで概ね儀礼的だった大統領の座に就いて以来、エルドアン大統領はすでに、議会、内閣、そして司法などの制度機構から権力を奪い取ってきた。 エルドアン氏が公言する目的は、束縛を受けない権力を求める自身の傲慢な好みに沿って憲法を作り変えるために、AKPの圧倒的多数を獲得することだった。 気まぐれなスルタン エルドアン氏が散々分裂させてきたこの国が、全方面から攻撃されていることなど、お構いなしだ。トルコは南部の国境からは、先月トルコ国内で攻撃を始めた「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」に脅かされている。クルド人が中心の南東部では再燃した戦闘に直面している。そして、景気低迷と通貨下落によって、新興国を取り巻く深刻な不確実性の中で短期資本の流出に見舞われやすくなっている。 トルコ大統領、1150室の公邸建設の理由は「旧官邸のゴキブリ」 アンカラ郊外の新大統領公邸〔AFPBB News〕 ベルサイユ宮殿の4倍の大きさを持つ新オスマン主義の低俗な新宮殿から気まぐれなスルタンのように国を支配するエルドアン氏は、ルイ15世が発したとされる言葉の精神を具体化させているように見える。 「Après moi le déluge(我が後に大洪水あれ、後は野となれ山となれの意)」という言葉だ。 この気まぐれな指導者を注視するトルコの多くの観測筋は、AKP党内の関係者も含め、エルドアン氏は6月の選挙結果が出るや否や選挙をやり直すことを決めたと考えている。呆れるほど家父長的なエルドアン氏は、トルコ国民は選挙で間違った答えを出し、もう1度試験を受ける必要があると考えているように見える。 国民はすぐに、トルコの病気が強い大統領が率いる単独政党の政府を堅持しなかったことから生まれていることに気づくだろう、というわけだ。 エルドアン氏は8月初め、権力はすでにトルコの議会制度から自身の大統領職に移っていると語った。「この国には、象徴的な大統領ではなく、事実上の権力を持つ大統領がいる」 再選挙の実施については、大統領は憲法によって付託された権限の範囲内で行動している。AKPが最大野党・共和人民党(CHP)と連立条件で合意できなかったためだ。だが、連立協議は、そもそも成功する見込みがなかった。CHPの交渉担当者は権限の分担や改革、法の支配について話していたが、AKPにとっては、それは常に権限の分担を排除するゼロサムゲームだったからだ。 さらに、エルドアン氏にとっては、存在に関わる問題だった。干渉を強めるエルドアン氏の支配に対して2013年にゲジ公園で市民の反乱が起きてからというもの、エルドアン氏は、まるで自身を倒そうとする巨大な陰謀に直面しているかのように行動してきた。 確かに、警察や司法、保安局に根づいているイスラム主義の元盟友たちは、エルドアン氏を倒そうと躍起になっている。だが、エルドアン氏が本当に恐れているのは、説明責任だ。 不安定化するトルコ南東部 トルコ反政府デモ7日目、首相「再開発続行」宣言で火に油注ぐ 2013年には、トルコ各地で大規模な反政府デモが繰り広げられた〔AFPBB News〕 エルドアン氏が法の支配を破壊し、警察官や裁判官を解雇したり要職から外したりし、反対意見を封印しようとしてきたのはこのためだ。 ゲジ公園の抗議活動以降、何百人ものジャーナリストが解雇され、多くの人が、特にソーシャルメディアでエルドアン氏を誹謗中傷したとして追及されている。 国境を越えたシリア――最近までトルコがボランティアや武器を送り込むジハードのパイプラインを提供していた場所――では、バシャル・アル・アサドの政権の残骸を倒すことと、シリア北部一帯でシリア系クルド人による領土獲得を食い止めることに焦点が当てられてきた。 米国とその同盟国は、ISISとの戦い――特にジハード戦士がクルド人と戦っている場所での戦闘――への参加を渋るエルドアン氏の姿勢に不満を抱いてきた。 その姿勢は、ISISが7月にスルチのクルド文化センターを爆撃し、33人が死亡してから変化したと言われている。 トルコは事件の後、シリア北部でISISに対する空爆を1度実施。さらに、シリアのクルド人民兵とつながりのあるイラク北部のクルド労働者党(PKK)に対する攻撃を何度も行った。 シリア国内の新たなクルド系組織が、イラク北部のクルド自治政府(KRG)とともに、トルコ南東部でクルド人の自治を求める声を刺激するのではないかという不安がある。だが、PKKに対する攻撃や南東部の非常事態は概して選挙が目的であり、ナショナリストの票を得ようとする露骨な動きだ。 トルコにとっての最大の問題 何より、親クルド派の国民民主主義党(HDP)の得票率を議会に参加するために必要な最低基準である10%を割り込む水準まで押し戻すことができれば、HDPが持つ80議席のほぼすべてがAKPに戻ってくる。それゆえ、HDP――6月の選挙でのエルドアン氏の大敵――はヒツジの皮を被った分離主義者のオオカミだと中傷されているわけだ。 大統領の戦術が奏功していることを示す世論調査はないが、AKPが政治的な礼節の痕跡をも払いのけているため、トルコの免疫システムは不安になるほど低下している。門前に迫った――そして今や国内にいる――ISISの野蛮人たちや、再燃したクルド人の反乱、そして弱々しい経済に悩まされるトルコを覆っている最大の問題はエルドアン氏だ。 エルドアン氏が今回振ったサイコロの目によって、トルコ国民はこの問題がいかに大きいかを知ることになるのかもしれない。 By David Gardner http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44658
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