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[13日 ロイター] - 過激派組織「イスラム国(ISIL)」に対する空爆は、米国防総省のデータを信じるのなら、壊滅的な打撃を与えている。しかし、そうした公式統計には意味がない。米軍パイロットは往々にして、何を攻撃しているのか分かっていないからだ。
イラクとシリア上空を飛行する米パイロットは、最近のどの紛争よりも、標的を見つけるのを無人機(ドローン)に頼り切っている。これは、地上部隊を直接的な戦闘に関与させないというオバマ大統領が打ち出した方針の結果の1つだ。
だが、敵の位置を見つけるのにドローンの性能がひどく悪いことが大きな問題となっている。何十年もかけて開発されてきたにもかかわらず、米無人機が提供する戦場の画像は視界が狭く、粒子も荒い。
人間の視力はドローンのセンサーにいまだ勝るものであり、空爆を主とする戦争でも地上には兵士が必要だ。米国政府がイスラム国との戦いで「人間の視力」を使わない限り、空爆が標的を攻撃しているかどうか確実に知ることはできないだろう。
米国防総省のデータでは、素晴らしい功績が示されている。2014年8月の最初の空爆から今年6月22日までに1万5000回以上の空爆が実施され、イラクとシリアでイスラム国の標的7655カ所を破壊もしくは損害を与えた。また当局者らは、空爆により、1カ月当たり約1000人の過激派戦闘員を殺害したと推計している。
国防総省は「シリアとイラクのISILの標的を破壊することは、彼らの作戦実行能力にさらに制限する」と主張している。
しかし、米軍の成果評価や死者数、さらには空爆がイスラム国に大打撃を与えているという主張を疑うには十分な理由がある。
上空からカメラで撮影されたドローン画像は視界が狭く不鮮明である故、ドローンによって誘導される有人機が投下する爆弾の多くや、ドローン自体に搭載されているミサイルの精度もその影響を受けることになる。今年1月には、パキスタンのアルカイダ施設を狙った米軍のドローン攻撃により、米国人とイタリア人の人質が犠牲となった。ドローン攻撃に関して通常は明らかにしないホワイトハウスだが、この過ちを数カ月後に認めている。
イラクとシリア上空を飛行するドローンの司令塔は、米ラスベガス北方の空軍基地に駐屯する航空団だが、両国での実際の作戦はクウェートの基地からドローンを離着陸させて行っているとみられる。米国の基地では、衛星を使ってドローンを操縦し、不鮮明な画像を表示するモニター群に目を凝らしている。
標的を特定し爆弾を誘導するためにこうしたドローンのみに依存することで、米軍は標的を逃すどころか、軍人と誤って民間人に爆弾の雨を降らすリスクを負っている。
英非営利団体「調査報道局」によると、パキスタンでは2001年以降、米国のドローン攻撃により最大3976人が殺害され、そのうち965人が罪のない一般市民だった。
ソマリアとイエメンでのドローン作戦でも多くの非戦闘員が命を落としている。イスラム国との戦い同様、こうした作戦も完全に空からの攻撃に限られており、標的を確認するための地上部隊は派遣されていない。
米軍には統合末端攻撃統制官(JTAC)と呼ばれる、空爆の標的を特定し、無線で戦闘機を誘導するための高度な訓練を受け、国防総省から認定資格を得た多くの専門家がいる。
米国はJTACを含む3000人以上の軍事顧問をイラクに派遣している。だが、オバマ大統領はJTACが前線付近で活動することを明確に禁じている。同大統領は昨年9月、フロリダ州のマクディール空軍基地を訪れた際、イラクに派遣された米軍は「戦闘任務を行わないし、今後も行わない」と明言した。
イラクにおける米軍の役割については、米国世論に変化が見られる。昨年10月のある世論調査では、回答者の52%がイスラム国との戦いで地上部隊を配備することに反対していたが、今年2月以降のCBSによる世論調査では57%が賛成と答えた。
人間の目の代わりをドローンが務めることには、民間人が犠牲になるという致命的な結果を招く恐れがあるだけでなく、イラクとシリアにおける米国の戦略にも不穏な影響を及ぼす可能性がある。爆弾を落とす標的を正確に分かっていないのに、イスラム国との戦いで勝利を収めつつあるかどうかなど、どのように知り得るというのだろうか。
国防総省は問題を自覚しているようだ。ヘスターマン米空軍中将は5月の上院公聴会で、JTACを現地で活動させることは「助けになるだろう」と述べている。
ドローンの不鮮明な映像から敵だと判断しなくてはならない結果、爆弾の雨が一般市民に落ちるなか、ヘスターマン中将の発言はそれでも控え目に聞こえるのだ。
*筆者は、ツイッター創業者らによるブログサービス「Medium.com」の安全保障担当エディター。著書には「Army of God: Joseph Kony's War in Central Africa(原題)」などがある。
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