http://www.asyura2.com/15/warb15/msg/691.html
Tweet |
『ニューズウィーク日本版』2015−6・2
P.30
「オバマは戦略を見直すべきだ
アメリカ:米軍の関与を空爆と情報収集に限定しているが
このままではISISかイランのどちらかを利する結果に
ウイリアム・ドブソン(本誌コラムニスト)
2カ月前、テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)は退却を余儀なくされているように見えた。イラク北部の要衝テイクリートを失い、戦線は伸び切っているようだった。
だが、過去1週間で戦況は一変した。ISISは砂嵐を利用してイラク西部のラマディを攻略。3日後にはシリアの古都パルミラも制圧した。大方の予想を裏切る反転攻勢だった。
これでISISはシリア全土の約50%を押さえ、さらにユーフラテス川流域を東進する構えだ。このままいけば広大な支配地域と既に掌握したイラク中部の拠点都市ファルージャをつなぐルートを確保できる。ファルージャから近い首都バグダッドのイラク政府にとっては一大事だ。
アメリカ政府にとっても由々しき事態のはずだが、バラク・オバマ米大統領はアトランティック誌の取材に、ラマディ陥落は「戦術的後退」と認めたが「負けてはいない」とも語った。
とてもそうは思えない。 オバマ政権の戦略の柱は2つ。イラク政府軍への軍事訓練と、地元のスンニ派部族を動員してISISと戦わせることだ。アメリカの軍事的関与は、空爆と情報収集活動に限定してきた。一方でヨルダン、トルコ、サウジアラビア、エジプトなどの中東諸国は反ISIS有志連合を形成しているが、重要な役割を果たしているとは言い難い。
唯一の例外はイランだ。ラマディ陥落後、イラクの指導者はイランの影響下にあるシーア派民兵組織の戦闘参加を歓迎した。米政府にとっては苦々しい話だが、オバマ政権にイランの影響力増大を受け入れる気がないのであれば、対ISIS戦略の練り直しが必要だろう。
ISISはシリアとイラクの都市を驚異的な早さで攻略する一方で、慎重で粘り強い一面も見せてきた。彼らは都市を守る政府軍の弱点を見抜いている。地元民の受けがよくないこと、兵士の訓練や装備が足りないこと、そして士気が低いことだ。
ISISはじっくりと機会を待ち、敵の士気が十分に低下したと判断した時点で、圧倒的戦力を動員して攻撃を仕掛けているようだ。そうすれば、攻撃を受けた政府軍は抵抗らしい抵抗もなく敗走する。
空軍力だけでは不十分
オバマ政権が主張するように、ISIS掃討は何年もかかる長い戦いであり、近道はない。だが、今のやり方は危険だ。
オバマは中東の戦争に再びアメリカを引き込むことに二の足を踏んでいる。その気持ちは理解できるが、イラク政府軍やシリアの穏健派武装勢力といった「友軍」は敗退を続け、戦況は不利に傾きつつある。うまい打開策が見当たらないのは確かだが、下手な作戦は事態をさらに悪化させるだけだ。
軍事作戟だけではISISは倒せない。彼らの資金源を断ち、戦闘員の補充を阻止し、評判を低下させ、ゆがんだイスラム思想を論破しなければならない。
同時に、軍事力抜きで彼らを倒すのも不可能だ。米軍の空爆はISISの進撃を遅らせるのに役立った。昨年末のシリア北部コバニ(アインアルアラブ)の戦いなど、一部の戦闘では決定的な役割を果たした。
とはいえ、空軍力だけでは明らかに不十分だろう。イラク政府軍が足りない部分をすぐに補えるとも考えにくい。
アメリカはイラク政府軍の訓練を10年前から続けてきた。これまで何年かけても勝てなかった故に今後数カ月で勝てるとは思えない。しかも、相手は以前よりはるかに強大になっている。
今のアメリカに必要なのは現実を直視することだ。これまでのやり方を続けるのであれば、ISISの支配領域拡大とそれに伴う混乱か、あるいはイラク周辺に対するイランの影響力増大を招く恐れがある。どちらも望ましいシナリオではない。
オバマは中東での戦争を次期大統領に引き継がせたくないと考えている。だがISIS支配下の中東を引き継ぐのは、それ以上の悪夢だ。」
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。