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2015年06月12日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆オバマ米大統領は6月10日、イラクに米兵450人を新たに派兵するよう命じた。ロイターは6月11日午前9時37分、「米軍、イラクに450人追加派兵 対『イスラム国』作戦で支援強化」という見出しをつけて配信した。
イラクには現在3100人規模の米部隊がイラク部隊の訓練をしているので、これで3550人規模になる。だが、オバマ大統領は、野党・共和党が要請している地上軍約10000人規模の派遣を拒否しているうえに、空爆の効果を高めるため地上から誘導する「特殊技能兵=統合末端攻撃統制官」の前線配置にも消極的だ。
イスラム教スンニ派過激武装勢力「イスラム国=ISIL」は、シリアの半分、イラクの3分の1を支配しており、中東諸国の民衆の大多数に支持されて、目覚ましい勢いで支配地域拡大を図っている。とくに中東の王国サウジアラビア(アブドゥッラー国王=サウード家)▽バーレーン(ハマド国王=ハリーファ家)▽ヨルダン(アブドゥッラー2世=ハーシム家) ▽クウェート(サバーハ4世=サバーハ家)▽オマーン(カーブース国王=ブーサイード朝)▽カタール(タミーム首長=サーニー家)の6か国の打倒という明確な攻撃目標を持って戦闘を繰り広げているだけに意気盛んである。
これに対して、イラク軍やイラク民兵組織の「士気」は極めて低く、米軍は空爆とイラク部隊の訓練に止まっていて「腰が引けている」状況で、「イスラム国=ISIL」との戦闘に勝ち目がない。
◆2014年6月10日、「イスラム国=ISIL」によるイラク北部モスル制圧から、2015年6月までの先頭の経緯は、以下の通りである。
2014年6月10日、「イスラム国=ISIL」がイラク北部モスル制圧。29日、カリフ制による国家樹立を宣言。8月8日、米空軍がイラクで「イスラム国=ISIL」空爆を開始。9月23日、米主導の有志連合が、シリアで空爆開始。
2015年1月下旬、日本人人質事件発覚。クルド人部隊が、シリア北部の要衝アイン・アラブを奪還。3月31日、イラク軍とシーア派民兵がイラク中部の要衝ティクリートの中心部を奪還。5月17日、「イスラム国=ISIL」がイラク中西部アンバル州の州都の要衝ラマディを制圧。首都バグダッドから約100キロに位置にある。20日ごろ、「イスラム国=ISIL」がシリア中央部のホムス県タドモルにあるローマ帝国支配時の都市遺跡「世界遺産パルミラ」(1980年、ユネスコの世界遺産=文化遺産に登録)を制圧。
◆米国が米軍450人を増派するのは、ラマディ奪還に向けて、イラク治安部隊の支援を行うのが目的だ。ラマディ制圧のためには、アンバル州の戦闘地域近くに訓練センターを設置する。しかし、オバマ大統領が、地上軍派遣を拒んでいるので、米軍がイラクの戦況を転換させるのは、難しい。米軍が中東諸国の民衆に歓迎されておらず、支持も得ていないどころか、一般民衆を殺戮してきたため、嫌われ者になっているが辛い。
オバマ大統領は、「リバランス政策」(米国の世界戦略を見直して、その重心をアジア・太平洋地域に移そうとする軍事・外交上の政策。米国オバマ大統領が2011年11月のオーストラリア訪問時に発表)に基づき、2012年12月末までに駐留米軍を完全撤退させた。だが、中東が「米軍空白」状態に陥り、「イスラム国=ISIL」の台頭を許してしまい、新たな戦乱が始まった。このため、米軍を再投入せざるを得なくなったが、中国が南シナ海で「軍民の作戦拠点に使える」大規模な埋め立てを進めていることから、米中軍事衝突の危険が俄かに高まり、オバマ大統領は、南シナ海、東シナ海から太平洋にかけて兵力増強に迫られてきた。しかし、いまの米国には、アジア・太平洋と中東の「二正面」に強大な兵力と巨額の戦費を投じる余力はない。
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