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緊迫する南シナ海:隙を見せるな
2015.6.5(金) The Economist
(英エコノミスト誌 2015年5月30日号)
中国が海軍国、空軍国としての権利を主張し、米国がそれに反応するに従って、対立のリスクが高まっている。
米軍偵察機「追い払った」、中国が勝利宣言 南シナ海の人工島問題
米軍の偵察機が捉えた、中国が南シナ海で建設を進めている人工島の空撮映像(c)AFP/AFP TV/US NAVY〔AFPBB News〕
米国の当局者は、中国に我慢できなくなっている。ジョー・バイデン副大統領は5月22日、無遠慮だった。バイデン氏は、海軍兵学校の卒業生らに対し、大国間に「新たな断層線」が生じていると警告した。中国は、係争中の岩礁の上で「大規模」に土地を埋め立てることで、南シナ海における航行の自由に挑戦していると述べた。
米国はその2日前、中国が滑走路を建設している岩礁の近くに偵察機を飛ばすことで、自国の苛立ちを示す合図を送った。
そうした隠密飛行はよくあることだが、今回は違った。
偵察機はCNNの取材班を同乗させ、その取材班が、中国海軍が無線通信を通じて英語で発信した、憤慨した反応を放送したのだ。「判断ミスを避けるために、直ちに退去せよ」という内容だ。
「このままでは戦争は不可避」
中国の当局者と国営メディアは、米国の口頭での攻撃(中国の浚渫船によって海底から砂が吸い上げられ、建設中の島にまかれる様子をCNNが映した、ファイアリークロス礁上空の偵察飛行任務の劇的な映像によって強く印象づけられた)に腹立たしげに反応した。
中国外務省の女性報道官は5月25日、米国に「挑発的な行為」をやめるよう求めた。強硬な意見で知られる中国国営英字紙「環球時報」は、米国が島の建設について苦情を言い続けるのであれば、戦争は「避けられない」と述べた。共産党の主要機関紙「人民日報」は5月24日、「他者を傷つける」者は「自分を傷つける結果」になりかねないと米国に警告した。
幸い、今のところ、激しい言葉が南シナ海自体やその上空での性急な軍事行動によって釣り合いが取られるような事態には至っていない。米国も中国も、衝突を回避したいと思っている。だが、米国は自国の意図をはっきり伝えるため、中国によって脅威と受け取られるかもしれない方策を検討している。
米国の偵察飛行や艦船による同様の任務は、これまでのところ監視対象の岩礁から少なくとも12カイリ(22キロ)距離を置いてきた。それは、岩礁が島であり(つまり、永続的に海の上にあるということ)、実際に中国の領土だった場合に中国の主権が及ぶ領域の外側の境界線に当たるところだ。米国防総省は今、こうした境界線に探りを入れるかどうか検討している。
中国は長年、南シナ海の岩礁や島嶼の大部分は自国のものだと言ってきたし、南シナ海自体の大半に対しても曖昧に定義された権利を主張してきた。南シナ海の他の周辺諸国は、こうした主張に異議を唱えている(ベトナムとフィリピンはどちらもファイアリークロス礁が自国の領土だと言っている)。
米国は、主権に関する論争では立場を取らないが、議論は、航行の自由に影響を与えない形で平和的に解決されるべきだと話している。米国の偵察機に対する中国の警告は、中国がすでに軍事的な通行に制限を加えようとしていることを示している。
近隣諸国が懸念する防空識別圏の設定
米国がますます公然と不満を表しているにもかかわらず、複数の岩礁での中国の埋め立てのすさまじいペースは全く変わっていない。中国国防省は5月26日、軍事戦略に関する「白書」を公表した。白書は、中国は、南シナ海での権益を含め、自国の「海洋権益」を守るために「近代的な海上軍事力」を構築すべきだと述べている。
米国のアシュトン・カーター国防長官はその翌日、南シナ海における中国の行動は、中国が、アジア太平洋の安全保障体系を支える国際基準と歩調を合わせていないことを示していると述べた。
米国と、中国の近隣諸国は、中国がいずれ南シナ海の上空に「防空識別圏(ADIZ)」――航空機が圏内に入る前に中国当局に身分を明らかにするよう求める措置――を宣言するのではないかと懸念している。
中国は2013年11月、日本が領有権を主張する島嶼をカバーするADIZを東シナ海の上空に設定して、地域を驚かせた。中国は、これに従わない者に対しては自国の空軍が「防衛的な緊急措置」を取る権利を持っていると述べた。米国はすぐさま、中国に通知することなく、武器を搭載しないB-52爆撃機2機をこの空域に飛ばした。
一部の中国の専門家は、中国が近く南シナ海でADIZを宣言する可能性は小さいと考えている。あれほど広大な海域でADIZを実施するのは、東シナ海以上に難しいからだ。
だが、中国外務省の高官は5月26日、中国は部分的には空域の安全保障が脅かされているかどうか、そしてどの程度脅かされているかに基づいて、ADIZを設定するかどうかを決定すると述べた。これは米国に対する明らかな警告だ。
臆病者と見られたくない
中国の学者たちは、中国の決意を試すのは危険な行為となる可能性があると言う。万一米国が軍艦を岩礁の1つの近くまで航行させれば、「恐らく中国政府に力で対応するよう迫ることになる」と南京大学中国南海研究協同創新センターの朱峰氏は言う。中国のどの指導者も「臆病者」と見られたくないと思っている、と朱氏は言う。
だが、そう思っているのは米国も同じだ。米国は、中国の近隣諸国も、より強い態度でこの問題について口を開き始めていることに安堵している。普段は中国の反感を買わないよう腐心する東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国は4月、中国による人工島の建設を「平和、安全保障、安定」に対する脅威と呼んだ。
ASEAN諸国は、この地域における米国の軍事的プレゼンスを歓迎している。だが、彼らは密かに、緊張を高めないよう米国側に要請してきた。どのアジア諸国も、米国を支持するのか、中国を支持するのかはっきりと選択するよう迫られることは望んでいない。米国にとっては、問題に巻き込まれないでいるのは難しいだろう。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43961
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