http://www.asyura2.com/15/warb15/msg/597.html
Tweet |
露外相が北方領土の「旧敵国条項」発言 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
THE PAGE 6月3日(水)18時15分配信
露外相が北方領土の「旧敵国条項」発言 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
[写真]2013年11月に来日し、安倍首相と会談した際のロシア・ラブロフ外相(左から2番め)(代表撮影/ロイター/アフロ)
ロシアのラブロフ外相は先月、同国メディアのインタビューに答え、日ロ間の懸案になっている北方領土問題に絡んで「日本は第二次大戦の結果に疑問を付ける唯一の国だ」と述べ、さらに国際連言憲章(国連憲章)の「旧敵国条項」にも触れて戦勝国の行為は神聖で揺るぎない」とも発言しました。日本は反発しています。そこで、そもそも旧敵国条項とは何なのかについて考えてみました。
「旧敵国条項」とは?
第二次世界大戦は日本やドイツを中心とする「枢軸国」と、イギリス、フランス、アメリカ、ソ連(現在の継承国はロシア)といった「連合国」の間で争われました。戦局が連合国有利に傾いた頃から戦後処理の話し合いが持たれ、日本の敗戦で終結した直後の1945年10月に51か国で発足したのが国連です。つまり戦争当事者の片方だけで設けた組織で、英語表記は「連合国」も「国連」もUnited Nationsです。
したがって戦時の色彩が憲章にも残っていて、代表的なのが安全保障理事会(安保理)常任理事国の存在と旧敵国条項でしょう。
旧敵国条項の特色は主に2点あります。国連の原則は戦争禁止。安保理の許可なくして武力行使できません。しかし旧敵国に対しては憲章57条で地域機構(例えば北大西洋条約機構など)が例外的に無許可で行使できます。もう1点は、107条で旧敵国に対する第二次世界大戦終結の際の取り決めが国連憲章に優先するというものです。
憲章には旧敵国がどこか明記されていません。しかし歴史的な流れから旧敵国は枢軸国側でしょう。1990年の国会答弁で外務省の委員は「具体的には日本ですとかドイツですとかイタリア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドでございます」と述べています。一方、条項を行使できるのは国連原加盟国とみられます。
露外相が北方領土の「旧敵国条項」発言 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
[地図]北方4島の位置。日本政府はウルップ島以北を千島列島としている
ラブロフ外相の意図
そもそも北方領土が問題となるのは日ロ両方の言い分に弱点があるから。日本側がつらいのは1951年のサンフランシスコ講和条約(サ条約)で「千島列島」「を放棄する」と約束した点。日本は北方4島は「千島列島に含まれない」としていますが、ソ連はそもそもサ条約を調印していません。
また日本は当時日ソ中立条約を結んでいたので、45年8月9日の対日参戦は条約違反とも訴えます。しかしソ連は同年2月のヤルタ協定で参戦の交換条件に「千島列島ハ『ソヴィエト』連邦ニ引渡サルヘシ」と米英首脳と密約しており、有効だと主張します。終戦の日も日本では連合国に降伏するポツダム宣言を前日受諾した旨を昭和天皇が伝えた8月15日としているのに対して、ロシアは2010年7月に、日本の降伏文書調印日である9月2日を「第二次世界大戦終結記念日」と定めました。9月2日までとなると今の北方領土の多くはソ連軍に占領されています。
唯一の合意文書といえるのは1956年の日ソ共同宣言で、平和条約締結と引き換えに歯舞、色丹は返却するという規定です。しかし条約はまだ結ばれておらず、日本は宣言にない国後、択捉の返還も訴えています。
要するに日ロともに決め手を欠くのです。そこで持ち出してきたのが旧敵国条項というわけです。この手法は1989年の日ソ平和条約作業グループ協議でソ連が初めて持ち出してきました。107条から「憲章のいかなる規定も、戦争の結果としてとり、又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない」ので「戦争の結果としてと」った北方領土はソ連のものだと。この時、日本はソ連の言い分を違法行為を合法化する難癖と反発しました。と同時に、旧敵国条項がこのように用いられるのは日本が国連入りして久しく、分担金も多く担ってきたのにあまりに不合理だという意見も出たのです。
ラブロフ発言は、ウクライナ情勢で欧米と足をそろえて経済制裁してきた日本へのあてつけもあるでしょう。グルジア(ジョージア)とウクライナで欧米が認めない国境変更や「独立」を後押ししている以上、極東の領土問題だけベタ下りするわけにもいかないですから。
「旧敵国条項」の現在
憲章は2条で国連加盟国すべてに主権平等の原則を基礎としています。終戦直後で旧敵国とされる国々が加盟していなかった(というか出来るはずがなかった)時点では、旧敵国条項も意味があったでしょうが、日本が1956年に、東西ドイツは73年に、イタリアも55年に加盟しており、ずいぶん月日が経ちました。
95年には国連総会が条項を「時代遅れ」とし、早期に削除する決議を採択しています。実際に憲章を改正するには文案を明らかにした決議案が総会で3分の2以上で採択されなければなりません。たぶんこれは確実でしょう。
問題は、次の段階で安保理常任理事国を含む加盟国の3分の2が批准(国内手続きの完了)して、初めて効力を持ちます。この批准作業が大変。条項撤廃に前向きな国々も、どうせならば同じく「時代遅れ」の批判がつきまとう安保理改革と一緒にやってしまいたいと考えているようです。ところが何かと角突き合わせている常任理事5か国も、こと「常任」(永久に理事)と、それのみが持つ拒否権に関しては、一致して「我々だけで」が真意のようで遅々として進みません。
とはいえ、旧敵国条項の削除そのものは95年段階で正式に約束されているのです。それを持ち出して、北方領土問題の正当性を言い立てるロシアは(1)そもそも筋違い、(2)時代遅れ、の二重の錯誤を犯しているといわざるを得ず、菅義偉官房長官の「ロシア側の主張に根拠はないし(外相の)指摘は全くあたらない」という記者会見での反論は当然といえましょう。
ただラブロフ外相の「日本は第二次大戦の結果に疑問を付ける唯一の国」発言は、北方領土問題に限定すれば的外れなものの、「先の大戦の結果に納得していない敗戦国」と拡大解釈される言動が要人からあれば、思わぬ正当性を与えかねない毒針でもあります。条項が撤廃されてもUnited Nations原加盟国の旧敵国であったのは揺るぎない事実で、そのUnited Nationsに入った以上、多少面白くない解釈、例えば「お前は永久に国連では(条項がなくなっても)旧敵国だ」と扱われても甘受しなければならない部分があります。といって不当な差別に屈するわけにもいきません。外交の力が問われています。
■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】(http://www.wasedajuku.com/)
前へ
1
2
次へ
2/2ページ
最終更新:6月3日(水)18時18分THE PAGE
関連ニュース
米中が第二次世界大戦70周年を共同記念、日本の選択的歴史忘却を学者が批判―中国メディア写真 Record China 1日(月)19時50分
コメントを書く
six***** | 4時間前(2015/06/03 18:27) 報告 いいね
今の事務総長を見ても、国連が機能しているとは思えない。
国連がこのまま変わらないなら、拠出額を大幅減額で良いのでは?
>> 返信コメント 60件
9066
292
b*u*s*u*1192 | 3時間前(2015/06/03 18:51) 報告 いいね
無能事務総長が率いる国連とは決別してもいいんじゃない?
国連への分担金減らそうぜ!!
>> 返信コメント 14件
7862
294
ite***** | 4時間前(2015/06/03 18:31) 報告 いいね
そもそも、国連は機能しているの?
>> 返信コメント 17件
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150603-00000006-wordleaf-int
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。