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「ラマディ陥落:2千人の重装備政府軍が150人の軽装備IS兵士に怯え戦車などを置いたまま遁走したという茶番劇」
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2015年05月27日 (水) 午前0時〜[NHK総合]
時論公論 「『IS』掃討作戦の行方」
出川 展恒 解説委員
■過激派組織「IS・イスラミックステート」が、今、イラクとシリアで攻勢に出て、戦況が大きく動いています。
ISは、イラク西部のラマディを制圧するとともに、シリアでも、世界遺産で有名な中部のパルミラを制圧しました。
このうち、ラマディでは、政府軍などが奪還作戦を開始しました。
今夜は、ISとの戦いの行方を考えます。
■結論から言いますと、イラクでは、ISを撃退することは可能ですが、戦略の練り直しが必要です。
一方、シリアの方は、格段に事態が深刻で、内戦を終わらせない限り、ISを撃退することは不可能です。
こちらの地図は、ISが支配、または、活動する地域を示したものです。
ISは、イラク、シリアの国土のそれぞれ3分の1以上を活動範囲としています。
■現在、イラクのラマディをめぐる攻防が重大な局面を迎えています。
ラマディは、西部のアンバール県の中心都市で、首都バグダッドの西およそ100キロに位置し、住民はイスラム教スンニ派です。
ISは、今月に入り、車を使った自爆攻撃を重ね、17日までに制圧しました。
この間、ISに従わない住民や兵士など500人以上を殺害したと見られます。
ラマディは、シリアやヨルダンに延びる幹線道路の要衝で、支配地域を拡大する狙いが伺えます。
■そして、日本時間の昨夜(26日)、イラク政府軍などがラマディの奪還作戦を開始したと発表し、住民を巻き込んだ激しい戦闘になることが懸念されています。
■ほんの2か月前、ISは、イラクで守勢に立たされていました。
イラク軍などが、去年6月以来ISに奪われていた北部の町ティクリットの奪還に成功したのです。
これに続いて、ISがイラクで最も重要な拠点とする北部の都市モスルの奪還作戦がいつ始まるかが注目されていました。
■そうした状況の中、ISが反転攻勢に出て、ラマディを攻略した背景には、
▼イラク軍があまりに弱いという問題、
▼そして、アメリカのオバマ政権の戦略の甘さがあります。
オバマ政権のISに対する戦略とは、次のようなものです。
▼ISの拠点を空爆作戦で攻撃し、進撃を食い止める。
▼イラクの政府軍に訓練を施し、武器を提供して、戦闘能力を高める。
▼アメリカ軍の地上部隊は派遣せず、
▼掃討作戦の主役はあくまでイラク軍という考え方です
ところが今回、ラマディがISに制圧された際、イラク軍は、大量の武器や軍用車両を捨てて逃げました。
1年前、モスルを制圧された際、ほとんど無抵抗のまま敗走した二の舞を演じてしまったのです。
■アメリカのカーター国防長官は、24日、「イラク軍は、ISと戦う意志が見られない」と述べ、士気の低さを厳しく批判しました。
これに対し、イラクのアバディ首相は、「誤った情報に基づく発言だ」と反発し、両国の足並みの乱れが表面化しました。
これを受けて、アメリカのバイデン副大統領は、25日、アバディ首相と電話で会談を行い、イラク軍に対する訓練と武器の支援を加速し、全面的に支援すると約束しました。
■ラマディを一刻も早くISから取り戻すことが先決で、関係修復を図った形ですが、イラク軍にISと戦うだけの能力も士気も備わっていないことが露呈されました。
■イラク軍がこれほど弱く、頼りにならない背景には、フセイン政権崩壊後の国づくりの障害となってきた宗派対立が、解決されていないことがあります。
イラクでは、少数派のスンニ派が、シーア派主導のマリキ前政権によって排除され、不満を募らせてきたことが、ISの台頭を招きました。
こうした宗派対立は、アバディ政権に交代してから、改善に向かっているものの、スンニ派の不満は、依然として解消しておらず、強力な政府軍を再建するには程遠いのが現実です。
■イラク軍の力不足が明白になった以上、政府軍以外の武装組織も作戦に参加することが不可欠です。
アバディ首相の命令により、イラク軍、および、シーア派の民兵組織が、26日、日本時間の昨夜、ラマディを含むアンバール県全体の奪還に向けた大規模な軍事作戦を開始しました。
これに対し、IS側も、車を使った自爆攻撃などで徹底抗戦しています。
ラマディの住民を拘束し、「人間の盾」としているもようです。
シーア派の民兵組織は、隣国のイランから直接の支援を受け、政府軍を上回る規模と見られます。
しかし、シーア派民兵組織を作戦に参加させることは、スンニ派住民の反発を招き、宗派対立を悪化させる危険をはらんでいます。
先のティクリットの奪還作戦では、シーア派民兵による報復の処刑や、略奪が起きたと伝えられ、こうした事態が、ラマディでも起きることが懸念されています。
また、スンニ派のアラブ諸国やアメリカは、対立するイランの影響力が拡大することを強く警戒しています。
■イラク政府の発表では、ラマディの奪還作戦には、ISに反発するスンニ派の部族も参加しています。
地元住民に強い影響力を持つ、スンニ派の部族が、作戦にどれだけ積極的に参加するかが、今後の戦況を大きく左右すると思います。
■そのためには、スンニ派の勢力が中央政府に対して抱いてきた不満や不信感を払拭する必要があります。
「挙国一致」の態勢でISと戦えるかどうか、アバディ首相の手腕にかかっています。
それと同時に、アメリカとしては、ISの拠点に対する空爆作戦を強化し、イラク政府軍への訓練や武器の支援を大幅に拡大することが求められます。
■次に、シリアでのISとの戦いを見て行きます。
現在、焦点となっているパルミラは、シリアの中央に位置し、世界遺産に登録された古代ローマ時代の貴重な遺跡がある都市です。
交通の要衝で、ISにとって、首都ダマスカスをはじめ、各地に攻勢をかける拠点となります。
ISは、21日までに、パルミラの全域を制圧し、住民やシリア軍の兵士など500人以上を殺害した模様です。
女性や子どもも多数含まれています。
こうした虐殺に加え、パルミラ遺跡が破壊されることが非常に心配されています。
ISは、イスラム教が禁止する偶像崇拝にあたるとして、貴重な遺跡や文化財を次々に破壊してきました。
■シリアの状況は、イラクと比べて格段に厳しく、解決の糸口が全く見えません。
「アサド政権」、「反政府勢力」、「IS」による三つ巴の内戦が泥沼化しています。
ISだけでなく、アルカイダ系の過激派組織も攻勢を強め、それぞれの支配地域が、非常に複雑に入り組んでいます。
シリアのアサド政権は、ISの拠点に空爆を行い、パルミラの奪還を試みています。
現状では、アサド政権の作戦を支援する以外に、パルミラの破壊を防ぐ手段はありません。
しかし、欧米各国も、アラブ諸国も、大勢の国民を殺害したアサド政権の正当性を認めておらず、アサド政権と連携してISと戦うというシナリオは描けません。
中央政府の統治が行き届かない場所に支配地域を広げてきました。
シリアについては、長期化する内戦を終わらせない限り、ISを壊滅させることはできません。
しかし、シリア内戦を終わらせるための、国連をはじめとする国際社会のとりくみは、アサド政権を退陣させるか、それとも、存続させるかをめぐる関係国の対立が障害となり、中断したままです。
世界各国からISに、戦闘員や資金、武器が流入するのを阻止する国際的な包囲網を構築することも、緊急の課題です。
■ISとの戦いは、一進一退を繰り返しながら、長期化が避けられない情勢です。
イラクでの掃討作戦と「挙国一致」の国づくりを支援し、シリアの内戦を終わらせる国際社会の取り組みが、今、何よりも求められています。
出川展恒 解説委員
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