http://www.asyura2.com/15/warb15/msg/485.html
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※ 参照投稿
「オバマは中東をどうしたい:対立と混迷でぐちゃぐちゃになった中東・北アフリカ地域を高見から操りたい欧米支配層」
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/589.html
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『ニューズウィーク日本版』2015−4・21
P.38〜39
「アラブ版NATOの本気度
軍事:中東全域で危機が勃発する状況下で決定された恒久的な合同軍の創設は地域の安定化に道を開くか
エジプト東部のシャルムエルシェイクで3月末に開催されたアラブ連盟の首脳会議で、アラブ諸国は初めて合同軍の創設に合意した。首脳たちの決断を後押ししたのは、一気に加速する地域の不安定化だ。
中東では今、ここ数十年で最も緊張が高まっている。シリア、イラク、リビアで戦陶が続く一方、イエメンでもイスラム教シーア派武装組織ホーシー派が首都サヌアを制圧。サウジアラビアが軍事介入に踏み切った。
こうした危機に迅速に対応するには、NATO(北大西洋条約機構)のような集団安全保障の枠組みが必要だと、アラブ諸国は判断したのだろう。
合同軍の詳細は今後、実務者レベルの協議で詰めることになるが、エジプトの当局者が明かした構想の一端をAP通信が伝えている。エジプトの首都カイロかサウジアラビアの首都リヤドに司令部を置き、兵員は4万人程度。ジェット戦闘機、軍艦、軽装甲車両を保有するという。
少なくとも地上部隊に関しては、エジプトが合同軍の主力になりそうだ。エジプト軍の兵力は約50万人。エジプトのアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領は元軍人で、軍事力の行使に抵抗はない。エジプトはサウジアラビアと共にイエメンを空爆したほか、2月にも単独でリビアを空爆した。リビア国内のテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)がエジプト人21人を殺害したことに対する報復攻撃とされる。
「長期にわたったムバラク政権時代には、アメリカに手なずけられた弱腰のエジプトと見られていた。(シシ大統領は)汚名を返上したいのだろう」と、米海軍大学院のロバート・スプリングボーグ教授は指摘する。
アラブ諸国最大の常備軍を抱えるエジプトだが、財政状況は厳しく、合同軍に兵員を提供することで人件費を節減したいという思惑もありそうだ。
一方、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は空軍力を拡充してきた。アナリストによれば、サウジアラビアの空軍力は近々イスラエルに匹敵する。UAEは最新鋭のジェット戦闘機数機を保有している。
アメリカヘの不満表明
軍備で見れば、アラブ諸国には強大な合同軍を創設できる能力がある。しかし、地域の歴史を振り返れば、創設には多くの困難が伴いそうだ。
アラブ諸国は過去にも集団防衛の枠組みづくりを模索してきたが、それらの試みはすべて失敗に終わった。「1948年の第1次中東戦争ではアラブ5カ国がイスラエルと戦ったが、共同の軍事行動が取れず、5カ国それぞれがイスラエルに敗れた。この悲惨な体験から50年に共同防衛理事会が設置された」と、米シンクタンク、ブルッキングズ研究所のブルース・ライデルは説明する。
エジプト軍はそれ以前にもアラビア半島に侵攻してきた。現在のスーダン北部を併合した1820年代の戦乱から、67年の南イエメン独立時の介入まで、エジプトはサウジアラビアに対抗すべく湾岸地域への介入を繰り返してきた。そのため一部の湾岸諸国はエジプト人兵士の駐留を警戒するだろう。
もう1つの障害は、湾岸諸国内部で緊張が高まっていることだ。13年にエジプトで起きた軍事クーデターでムスリム同胞団のムハンマド・モルシ前大統領が失脚したとき、UAEとサウジアラビアは軍部を支持したが、カタールはムスリム同胞団を支援。エジプトのシシ新政権はカタールがテコ入れするムスリム同胞団をテロ組織に認定した。このときの外交上のしこりは今も残っている。
こうした障害はあるものの、現時点でアラブ諸国が団結する理由は多くある。合同軍創設の発表は、核問題でイランとの合意を模索するアメリカに、アラブ諸国の不満を伝えるシグナルでもあった。アメリカは自分たちの懸念を無視して、イランの覇権拡大を黙認している ―多くのアラブ諸国はそんな不満を抱いている。
米政府は慎重ながらも合同軍の創設を支持する声明を出した。だが、米政府内には湾岸地域での戦略に合同軍が及ぼす影響を警戒する向きもある。
アラブ諸国が地域防衛に責任を持つことを期待できる一方で懸念材料もあると、スプリングボーグはみる。「合同軍が力を見せつければ、イランなどがそれに対抗し緊張がさらに高まる危険性がある」
ここ数年、湾岸諸国はかつてないペースで軍備拡大を進めてきた。UAE、サウジアラビア、オマーンは世界屈指の影響力を持つ兵器市場として台頭しつつある。
こうした状況を考慮すると、「首脳会議の野心的な構想よりも、2国間の軍事協力や即応的な共同行動のほうが現実的だろう」と、ライデルは言う。
合同軍創設が構想倒れに終わる可能性もある。「アラブ連盟加盟国は22カ国。外交政策の優先課題も視点も多様だ。現状では本格的な合同軍はイメージできない」と、国際安全保障の専門家H・A・ヘリヤーは言う。
地域の安定に貢献するアラブ版NATOを結成するには、アラブ諸国を複雑に引き裂く溝は深過ぎるようだ。
ローラ・ディーン」
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