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知られざる中国の「海上民兵」―漁船が軍事組織に
By ANDREW S. ERICKSON AND CONOR M. KENNEDY
2015 年 4 月 1 日 17:30 JST
尖閣周辺海域に向かう中国漁船 Agence France-Presse/Getty Images
フィリピンは先週、中国に対抗して南シナ海の係争海域で建設作業を再開すると発表した。フィリピンは実質的に勝ち目のない争いに足を踏み込んだと言える。
2月に公開された衛星画像から、中国は南シナ海の大半を管理下に置くため、未曽有の規模で建設や埋め立て作業を進めていることが明らかになった。フィリピンから約970キロしか離れていない海域に面積6万2700平方メートルの人工島が作られ、そこにセメント工場やヘリコプター発着場が建設されているのだ。
東シナ海と南シナ海における中国の領土的野心は、これまで十分に実証されてきた。一方、こうした野心を実現させる重要な要因の中であまり知られていないのは、十分な資金力を持つ「海上民兵」の存在だ。
写真:領海拡張狙う中国の野心示す衛星画像
ベトナムと同様、中国は海上民兵を抱える数少ない国の一つだ。この部隊は通常、民間漁船で編制され、さまざまな活動に従事する。これには難破船の救助など緊急対応から、島に上陸して主権を主張するといった強硬な活動まで含まれる。大企業で民間活動に従事する船員や漁業連合が軍事組織に採用され、軍事訓練や政治教育を受け、中国の海洋権益を守るために動員される。
中華人民共和国の建国初期に創設された海上民兵は、世界最大の漁船団で編制されている。ここ数年で海上民兵は洗練さと重要性を増し、建築資材の運搬から情報収集まで幅広い任務を果たすようになってきた。最精鋭部隊は、必要があれば機雷や対空ミサイルを使い、「海上人民戦争」と呼ばれるゲリラ攻撃を外国船に仕掛けるよう訓練されている。現在、海上民兵は実質的に中国政府が管理する第一線の部隊として機能し、東シナ海と南シナ海で中国の権利を主張するための監視や支援、けん制などの活動に従事している。
機雷の配置訓練を受ける中国の民間漁船 Courtesy of U.S. government
中国以外では海上民兵についてほとんど知られていないが、公式に入手可能な中国の資料からその実体をうかがい知ることができる。
海上民兵に関する疑問の中で、最も複雑なのは「誰が統率しているか」だ。建設作業や訓練など、海上民兵がこなす日常業務は沿岸都市や郡に配置されるおびただしい数の人民武装部によって実施され、これを軍分区の司令部が監督している。海上民兵はさまざまな機関から直接指揮を受けて幅広い役割をこなすため、ここから先の組織構造は一段と複雑になっている。
最近、規模を縮小したり専門性を高めたりすることで、各部隊の役割を変容させる努力が続けられてきた。その一例が浙江省玉環郡の海上民兵大隊で、この部隊は海軍の船に燃料や弾薬などを供給している。
このほか、偵察部隊、重要な施設や地域を護衛する部隊、敵を混乱させたり敵の設備を故障させたりする部隊、海上輸送能力を増大させる部隊、修理や医療救助に従事する部隊など、さまざまな支援活動に関わっている。2014年8月にトンキン湾で実施された海軍、沿岸警備隊、民兵との合同訓練では、掘削プラットホームを防衛するため、漁船には偵察や傍聴の任務が与えられた。
また、海上民兵は中国の政治活動や外交政策に協力し、係争海域における中国のプレゼンス維持を支援したり、領有権を主張する島々に上陸したりしている。これを後押しするカギは、部隊が日常業務とする漁業などの活動と中国の海上における「闘争」とを最高の形で結びつけることだ。一方、軍司令官から任務を要求されたときに迅速に反応する能力を維持することも重要となる。
数千隻に上る海上民兵の船には「北斗」と呼ばれる中国独自の衛星測位システムが設置されている。これにより民兵は他の部隊を追跡できるほか、テキストメッセージの送受信、船員がタブレット上に手書きした中国語の読み込みなどができる。
一方、海上民兵は中国に課題も突きつけており、特に漁業の民営化が進んで漁船や人員数の変動が大きくなったという問題が目立っている。収穫量が少なければ、水産会社の多くは資産を売却し、人件費を減らして業務を継続しようとする。こうなると、軍司令官などは民兵となる人員の補充や引き留めに躍起になってくる。
中国による海上民兵の雇用は、周辺国だけでなく米国などにも幅広い影響を及ぼす。東シナ海や南シナ海で米国やその同盟国が中国との紛争に巻き込まれれば、軍事活動に従事する数多くの民間漁船への対処法を定めた交戦規定が要求されるだろう。南シナ海で激しい衝突が見られないのは、弱小な中国の近隣国がゲリラ的な混戦に直面し、これが中国海軍の戦闘参加を回避させているからかもしれない。
民間人と衝突すれば政治的に敏感な問題になるため、米国などの海軍は手足を縛られた状態にある。その間、海上民兵は係争海域で際限なく拡大する中国の施設建設や護衛といった支援活動を継続することになる。
(アンドリュー・エリクソン氏は米海軍大学校教授で、ハーバード大学フェアバンク・センター研究員。また、「洞察中国」を共同設立し、「www.andrewerickson.com」でブログ活動を行っている。なお、この記事で表明された考えはエリクソン氏個人のものであり、米海軍およびその他政府機関の政策や推測を示したのではない)
(コナー・ケネディ氏は米海軍大学校のリサーチ・インターン。ジョンズ・ホプキンス大学と南京大学が提携して設立した米中研究センターで修士号(国際関係)を取得した)
原文(英語):Meet the Chinese Maritime Militia Waging a ‘People’s War at Sea’
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http://jp.wsj.com/articles/SB11518624559298843387804580553684204321968
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